中小企業の8割が SDGs を社業拡大の機会と認識せず、中小機構の調査で判明
公開日:2023年6月1日
SDGs
中小企業基盤整備機構は3月1日、国内の中小企業*を対象にSDGsに対する意識や取組状況を調査した結果を公表しました。
自社の事業機会・利益に結びつける動機が希薄と推察
中小企業基盤整備機構は3月1日、国内の中小企業*を対象にSDGsに対する意識や取組状況を調査した結果を公表しました。
それによると「SDGsを経営に取り入れる目的や意義」の質問に、「企業の社会的責任」「企業イメージの向上」といった回答が約8割に上る半面、「新たな製品・サービスの強化」「取引先との関係強化」「新たな事業機会の獲得」などの回答が2割程度に留まっています。この結果から、中小企業の多くは依然、SDGsをいわゆる「社会貢献」視する傾向が根強く、自社の事業機会・利益に結びつける動機が希薄と推察されます。大企業に比べて中小企業でSDGsの取組が浸透しづらい一因ではないかと同機構は指摘しています。
中小企業がSDGsに取り組むことの有用性を補強する分析結果
世界のほとんどの国で、会社・従業員の数や生産高の圧倒的割合を占めるのは中小企業です。
SDGsの達成やそれを通じた社会課題の解決には、いかに多くの中小企業がこの取組の意義を実感し参画するか、に掛かっているといってもよいでしょう。その点、世界経済フォーラムが2021年11月に公表した報告書**は一つのヒントを示しています。報告書では、世界の中小企業***にまつわる多数の学術論文の精査と300社以上の経営者へのインタビューを踏まえ、将来に向けた様々な変化に対応し、成長する可能性を備えた中小企業を「未来適応型(Future Readiness)」と定義し、下記の3つの特徴に整理しました。3つの特徴のうち、特に(1)および(2)は、SDGs を本業に融合した経営のモデルを示しており、中小企業がSDGsに取り組むことの有用性を補強する分析結果といえます。
(1) 持続的な成長:イノベーションを通じて持続的な財務力を創出している
(2) 社会的インパクト:事業成果が ESG の各側面にプラスの影響を与えている
(3) 適応能力:外部環境の変化に適応し、新たな機会に素早く対応している
また、同報告書は「未来適応型」企業に必要な「中核的要素」を下記のように整理しています。特に「志向性」については、経営者による組織内文化醸成の役割を重視しています。経営者が企業のビジョンに沿った人事評価制度を構築し、従業員にビジョンに沿った自律的な意思決定を促すことを推奨しているのです。
「未来適応型」企業に必要な「中核的要素」
* 中小企業基本法における中小・小規模企業の定義に基づく
** World Economic Forum「Future Readiness of SMEs: Mobilizing the SME Sector to Drive WidespreadSustainability and Prosperity」出典:https://www3.weforum.org/docs/WEF_Future_Readiness_of_SMEs_2021.pdf
*** 欧州連合における「中小企業(Small and medium-sized enterprises)」「中堅企業(Mid-sized enterprises)」
の分類に基づく