SDGs 達成に向けたローカルアクション、フォローアップとレビューの重要性

2023年7月20日

SDGs

現在、SDGsは広く知られる目標、考え方になっています。SDGsは2030年までの達成をめざすべき目標として設定されているもので、取組期間の既に三分の一以上が経過した今、認知の拡大や理解の浸透を推進する段階から、SDGsの達成に向けて行動する段階や、その効果を検証する段階へと移らなければなりません。
SDGsの達成に向けて具体的に行動する際にカギとなるのは、ローカルレベル(地域レベル)におけるSDGsの取組です。それぞれの地域の経済、社会、環境などの実態を踏まえた現実的で実効性の高い対策を打ち出し、地域内外の関係者とともに行動することで、当該地域の課題の解決が期待できます。また、そのような取組が全国、全世界に広がれば、ナショナルレベルやグローバルレベルのSDGsの達成につながることも期待されるのです。
本稿では、SDGsのローカライズの重要性について論じた上で、ローカルSDGsの現状把握と推進を目的に開発された、オンライン SDGs プラットフォーム:Platform Clover(プラットフォーム クローバー)について説明します。

※ 本稿は、法政大学デザイン工学部の川久保俊教授よりご寄稿いただいた。

はじめに

現在の世界が抱えるさまざまな課題を解決し、誰もが幸せに生きることができる世界へ変革することをめざして、2015年9月に開催された国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。“think globally, act locally”という標語が示すように、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて世界の潮流を把握しつつ、各地域で具体的な行動を起こすことが求められています。グローバルな開発目標であるSDGsをローカライズして地域レベルの開発目標(ローカル SDGs)を策定し、その達成に向けて地域の関係者を巻き込みながら取り組むことが、結果として地域の課題解決と新たな価値の創造につながるのです。

成長の限界?

世界の有識者が集まって結成されたローマクラブが1972年に研究レポート「成長の限界」を公開しました。
システムダイナミクスという名称のシミュレーション手法を活用してその後の世界の動向を予測した結果が示されましたが、その内容は衝撃的なものでした。従来の社会経済システムを改善することなく、当時のトレンドのまま人口増加や資源の消費、環境汚染などが続けば、2020年~2040年ごろには成長が頭打ちし、世界に大きな混乱が生じると予測したものであったのです。先人が警告したその2020年に、我々は新型コロナウィルスの感染拡大による世界経済の停滞や社会システムの混乱を経験し、持続可能な開発は大きく後退を余儀なくされました。今回の件を契機として、従来の生活様式やビジネスの在り方などを見つめ直す必要があります。また、持続可能な開発のために必要な要件を再検討しなければなりません。

求められる持続可能な開発への転換

持続可能な開発の考え方の源流を遡ると、1972年に開催された国連人間環境会議(通称ストックホルム会議)にたどり着きます。この会議の成果文書「人間環境宣言」には、『人は、尊厳と福祉を保つに足る環境で、自由、平等および十分な生活水準を享受する基本的権利を有するとともに、現在および将来の世代のため環境を保護し改善する厳粛な責任を負う』とあります。自分たちのことだけを考えるのではなく(利己主義に陥るのではなく)、将来の世代にも配慮すべきという(利他主義的な)世代間倫理の考え方が登場し、その後この考え方は国際的な議論の中で脈々と引き継がれたのです。環境と開発に関する世界委員会(通称ブルントラント委員会)が1987年に公開したレポート「我ら共通の未来」の中で持続可能な開発とは、『将来世代のニーズを満たす能力を損なうことが無いような形で、現在の世代のニーズも満足させるような開発』であると紹介されました。これが現時点で最もよく知られた持続可能な開発の定義です。
その後、2015年に開催された国連持続可能な開発サミットにて「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年までに達成すべき具体的な目標として、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)が提示されるに至りました。人間と地球が今後も繁栄できるか否かは現世代に生きる我々にかかっており、さまざまな課題を抱える現在の我々の世界を変革するためにも、持続可能な開発の実現が求められているのです。

