補助金申請から入金まで!全体スケジュールを徹底解説

2023年11月15日

その他

補助金を申請したいと思っても、ついためらってしまう事業者が多いのではないでしょうか。
その理由として、難解な公募要領、複雑な申請手段などが挙げられます。この他、申請準備から入金に至るまでの全体感がわからない、次に必要な動きがわからない、といった声も聞かれます。
そこでこの記事では、補助事業の大まかな全体像のほか、必要な手続きや注意点を申請前・申請時・申請後といった段階ごとに解説します。

補助金フローの全体像

作成:(株)Stayway

上図は補助金申請前から入金後の年次報告までの全体像を示しています。
図中の上段は補助金事務局の動き、下段は事業者(=申請者)の動きを表しています。公募開始後、事業者が申請を行い、事務局が審査を行います。採択決定後、事業者は別途交付申請を行う必要があります。

再度審査が行われた後、交付が決定したら、補助事業を開始します。補助事業が終了次第、実績報告を行い、確定検査を受けて補助金の請求手続きに入ります。補助金の入金は、この請求手続きを受けて行われることとなります。
補助金は前もって支払われるものと思われがちですが、上述のとおり、補助事業を行った後に支払われます。つまり補助事業実施時点では、自社で立て替える状態となりますので注意しましょう。

なお、入金後に事業計画実行期間として、当初想定した事業計画を実行し、年次報告を行なう必要があります。公募申請期間や交付申請期間などの具体的な日数については、補助事業ごとに異なります。

ここからは、補助金申請前・申請時・申請後の3段階に分けてポイントを解説します。

補助金申請前

補助金申請前には、自社が活用できる補助事業であるか、自社が申請可能であるかといった確認が必要です。そこで、申請前に行なうべきことについて解説します。

概要理解

まず、制度に関する十分な理解が必要です。設備投資や展示会出展、人材育成など、自社が行う予定の取組に適した補助金であるか、確認しましょう。

また、受給できる補助金の上限額や補助率、対象経費など、補助事業ごとに設定されています。各補助金の情報が書かれたホームページや公募要領を参考にして、内容をしっかりと確認しましょう。

要件のチェック

続いて、自社が申請可能であるか、要件をチェックします。

要件には「〇〇県に事業所を持つ中小企業であること」といった内容のほか、売上要件として「前年の同月と比較して売り上げが〇%下がっていること」といった内容が挙げられている場合があります。

要件は補助事業ごとに異なり、要件を満たさなければ申請出来ません。そのため、申請予定の事業の要件はあらかじめしっかりと確認してください。

補助金申請時

次に、補助金申請時のポイントを解説します。

提出書類の準備

補助金申請時にもっとも重要な提出書類のひとつが、事業計画書です。

提出する事業計画の枚数には制限があります。例として、事業再構築補助金の場合はA4サイズで15枚以内(補助金額1,500万円以下の場合は10枚以内)、ものづくり補助金では10ページ以内とされています。

事業計画作成のポイントは、図や写真・グラフ・フレームワークなどを活用して視覚的にわかりやすく記載することです。審査員の自社事業に対する解像度をあげることで、採択の可能性を高めます。

さらに、決算書や労働者名簿が必要であるほか、特別に提出が求められる書類があります。例えば、加点措置を申告する場合、通常の申請に必要な書類に加えて、別途申請書類の提出が求められることがあります。

申請書類が多く、手順も複雑化しているため、書類上のミスで不採択とならないよう、申請前に公募要領等を熟読し、提出資料の不備や漏れがないか確認しましょう。

提出書類

補助金事業ごとに、必要な手続きや提出書類が異なります。ここでは、一般的に必要となる書類について解説します。多くの場合求められる主な書類は、次のとおりです。

  • ・応募申請書
  • ・事業計画書
  • ・経費明細書
  • ・事業要請書・申請書

なお、一次審査に通過した場合、さらに次のような書類の提出を求められることが多いです。

  • ・確定申告書
  • ・登記簿謄本
  • ・納税証明書

書類提出の手段は郵送・オンライン・持参などがありますが、政府のシステムであるjグランツ(*)による提出が求められる場合があります。

(*)jグランツ(jGrants)について

デジタル庁が運営する補助金の電子申請システムで、24時間365日手続きが可能です。
キーワードから目的の補助金を探すことが可能で、申請後はマイページから交付までの状況が把握できます。
なお、事務局に申請後、アカウント取得・発行までに約3~4週間程度かかるので余裕をもって準備しましょう。

