中小企業をサポートする生産性投資支援!助成金・補助金の種類を詳しく紹介
公開日:2026年3月16日
助成金・補助金

人手不足の深刻化や原材料価格の高騰、最低賃金の引上げ等、中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。こうした状況下で利益を確保し、持続的な成長を遂げるためには、「生産性向上」が急務となっています。
しかし、新しい設備の導入やシステムの刷新には多額の費用がかかり、二の足を踏んでしまう場面も少なくありません。そこで活用したいのが、国や自治体が提供する「生産性投資支援」のための助成金や補助金です。
この記事では、中小企業が活用できる主要な制度を一覧で紹介し、それぞれの詳細やメリット、活用事例について解説します。
さまざまな種類の生産性投資支援

中小企業の生産性を高めるために活用できる補助金はさまざま用意されています。自社の課題やめざす方向性に合致した制度を選ぶことが、採択への近道となるでしょう。
まずは、主要な補助金・助成金の概要を一覧表でまとめると、次のとおりです。

それぞれの補助金・助成金について、さらに詳しく見ていきましょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は「ものづくり補助金」とも呼ばれており、中小企業・小規模事業者が生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を目的とした設備投資・システム導入を行う際に活用できる補助金です。
長年にわたって中小企業支援の主力となっている制度であり、補助金の名称から製造業だけが活用できる制度と思われがちですが、製造業に限らず、商業・サービス業等、幅広い業種が対象となります。例えば、飲食業における新しい提供プロセスの導入や、小売業におけるオムニチャネル化のシステム構築等も補助金の対象です。
補助率や補助上限額は、申請する「枠」や従業員数によって異なります。公募回ごとに見直しが行われていますが、基本的には「製品・サービス高付加価値化枠」や「グローバル枠」等が設けられています。
「製品・サービス高付加価値化枠」は、革新的な製品開発やサービス提供プロセスの改善に必要な設備投資等を支援するもので、通常枠や成長分野進出枠(DX・GX)等があります。一方、「グローバル枠」は、海外事業の拡大・強化を目的とした設備投資等を支援するものです。
申請には事業計画書の策定が必要であり、その計画が革新的であるかどうかが審査の重要なポイントとなります。
ものづくり補助金の概要について解説しています。
新事業進出補助金
「新事業進出補助金」は、既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援するための補助金です。市場縮小や競争激化により、既存事業だけでは成長が見込めない企業が、大胆な事業転換や多角化を図る際に強力な支援となる制度だと言えるでしょう。
この補助金は、従業員数によって補助上限額が異なる設定となっており、規模に応じた支援が受けられる点が特徴です。ただし、挑戦的な取組を支援する性質上、申請には意欲的な成長目標を含む要件を満たす必要があります。
主な要件としては、下記のとおりです。
・付加価値額の成長率
・給与支給総額の増加
・事業場内最低賃金の水準
・行動計画の公表
付加価値額の成長率においては、付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加することが求められます。単なる売上増だけでなく、利益率の改善も伴う質の高い成長をめざす必要があります。
給与支給総額の増加は、1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施の都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上であること、または給与支給総額の年平均成長率が+2.5%以上増加することが必要です。
さらに、事業場内最低賃金の水準においては事業場内最低賃金が、事業実施の都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準であることが求められます。そして行動計画の公表では、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表等をしていることが要件となります。
上記の要件からもわかるように、単に新しい事業を始めるだけでなく、それによって従業員の賃上げや労働環境の改善を実現することが期待されている補助金です。
各種補助金制度のポイントについて解説しています。
中小企業省力化投資補助金
「中小企業省力化投資補助金」は、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援する制度です。IoT機器やロボット等のテクノロジーを導入することで、限られた人員でも業務を回せる体制を構築し、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。
中小企業省力化投資補助金では、申請手続の簡素化が図られているのが特徴です。具体的には、「カタログ注文型」と「一般型」に分けられる申請区分のうち、特に「カタログ注文型」が注目されています。
カタログ注文型では、あらかじめ補助金の対象として登録された「省力化製品カタログ」の中から、自社の課題解決に合った製品を選んで導入する形です。例えば、飲食店の配膳ロボットや自動券売機、倉庫業の自動検品システム、清掃ロボット等が該当します。