SDGs のローカライズがカギ

2016年~2030年の15年間のゴールとして設定されたSDGsですが、既にその取組期間の三分の一以上が経過し、残すところ10年をきっています。つまり、SDGs達成のための「行動の10年(Decade of Action)」に突入しており、SDGs を認知・理解する段階から、その達成に向けて行動し、効果検証を行う段階へ移行しなければなりません。
しかし、いざ我々の世界を変革するために今日から行動に移して欲しいと要請されても、具体的な行動が思い浮かばずに戸惑ってしまうケースも多いでしょう。そのようなときこそ、“think globally, act locally”の考え方を思い出しましょう。自身の身の回りのことであれば、課題も見つけやすくなります。また、その課題解決に向けて講じるべき行動も思いつきやすいでしょう。課題解決に向けてともに取り組む仲間も見つけやすくなります。世界の潮流を把握しつつ、地元の課題解決から取組を開始すべきです。
上記のような考え方に基づき、国連人間居住計画(UN-HABITAT)や、持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会(ICLEI)は、2030アジェンダの採択直後から“Localizing the SDGs(SDGs のローカライズ:グローバルなゴールであるSDGsを地域レベルに落とし込んで取り組むこと)”の重要性を謳っています。それぞれの地域の経済、社会、環境などの実態を踏まえた、現実的で実効性の高い対策を打ち出し、地域内外の関係者とともにローカルアクションへとつなげていくことで、結果として当該地域の課題が解決されるという考え方です。また、そのような取組が全国的に、全世界的に広がれば、ナショナルレベルやグローバルレベルのSDGsの達成にもつながります。

ローカルレベルのSDGsの枠組み

現時点で、ローカルSDGsの明確な定義は存在しませんが、グローバルレベルのSDGsを意識しつつローカルレベルにカスタマイズしたもの、もしくは地域の課題をSDGsの17のゴールに紐づけて整理したもの、あるいはSDGsの達成に向けたローカルなアクションの総体として捉えられることが多いようです。
ここで、グローバルレベルのSDGs、ナショナルレベルのSDGs、ローカルレベルのSDGsの3階層で整理すると、ローカルSDGsの位置づけを理解しやすい(図 1)でしょう。2030アジェンダの文章中ではSDGsの達成に向けて各国政府が責任を有すると明記されています。日本政府もこれに基づいて「SDGs 実施指針」を決定して変革に向けた行動を国内の関係者に促すなど、さまざまな取組を展開してきました。2030アジェンダにはさらに、地域レベルでの取組が、国の持続可能な開発に関する政策の具体的な実施を後押しすると記されています。このように、2030アジェンダの中でも、ローカルSDGsという文言こそ登場しないものの、地域レベルでSDGsの達成に向けて取り組む必要性が強調されているのです。

ローカルSDGsの取組は、義務的・包括的なものと、自主的・選択的なものの2つに分けることができます。前者は国からの要請を受ける形で行政が中心となってその対応を迫られるものです。後者は各地域固有の条件を踏まえながら自主的に推進するもので、SDGs未来都市の活動などがこの例に該当します。現在、後者のように先駆的にSDGsに取り組む自治体で、成功事例が多数創出されつつあるのです。
グローバルアジェンダを地域レベルに翻訳して関係者の行動誘発につなげるという動きは、過去にも存在します。例えば、1992年に開催された環境と開発に関する国際連合会議(通称:地球サミット)で採択されたアジェンダ21では、28章の中で地域レベルでの活動の重要性を指摘し、各自治体において地域の関係者を巻き込みながら「ローカルアジェンダ21」の策定することを推奨しています。日本では環境分野の行動計画という形で認知されてしまう傾向があったものの、ローカルアジェンダ21を策定する流れは、その後全国の自治体で環境基本計画を策定するという流れを作り出し、我が国の環境行政に大きな貢献を果たしているのです。昨今、2030アジェンダおよびグローバルレベルのSDGsをローカライズし、ローカルSDGsを策定する機運が高まりつつありますが、この流れが地域の課題の解決や新たな価値の創造につながるか、その動向が注視されています。