補助金申請後

補助金を申請後、無事に採択されてもすぐに補助金が受給できるわけではありません。
申請後の細かな流れは補助金によって異なりますが、受給に至るまでの間に必要な作業や手続きがあります。ここでは、多くの場合に共通する主な流れを解説します。

補助事業実施・実績報告

交付決定後、補助事業開始から完了までを「補助事業実施期間」と呼びます。補助事業を実施する期間のことで、採択された事業を行う期間です。

事業期間終了後、交付決定書で指定された期日までに実績報告書を提出します。事務局はこの実績報告書の内容を確認した後、補助事業者との間で日程を調整し、事業実施場所を訪問して確定検査を実施します。

確定検査では、実績報告書の内容に基づいて証憑(しょうひょう)、つまり、契約書や納品書・発注書といった企業の取引における真実性や正当性を証明するための書類を検査した後、現地で購入設備の保管状況や補助事業の成果を実際に確認し、必要に応じて書類の修正指示を行います。

確定検査は、その結果が補助金の支払額に直結するので、事業者にとって、採択後の重要な事務手続きとなります。

請求手続き

補助金の支給確定後、請求手続きが受理されたのち、入金に至ります。
 
具体的にはまず、確定検査で承認された補助事業の経費と、その金額に基づいて算出される補助金額が「補助金確定通知書」として示されます。

その後、補助事業者が確定通知書の内容に従って、「精算払請求書」を補助金事務局に対して送付します。

請求手続きの後、約1か月後に事業者が指定した銀行口座に補助金が振り込まれ、補助事業完了となります。

事業計画実行・年次報告

補助金は原則、後払いです。

特例として概算払制度を設けている場合もありますが、その使途を明確にすることが必要です。

また、事業計画は補助事業期間終了後もフォローアップされ、補助事業終了後5年間は事業者の経営状況について「年次報告」が求められます。

このため、補助金で購入した設備は、補助金交付要綱等に沿って厳格に管理されることとなります。

補助金申請~入金までのスケジュール例

作成:(株)Stayway

補助金事業全体の動きについて、事業実施期間の長い「事業再構築補助金」と事業実施期間が短い「省エネ補助金」を例に挙げて、さらに解説します。

事業実施期間が長いもの/事業再構築補助金

事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした補助事業です。

事業実施期間は、成長枠(従来の通常枠)・大規模賃金引上枠・回復/再生応援枠・最低賃金枠では交付決定日から12ヶ月以内(ただし採択発表日から14ヶ月後まで)、グリーン成長枠では交付決定日から14ヶ月以内(ただし採択発表日から16ヶ月後まで)となっています。
事業実施期間終了後に入金となるため、事業再構築補助金の入金は、採択から1~2年程度かかる可能性があります。

事業実施期間が短いもの/省エネ補助金2次公募 

省エネ補助金(正式名称:省エネルギー投資促進支援事業費補助金)は、事業者の更なる省エネ設備への入替を促進するため、設備更新を支援するものです。
2023年5月25日(木)から同年6月30日(金)まで2次公募が行われましたが、事業実施期間は5か月程度で、具体的には交付決定日から2024年1月31日(水)までが事業実施期間にあたります。

まとめ

国や自治体が実施する補助金について、補助事業の全体像のほか、申請前・申請時・申請後それぞれの手続きやスケジュールについて解説しました。補助金申請を検討中の方は、この記事を参考に全体感を把握して、ぜひ、申請準備を進めてください。

株式会社Stayway作成の補助金クラウドMag.掲載記事(2023年6月29日)を基に作成したものです。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

監修: 株式会社Stayway 佐藤淳/公認会計士  

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事。 2017年 自身で旅行スタートアップ(Stayway)を立ち上げ資金調達をした経験を生かしながら、補助金・ファイナンス・M&Aのサポートを実施

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