従来のような複雑な事業計画書の作成負担が軽減されており、製品販売事業者と共同で申請を行うことで、スムーズに導入・運用を開始できる仕組みとなっています。
中小企業成長加速化補助金
「中小企業成長加速化補助金」は、賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入による地域経済への波及効果が大きい、売上高100億円超をめざす中小企業の大胆な投資を支援するものです。中堅規模へステップアップしようとする成長意欲の高い企業を支援するための制度であり、具体的には売上高100億円をめざす中小企業が対象となります。
この規模の成長をめざす場合、投資額も数億円から数十億円規模になることが珍しくありません。そのため、本補助金では大規模な投資に対応できるよう支援内容が設計されています。
対象となる経費は、建物費(拠点新設・増築等)、機械装置費(器具・備品費含む)、ソフトウェア費、外注費、専門家経費等と多岐にわたります。例えば、海外市場への本格進出を見据えた新工場の建設や、DX(デジタルトランスフォーメーション)を全社的に推進するための基幹システムの刷新等が想定されるでしょう。
地域経済の中核を担う企業(地域未来牽引企業等)が、さらなる飛躍を遂げるための起爆剤として期待されている制度です。申請にあたっては、長期的な経営ビジョンと、地域経済への貢献度を示すことが重要になります。
売上高100億円をめざす取組について解説しています。
大規模成長投資補助金
「大規模成長投資補助金」は、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、足元の人手不足等の課題に対応し、成長していくことをめざして行う大規模投資を促進することで、地方における持続的な賃上げを実現することを目的としています。
地方においては、少子高齢化による人口減少が都市部以上に深刻な課題となっています。雇用を維持・創出するためには、生産性の高い事業拠点の整備が欠かせません。
大規模成長投資補助金では、工場や倉庫、販売拠点等の新設・増築等、最先端の機械や省力化できる設備の購入、ソフトウェアの購入や情報システムの構築等に活用できます。具体的には、老朽化した工場の建て替えに合わせて最新の自動化ラインを導入したり、物流効率を改善するための大型物流センターを新設したりするケースが該当します。
投資規模が大きくなるため、補助金額も比較的高額に設定される傾向にありますが、投資後の事業継続性や雇用計画の確実性が厳しく審査されるので注意が必要です。投資がいかに地域のサプライチェーン強化や賃上げに寄与するかというストーリーを明確に描く必要があります。
地方自治体と連携した事業展開を考えている企業にとっても、有力な選択肢となるでしょう。
業務改善助成金
「業務改善助成金」は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資等にかかった費用の一部を助成するものです。
業務改善助成金は厚生労働省が管轄しており、設備導入だけでなく、従業員の賃金アップを直接的な要件としている点が大きな特徴です。助成される金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と、賃金引上げ幅や対象人数に応じて設定される助成上限額とを比較し、いずれか安い方の金額となります。
対象となる経費の幅は広く、POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮、顧客管理システムの導入による業務効率化等が認められているのです。また、設備だけでなく、業務フロー見直しのためのコンサルティング費用や、新しい機器を操作するための研修費用(人材育成・教育訓練)も対象になる場合があります。
最低賃金の改定に合わせて賃上げを検討している事業者にとっては、賃上げ原資の負担を設備投資への助成という形でカバーできるため、メリットの大きい制度です。
デジタル化・AI導入補助金
「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)は、業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策に向けたITツール等の導入費用を支援してくれる制度です。バックオフィスの効率化から、売上向上のためのフロント業務のデジタル化まで、幅広いIT活用を支援してもらえます。
デジタル化・AI導入補助金は、インボイス対応に活用可能です。会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト等を導入し、インボイス制度に対応した請求書発行や経理処理を自動化する場合に利用できます。
また、数万円程度の安価なITツールの導入にも活用可能であるため、小規模な事業者でも使いやすいのが特徴です。補助額は最大450万円/者、補助率は1/2~4/5と設定されており、導入するツールの機能や枠によって変動します。
例えば、単体のソフトウェアだけでなく、PCやタブレット、レジ等のハードウェア購入費用もセットであれば補助対象になる枠(インボイス枠等)が存在します。さらに、高度なAIを活用した需要予測システムや、サイバーセキュリティ対策ソフトの導入も対象です。
自社のデジタル化レベルに合わせて、段階的に活用できる補助金だと言えるでしょう。
業務のデジタル化について解説しています。
生産性を高めるために助成金・補助金を活用するメリットと留意点