ローカル SDGs の策定と推進に関する現状①

SDGsの達成に向けた取組を行っている都道府県および市区町村の割合を把握するために、SDGsに関する全国アンケート調査・検討ワーキンググループ(構成員:村上周三東京大学名誉教授、川久保俊法政大学教授)が内閣府に設置されています。毎年全国の47都道府県、1,741の市区町村に対してSDGsの認知度や推進状況等を尋ねる調査票を配布し、ローカルSDGsの策定、推進状況に関する調査を行っているのです。以下、その結果を紹介します。
まずSDGsの認知度は、2017年の調査開始時から年々着実に向上しています。2017年時点ではSDGsの存在を知らないと回答した自治体が過半数を超えている状況でしたが、その後この割合は2018年には5%、2019年には0.1%と減少し、2020年時点では 100%に近い自治体がSDGsを認知している状況です(図 2)。

SDGsの取組状況も、認知状況と同様に年々着実に向上しています。2017年時点でSDGsの達成に向けて取組を推進していると回答した自治体は 8%に過ぎず、2018年時点でもその割合は9%にとどまっていました。しかし、2019年にはこの割合が急拡大して19%となり、2020年には54%に達しています。
SDGsの認知状況と取組状況を比較してみると、SDGsを認知してから具体的な取組につなげるまでに幾ばくかのタイムラグは生じているものの、全国的にローカルSDGsに関するアクションが着実に広がりを見せています(図3)。

ここで、全国の自治体におけるローカルSDGsに関する取組内容を、「1)自治体内部における普及啓発活動」、「2)将来のビジョンづくり」、「3)体制づくり」、「4)各種計画への反映」、「5)関係者との連携」、「6)情報発信による成果の共有」、「7)ローカル指標の設定」に分類し、取組状況を詳しく見ていきます(図 4)。

調査の結果、最も取組が進んでいるのは「4)各種計画への反映」でした。総合計画や地方版総合戦略にSDGsの要素を反映中(反映済み)であるという自治体が多い一方、体制づくりを行うレベルや、ローカル指標を設定して進捗状況や成果を測定するレベルに到達している自治体は、依然少ない状況です。
民間企業や教育機関、一般市民を対象としたSDGsに関するアンケート調査の結果でも同様の傾向が見られます。2018年~2019年ごろにかけてSDGsに関する認知が進み、その後少しずつSDGs達成に貢献し得る取組を実践する流れは生じていますが、依然として具体的な成果の創出に至っている例は限定的です。2030アジェンダもSDGsの達成に向けて進捗を促すためにも、各種取組のフォローアップとレビューの実施を推奨していますが、その段階に至っている組織はわずかです。2021年6月に日本経済団体連合会が報告書「SDGs への取組の測定・評価に関する現状と課題」を発行していますが、その中でも取組に関する効果の測定・評価は欠かせないと強調しています。今後、SDGs達成に向けた行動とそのフォローアップ&レビューの着実な実践が益々重要になります。

ローカル SDGs の策定と推進に関する現状②

2015年に2030アジェンダが採択され、SDGsの実施期間である2016年に入ってからも、当初はなかなかローカルSDGsの取組が広がりませんでした。このような背景の下、ローカルSDGsを推進するための有効な対策を講じる必要があると考えられたのです。そこで、先駆的にSDGsに取り組む人々の経験や苦労話、取組の推進によって得られた成果、蓄積された知見などを、集積して共有できるような「場」を創出することが考えられました。SDGsに取り組む全国の関係者がオンライン上で情報を交換、共有できるようになれば、ローカル SDGs の策定と推進に貢献できるのではないかと考えられたのです。これが、後述するオンラインSDGsプラットフォームの開発の経緯です。

オンラインSDGsプラットフォーム:Platform Clover

オンラインSDGsプラットフォーム「Platform Clover」は、2018年ごろからその枠組みの構想を開始し、その後開発に着手して2020年にα版を、2021年にβ版を公開しました。
Platform Cloverは、世の中のニーズやシーズをSDGsに紐づけて顕在化するとともに、それらをオンライン上でマッチングさせることによって、オープンイノベーションを誘発しつつ、課題解決と新たな価値の創造に導くことを目的とした、オンラインSDGsプラットフォームです(図 5)。SDGs に取り組む関係者の協働・共創を促すため、後述のような機能を備えています。

