コスト削減の方法とは?実現に導くポイントと注意点
公開日:2024年5月13日
その他
コスト削減に取り組む企業が抱える課題はさまざまですが、自社の収益力を改善するために何が必要かを常に把握しておくことは重要です。着実にコスト削減に結び付けるには、自社の課題点を明らかにし、従業員と協力をしながら進めていくことが大切だと言えます。
この記事では、コスト削減の捉え方や具体的な方法、注意点、事例等を解説します。
企業におけるコスト削減とは
企業が持続的な成長を維持するためには利益が必要であり、基本的に「売上-コスト(固定費+変動費)」によってのみ、利益は生み出されます。そのため、企業が利益を増やしていくには、売上を増やすかコストを減らすしか方法がありません。
しかし、コスト削減に取り組もうとする際は注意が必要だと言えます。見直すことで無駄な支出を抑えられるコストがある一方で、利益を上げるために必要なコストもあるからです。
利益を生み出すのに必要なコストを不用意に削れば、品質やサービスの低下につながったり、従業員のモチベーションが下がったりする恐れがあるでしょう。企業としての収益力を損なうことなく、コストを削減していく取組が求められています。
コストに関する内訳
企業におけるコストは業種・業態によってさまざまなものがありますが、一般的には原材料費、人件費、交通費、販売促進費、水道光熱費、家賃等が挙げられます。これらのコストは利益の中から支払っていく必要があるため、一つひとつの費用項目がどれくらいの金額になるかを把握した上で、あらかじめ予算計画を立てておくことが大切です。
ただし、費用ごとに一定額がかかるものもあれば、状況によって必要な金額が変わってくるものもあります。次に、固定費と変動費の違いについて見ていきましょう。
固定費と変動費の違い
固定費とは、人件費(役員給与、役員賞与、従業員給与、従業員賞与、福利厚生費の合計)、減価償却費、支払利息の合計を言います。売上に関係なく計上される経費であり、人件費の他に家賃、通信費、水道光熱費等が挙げられます。
一方、変動費とは売上から経常利益と固定費を除いたものであり、売上や状況に応じて変わる経費のことです。具体的には、原材料費や広告費、交通費、消耗品費等が挙げられます。
コスト削減の具体的な方法
コスト削減を実際に取り組むためには、具体的にどのような方法があるのかを把握しておく必要があります。主な削減方法について解説します。
人件費
企業が事業活動を続ける上で、業種にもよりますが人件費は大きな割合を占めると言えます。人件費は基本給以外にも、残業代、通勤手当、福利厚生費、退職金等が含まれます。
企業の収益力を改善するために人件費について考えることは必要ですが、安易に人件費を削減しようとすれば従業員のモチベーション低下につながる恐れがあるでしょう。むやみに人件費を削減することで、品質やサービスの質が低下したり、人手不足から残業代が増えてかえってコスト増となったりしてはマイナスの影響のほうが大きくなるはずです。
そのため、人件費の削減を検討する前に業務効率化を進め、企業全体としての生産性を高めることを考えてみましょう。
水道光熱費
節電や節水等によって水道光熱費を減らしていく取組は、削減効果を実感しやすいので比較的すぐに取り組めるところがあります。LED電球や人感センサーといった節電につながる機器を導入したり、エアコンの設定温度を変更したりと身近な部分で取り組めることは多いでしょう。
また、クールビズを推奨したり、契約している電力会社やガス会社等を見直したりすることも取組の一環として挙げられます。ただし、水道光熱費の削減に取り組み過ぎて、労働環境が悪化することは避けるべきだと言えます。
従業員の意見も交えながら、どのような部分を削減できるのかを検討してみましょう。
ITツール
ITツールの導入やシステムの刷新によって、業務の効率化をめざすことは可能ですが、自社が抱えている課題を解決できるかという点を精査する必要があります。業務のデジタル化を推進するには、まず業務フローを見直すことから始めるのが重要です。
業務全体の流れを見た上で、ボトルネックとなっている部分を洗い出し、課題解決に結び付くITツールやシステムを導入していく必要があります。そのため、実務を担う現場の従業員や責任者にあらかじめヒアリングを行い、どのような業務に時間がかかり、改善の余地があるのかを把握してみましょう。
共同調達
