「年収の壁」への対応策

公開日:2024年1月19日

人事労務・働き方改革

パート・アルバイトの方の社会保険に関する「年収の壁」について、厚生労働省が当面の対応策を講じています。今回はこの「年収の壁」とその対応策についてお伝えします。なお、本号は社会保険労務士法人みらいコンサルティングに寄稿いただきました。

「年収の壁」とは

扶養範囲内で働いているパート・アルバイトの方が、労働時間の増加や賃上げなどの影響により年収が一定金額を超えると社会保険等の加入義務が生じます。保険料等を自己負担した結果、手取り収入が減る現象を「年収の壁」といいます。この壁を超えないために就業調整をするケースも多く、人手不足の中で社会問題化しています。

「年収の壁」のパターン

社会保険に関する「年収の壁」には、「106万円の壁」と「130万円の壁」があります。「106万円の壁」では、従業員数(=厚生年金保険被保険者数)が101人以上※の企業で週20時間以上勤務する場合に、年収が106万円以上になると本人に「勤務先の社会保険」への加入義務が生じます。「130万円の壁」では、106万円の壁に該当しなかった人でも年収が130万円以上になるとすべての人が社会保険への加入が必要となります。勤務先の従業員数により「年収の壁」のパターンが異なるため注意が必要です。
※2024年10月からは「被保険者数が51人以上」の企業に拡大されます。

「106万円の壁」への対応策

2023年10月から、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。労働者を新たに社会保険に加入させるとともに、収入を増加させる取組を行った事業主に、労働者1人につき最大50万円を助成するものです。この助成金の支給を受けるには手当の支給等の取組を始める前にキャリアアップ計画書を管轄労働局へ提出する必要があります。

「130万円の壁」への対応策

繁忙期に労働時間を延ばすなどにより一時的に年収が130万円以上となる場合には、その旨を妻(妻が夫の扶養に入っているケース)の事業主が証明し、夫の企業に提出することで迅速な被扶養者認定が可能となりました。これにより一時的に妻の年収が増えたとしても、引き続き夫の扶養に入り続けることができます。この「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という仕組みは、あくまでも一時的な事情として認定されるため、認められるのは原則として連続2回(2年)までになります。

対応策の期間と今後の対応

106万円、130万円の「年収の壁」については、「2023年10月から2年」と期限を区切った形で支援が実施されます。今後、政府では各制度の見直しに取り組むこととしており、制度の見直しまでの間、パート・アルバイトの方が手取り面で不利益とならないように、上記の対応策を活用していくことをお薦めします。
(本記事の内容は2024年1月現在のものです。今後、内容が変更されることがあります。また、助成金の支給には一定の要件があります。最新の内容や詳細については厚生労働省のHPをご確認下さい。)

寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング、発行:三井住友海上経営サポートセンター

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