①SDGs取組宣言機能

SDGsの達成に向けて取り組む意思表示を行うことができます。コミットメントを表明することによって、SDGsアクションの第一歩を踏み出せます。

②SDGsポートフォリオ機能

過去に取り組んできたことをSDGsの17のゴールに紐づける(後づけマッピングする)ことが可能な機能です。さらに、今後の取組の方向性を整理する(先づけマッピングする)ことも可能な仕組みを構築しています。

③プロジェクト発信/検索機能

持続可能な社会の構築に資する中長期的な取組(プロジェクト)を発信できます。また、SDGsのどのゴールと関連が深いプロジェクトなのか明示できるとともに、誰と(どの組織と)一緒に取り組んでいるか示すことも可能です。官民連携プロジェクト等をPRすることもできます。また、他者のプロジェクトを検索することも可能であり、これからSDGsに取り組む者へ学びの機会を提供します。

④プロジェクト進捗管理機能

中長期目標を掲げた後に、実践状況をフォローアップ&レビューすることが重要です。Platform Cloverでは、プロジェクトの進捗状況を指標により可視化できる機能を実装しており、取組の進捗管理が可能です。この機能を活用して、例えば自治体はアカウンタビリティ向上につなげることができます。企業であればESG・SDGs投資先として有望であることを、広くPRすることも可能です。
また、SDGsの達成に向けて努力している組織か否かを見極めることもできます。

⑤アクティビティ発信/検索機能

プロジェクトに紐づける形で、プロジェクトに関する日々の活動の報告を行うことができます。プロジェクトが進展している様子を関係者に示すことが可能です。

⑥ニーズ・シーズの発信/検索機能

自身のニーズやシーズをSDGsに紐づけて発信できます。また、他者が発信したニーズやシーズを検索することができます。ニーズの発信者側には課題解決の糸口を提供し、シーズの発信者側には自身の有するノウハウ、リソースなどの活用機会を提供することが可能です。

⑦パートナーシップ申請/表明機能

世間では、SDGsの達成に向けた包括的連携協定を結ぶという事例が増えています。これをWEB上で実現するのがパートナーシップ申請機能です。一方がパートナーシップ申請を行い、もう一方がこれを受理すれば、互いに「パートナー」として登録されます。また、共同で取り組んでいるプロジェクトには「プロジェクトパートナー」として、関係者(関係組織)を表示させることも可能です。

⑧メッセージやり取り機能

興味のあるプロジェクトを実践している個人(組織)を見つけた際に、その個人(組織)にオンライン上でメッセージを送ることができます。使い方次第で、さまざまな関係者(関係組織)とのパートナーシップの構築につなげることが可能です。

まとめ

地域の課題を解決し、新しい価値や魅力を創出していくためにも、全国各地のローカルSDGs達成に向けた取組をシェア(共有)することが重要です。その際、オンラインSDGsプラットフォームなどをうまく活用することで、情報交換や共有を加速させることができます。また、オンラインSDGsプラットフォーム上に集まる情報(ビッグデータ)を分析すれば、現在どこでどのような活動に注目が集まっているのかを可視化できます。さらに、全国各地のニーズとシーズを顕在化させるとともに、共通言語であるSDGsを介して相性の良いニーズとシーズをマッチングさせれば、イノベーションの創出や地域課題の解決、新たな価値の創造にもつながり得るのです。
以上のように、持続可能な社会の実現に向けて、ローカルSDGsに向けた実際のアクションと、そのフォローアップ、レビューを実践することが求められます。

謝辞:
本稿で紹介した内容の一部は、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20211004)の支援を受けて実施された研究で得られた成果です。ここに記して深甚の謝意を表します。
法政大学 デザイン工学部 教授 川久保 俊

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のサステナブル経営レポート2022年4月(第15号)を基に作成したものです。