制度の利用は経営に大きなプラスをもたらしますが、同時に注意すべき点も存在します。中小企業が生産性向上のために、助成金・補助金を活用するメリットと留意点を解説します。
活用する5つのメリット
生産性向上につながる助成金や補助金を活用することで、次のようなメリットが受けられます。
・初期投資の負担軽減
・生産性の向上
・新たな技術やノウハウの獲得
・競争力の強化
・経営資源の最適化
助成金や補助金を活用する大きなメリットは、初期投資の負担軽減だと言えるでしょう。設備導入やシステム開発にかかる金銭的負担を減らせることで、中小企業でも前向きに投資を進めやすくなります。
また、最新設備やITツールを導入することで、業務時間の短縮やミスの削減が実現し、生産性の向上が期待できます。補助事業を通じて新しい機械やソフトを導入する過程で、社内に最新技術への適応力や運用ノウハウが蓄積される点もメリットとして挙げられるでしょう。
そして、生産コストの削減や高付加価値製品の開発により、競合他社に対する優位性を築くことにもつながっていきます。ルーティンワークを自動化することで、従業員をより創造的な業務や顧客対応に配置転換でき、人材活用の最適化にも結びつくはずです。
気をつけておきたい4つの留意点
次に、助成金や補助金を申請する際の留意点について見ていきましょう。主な留意点として、以下のものが挙げられます。
・申請手続や書類の準備に時間がかかる
・条件に制約がある
・資金繰りをきちんと考えておく必要がある
・短期的に成果が見えにくい
まず、申請に必要な事業計画書の作成や必要書類の収集には、相応の時間と労力がいります。必要に応じて、専門家の支援を受けることも検討してみましょう。
また、補助対象となる経費の範囲や、実施期間、成果目標(賃上げ等)の条件が細かく定められており、自由な投資が制限される場合があります。申請を行う前に、補助対象となっている項目をよく確認しておくことが大切です。
さらに、多くの補助金は「後払い」となる点にも気をつけておきましょう。設備購入費はいったん全額を自社で立て替える必要があり、補助金が入金されるまでの資金繰り(つなぎ融資等)をしっかりと確保しておく必要があります。
そして設備を導入しても、実際の利益につながるまでにはタイムラグがあります。短期的なキャッシュフローの悪化リスクも考慮して、中長期視点で成果を見据える姿勢が求められるでしょう。
各種補助金制度のポイントについて解説しています。
生産性投資支援の活用事例

他社がどのように課題を解決したかを知ることは、自社の計画策定においても参考になります。生産性向上のための各種支援制度を実際に、活用した事例を紹介します。
事例1:製造業(ものづくり補助金)
ある金属製品メーカーにおいては、少量・小型の金属プレートの加工を得意としており、技術力の高さから金属プレート専門メーカーとして全国に展開していました。金属加工の中でも、仕上げ工程にあたる面取りにおいてはデリケートな加工処理が必要になるため、一つひとつを手作業で行う必要があります。
業界全体としても人材採用に課題を抱えており、面取り作業は金属加工全体の工程の中でも効率化を阻むボトルネックとなっていました。同社は「ものづくり補助金」を活用することで、自動面取機を開発導入し、機械による自動加工を実現しました。
機械に作業を任せることで、それまで面取り作業を行っていた従業員を他の作業に充てることができ、品質の均一化や生産性向上、不良品の低減といった課題をクリアしています。
事例2:サービス業(デジタル化・AI導入補助金)
高齢者向けの通所介護事業所の運営や老人ホームの紹介、障がいを持つ子ども向けの放課後等デイサービスといった事業を展開している企業の事例においては、コロナ禍で急変したコミュニケーションの課題を打開するために「IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)」を活用しています。各事業所にPCやタブレット端末を設置し、オンライン会議システムが開けるように環境を整えました。
また、事業所ごとにSNSアカウントを開設し、オンラインで療育を行うことを発信したり、スタッフ間でやりとりをしながら教材づくりに取り組んだりしました。少しずつ改善を加え、当初は1~2名程度の参加者を半年~1年後には増やすことができ、軌道に乗せた事例です。
事例3:建設業(中小企業省力化投資補助金)
建設業を営む事業者の例では、設備投資を行う前には積算から見積作成までにかかる工数が多く、ミスや計上漏れによる追加コストが発生していました。また、工事部門が営業活動も担っていたことから、十分な時間を営業活動に充てられないという課題も抱えていました。
そこで「中小企業省力化投資補助金」を活用して、AI機能を搭載した工事見積自動作成システムを導入します。過去の見積実績や最新の資材・原価データをAIに学習させることで、顧客の依頼内容に基づいた積算や見積内容の自動生成の実現、迅速な見積回答等をめざしました。
必要な設備を導入した成果として、見積書の作成にかかっていた時間が4分の1に短縮したほか、適切な利益を確保できる高精度の見積書の作成を達成した事例です。
まとめ
中小企業が活用できる生産性投資支援について、主要な補助金・助成金制度について見てきました。ものづくり補助金や中小企業省力化投資補助金等、自社の課題や規模に合った制度を適切に選んで、計画的に活用することで資金負担を抑えながら大きな成長機会を得ることができます。
まずは自社の課題を明確にし、どの支援策が適しているかを検討することから始めてみてはいかがでしょうか。













