<自然災害・事業継続> 事業継続計画(BCP)・事業継続マネジメント(BCM)に関する取組の公表について ~2016年度・2024年度調査結果の比較~

公開日:2025年7月25日

自然災害・事業継続

■ MS&ADインターリスク総研株式会社は、BCP・BCMへの取組に係る公表について、日経225銘柄の有価証券報告書を対象にした調査を行い、前回調査(2016年度)と比較しました。
■ BCP・BCMに取り組んでいる」旨が分かる記載は30.2%から86.7%と大幅に増加、取組内容の項目別記載率もすべての項目で増加し、内容が充実していることが分かりました。

調査の目的・経緯

MS&ADインターリスク総研株式会社は、日経225の構成銘柄である企業 225 社を対象に、「有価証券報告書」「HP等」を対象として、BCP・BCMに関する公表の実態を2016年度に調査しました。当時の調査結果では、有価証券報告書にBCP・BCM取組に関する記載のあった企業は全体で30.2%でした。また、BCP・BCM取組に関する記載のあった企業のうち、取組内容にも言及していたのは 27.9%でした。

その後実施した別の調査(注1)ではBCP策定率は年々増加しているものの、BCP・BCMに関する取組を不特定多数に開示している割合は減少傾向でした。一方で、BCP・BCMに取り組むメリットとしては「顧客からの信頼の維持」、「株主からの信頼の維持」、「ブランド・風評を守る」等が挙げられており、取組を開示することは上記に資するはずであり、矛盾する結果でした(調査結果は脚注参照)。

そこで、実情を把握すべく、日経225の構成銘柄である企業 225 社を対象(2024年9月時点)に、前回調査時と比較して公表が進んでいるか、公表内容に変化があったかを把握する目的で、BCP・BCMに関する取組の公表の実態を再調査しました。本稿ではその調査結果を紹介します。なお、2016年度調査時は「有価証券報告書」と「HP等」を調査対象としましたが、本稿における調査対象は「有価証券報告書」に絞っていることをお含みおきください。

(注1)「第7回日本企業のBCMに関する実態調査(2022年2月)」調査概要
調査方法:質問紙郵送法 調査対象企業:日本国内全上場企業 3,677 社 ※全上場企業から、調査拒否企業を除外 回答数:293 社(8.0%) 調査期間: 2021 年 6 月~7 月

 

自社BCP・BCM取組に関する公表の有無

「有価証券報告書」において、「BCP・BCMに取り組んでいる」旨がわかる記載があるか(BCP、BCM、事業継続性の確保、の言葉を含むか)を調査しました。前回調査時は「BCP・BCMに取り組んでいる」旨が分かる記載のあった企業は全体で30.2%でしたが、今回調査では86.7%まで増えていました。さらに、記載のあった企業をセクター(注2)に分けて記載率の変化を調べた結果、すべてのセクターで記載率が上がっていることが分かりました(図1参照)。

(注2)セクターとは日経の業種分類(36 分類)を集約して、「技術」「金融」「消費」「素材」「資本財・その他」「運輸・公共」の6つの分類にしたもの。(株式会社 日本経済新聞社「よくあるご質問 (日経平均株価について)2022年4月4日版 3-3. セクターとは何ですか」より引用)

事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について、帝国データバンクが全国の企業に行った調査の結果を解説しています。

自社BCP・BCM取組に関する公表内容

次に、2.にて「BCP・BCMに取り組んでいる」旨が分かる記載があった企業のみを対象に、「有価証券報告書」における「BCP・BCM取組に関する公表内容を、2016年度調査時と同じⅰ~ⅶ、ⅹの項目と、「ⅷ)BCPの見直し・充実化」、「ⅸ)訓練実施」の2項目を加えた10項目を対象として調査しました(表1参照)。

「ⅷ)BCPの見直し・充実化」、「ⅸ)訓練実施」の2項目を加えた理由は、「第9回 事業継続マネジメント(BCM)に関する 日本企業の実態調査 報告書」(2022年2月・当社調べ)により、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえて、既存のBCP等の見直しを約70%の企業が完了/実施中/検討中であったこと、また、BCPに関する訓練を「全く実施していない」と回答した企業が、36.4%から25.9%に減少していたことから、調査対象企業においてもBCPの見直し・充実化や訓練を実施・公表している事例が増えているのではないかと推測したためです。

(1)項目別記載率

2016年度調査時の8項目においては、すべての項目で記載率が上昇していました。また、今回追加した「BCPの見直し・充実化」は28.4%、「訓練実施」56.4%と調査項目の中では比較的高い記載率でした。記載の多い項目としては、「訓練実施」「ユーティリティ強化」で、半数近くの企業において記載されていました。

また、2016年度調査時は記載が認められなかった「基本方針」や「第三者認証取得」についても少数ながら記載が認められました。さらに、今回の調査項目以外の項目をまとめた「その他」の取組も26.7%の企業で確認でき、各社さまざまな取組を実施・公表していることがわかりました(図2参照)。

(2)具体的取組

各社の具体的取組について、記載内容を紹介します(表2参照)。2016年度も調査対象項目としていた「ⅳ)ユーティリティ強化」「ⅴ)機能(拠点)の二重化」「ⅵ)サプライチェーン強化」「ⅶ)第三者認証取得」のうち、青字は2024年度調査において新たに記載が確認できた内容です。取組内容への言及は具体化・多様化しており、2016年度調査時より各企業の取組が深掘りされていることが伺えます。

また、サプライヤーやグループ企業等自社だけでなく関係先を巻き込む取組や、新型コロナウイルス感染症の流行によりリモートワーク等の働き方や勤務環境の変化に合わせた取組が増えていることも特徴的でした。

(3)項目別・セクター分類別記載率

項目別の記載率をセクター分類別で調べた結果は次のとおりでした。セクターにより公表している取組内容に差がありますが、訓練についてはどのセクターでも40%以上の記載が見られました。また、ユーティリティ強化、機能の二重化についてもセクターを問わず一定の記載が見られました(表3参照)。

調査結果 総括

本稿で整理をしてきたBCP・BCM取組に関する調査結果からは、単にBCPを策定し、関連する取組内容を公表するだけでなく、BCP策定済であることを前提に、訓練や見直しを進め、実効性を担保していることも含めて外部へ発信することが当たり前になってきている実態が伺えます。

今回の調査対象は日経225対象企業でしたが、これら情報の公表は、「顧客からの信頼の維持」、「株主からの信頼の維持」、「ブランド・風評を守る」等、前述の取組のメリットにも直結するため、現在BCP・BCM取組を公表していない企業を含むすべての企業においても、何に取り組み、どのように実効性を担保しているのかを公表し、信頼性の確保や企業価値の維持に努めている旨を広く発信することを検討ください。本稿がその一助となれば幸いです。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のBCMニュース(2025 No.2)を基に作成したものです。

MS&ADインターリスク総研株式会社

企業や組織のリスクマネジメントをサポートするコンサルティング会社です。
サイバーリスク、防災・減災、BCM/BCP、コンプライアンス、危機管理、企業を取り巻く様々なリスクに対して、お客さま企業の実態を踏まえた最適なソリューションをご提供します。

また、サステナビリティ、人的資本経営、次世代モビリティといった最新の経営課題にも豊富な知見・ノウハウを有しています。中堅・中小企業にも利用しやすいソリューションも幅広くラインナップしています。

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