物流業界の労務問題③「人材確保のために今から準備することは?」~「働きやすさ」バージョン~
公開日:2024年1月17日
今回も企業の要である「人材の確保」がテーマです。本ニュースでは、「働きやすい職場」について、労働時間や賃金等の観点から、お伝えしていきたいと思います。
「全産業平均と物流業界の比較から見えてくるものは」
「ベテランも若手も働きやすい職場へ」
物流業界を取り巻く労働環境を見ていきましょう。トラック運転手に注目してみると、図1のとおり、全産業平均と比べて「所定内実労働時間数」と「超過実労働時間数」は長く、「所定内給与額(月給)」は低くなっています。つまり、「働く時間は長いが、賃金は低い」という実態です。また、「平均年齢」は全産業平均よりも高くなっています。
現場では、「重量物の荷積みや荷下ろしなどの作業や長距離の運転が辛くなった」といった年齢を重ねたドライバーの声が増加しつつあります。多くの企業様が、ベテランの業務を担うため、若いドライバーの確保を望んでいますが、過酷な労働環境であれば、採用に至らないでしょうし、入社しても早々に離職する可能性があります。どの世代のドライバーも安心して働いてもらえる「働きやすい職場」にシフトしていくことが望まれます。
新入社員の意識調査 「月30時間の残業時間は容認できない」
2023年度新入社員の7割以上が「月30時間の残業時間は容認できない」と回答しています(*)。
2024年4月からは、残業時間の上限規制や改善基準告示などの改正が行われます。しかし、他の業界と比較した場合、物流業界は依然として長時間労働です。「では、若手はうちには来てくれないのか?」と言えば、そんなことはありません。物流業界で働きたいと思う人から「選ばれる会社」になれば良い訳です。そこで、今回は求人対策のポイントについて説明します!
求人者は、同業他社の求人票と比較して選別します。ハローワークや求人広告の申し込みの際には、以下の労働条件等を明示する必要がありますが、特に4と5は「働きやすさ」に直結する項目です。そのため、この部分の差別化を図ることが鍵となります。
* 産業能率大学 「2023年度 新入社員の会社生活調査(第34回)」
賃金を上げるのがすぐには難しい場合は、残業時間を見直してみましょう。物流業界の超過実労働時間数は、図1のとおり「35時間(大型)」「31時間(中小型)」です。今の自社の時間と比較し、これよりも長い時間であれば、同業他社に欲しい人材が流れていく可能性が高くなります。
一方で、ただ単に労働時間を短くするだけでは売上を下げ、ドライバーの賃金も下げてしまう可能性もあります。無駄をなくし、効率的に働く方法を考え、売上とドライバーの賃金を維持することが重要です。実際に職場改善を行った結果、優秀な人材の獲得・定着と利益率の向上に成功した運送会社の事例をご覧ください。
残業時間を1日30分減らせば、1か月10時間の削減になります。できる範囲から改善してみてください。
大分労働基準局に労働事務官(当時)として入局。以来、労災保険業務に携わり「脳・心臓疾患」「精神障害等」の給付業務を行う。現在は「メンタルヘルス」「安全衛生部門」「セクハラ・パワハラ」「過重労働対策」を中心に企業に向けてコンサルティングを行なっている。講師活動は年間100本以上、企業、官庁などに向けて多数。