コスト削減は自社だけで取り組むものではなく、他社と協力をしながら進めていくものもあります。具体的には、他社との調達方法を一本化する共同調達が挙げられるでしょう。
原材料の調達だけでなく、生産加工のための設備を共有したり、販路やノウハウ、人材等を共有したりすることも該当します。他社と連携をして共同調達を行うことで、スケールメリットを活かせるようになり、調達に関する事務コストの削減や価格交渉等に結び付けられます。
自社の取引先や同業他社等との関係性を見直し、どの分野で連携できるかを検討してみましょう。
コスト削減を実現するポイント
コスト削減を着実に実現していくには、実施の目的や数値目標を明らかにして、継続的に取り組んでいく必要があります。収益力の低下を防ぎながらコストを削減するためのポイントを解説します。
コスト削減の目的を明確にする
コスト削減は単に節約することを目的としているわけではありません。業務フローを見直し、無駄な支出を抑えることで業務効率を高め、収益力を改善するのが目的です。
そのため、コスト削減に取り組む際は、まず自社が置かれている現状を把握することが大切です。業務においてボトルネックとなっている部分を洗い出し、必要以上にコストがかかっていないかを精査してみましょう。
数値を設定して従業員に説明する
コスト削減を実現するには、従業員の協力が不可欠だと言えます。コスト削減に伴って今までのやり方を変えることは、従業員にとって負担となる部分があるでしょう。
むやみにコスト削減を推し進めようとすれば、不満が高まってしまう恐れがあります。実際に取組を行う時は、コスト削減を行う目的を説明し、具体的な数値目標を設定した上で、達成することでどのような効果を得られるのかを明確にしてみましょう。
収益とコストを見える化し、コスト削減への取組が収益の改善につながっていることを従業員が把握できる環境を整えることが大切です。
継続的な取組として実施する
コスト削減は前述のとおり、収益力の改善につなげるために行うものです。しかし、実際に取組を始めても、短期的には思うような成果が見られない場合もあります。
従業員にコスト削減の意義を理解してもらい、丁寧にコミュニケーションを重ねながら取り組んでいく必要があります。中長期的な視点に立って、継続的に取り組んでみましょう。
コスト削減に取り組む際の注意点
企業がコスト削減に取り組む際には、従業員のモチベーションや収益力に意識を向けることが大切です。どのような点に注意すれば良いかを解説します。
従業員のモチベーション低下に注意する
コスト削減に取り組む上で注意しておきたい点は、従業員のモチベーションの低下が挙げられます。理由を明確にしない人員削減や極端な節約等は、従業員の働く意欲を下げる恐れがあるので気を付けましょう。
コスト削減を着実に進めていくには、従業員との対話を重ねながら取り組んでいくことが大切です。一気に課題を解決しようとするのではなく、まずは小さな部分から取り組んでいき、コスト削減の成果を従業員とともに確かめていくことが重要だと言えます。
企業全体でコスト削減に対する理解を得ながら、従業員のモチベーションが低下しないように配慮しましょう。
収益力の低下につながるコスト削減を行わない
企業がコスト削減に取り組む目的は、あくまで収益力の改善のためなので、コストを減らすことが利益の低下につながらないように注意する必要があります。特に品質やサービスの低下には気を付ける必要があり、顧客の反応や意見も交えながら徐々に取り組んでいくことが大事です。
コスト削減の取組は業務効率等を見直すことで、むしろ品質やサービスを向上させ、収益力を改善するために行うものです。そのため、施策の実施にあたっては競合他社の動向等も把握しながら、慎重に進めていきましょう。
コスト削減の成功事例|自治体を主に
コスト削減に取り組む際は、既に成功している事例から学ぶことも大切です。ここでは、自治体の事例を基に解説します。
掛川市|指定管理者に設定
掛川市の事例においては、独立採算型を基本とした指定管理を実施することで、管理にかかる経費の削減に成功しています。具体的には、地元の民間事業者を掛川城の指定管理者に選定し、採算の改善につなげました。
関連施設の一体管理によって管理経費を削減し、サービス内容の拡大を実現しています。運用制度の見直しから3年目以降は独立採算型で運営するため、指定管理料は0円となる見込みだそうです。
静岡県|地方税の滞納を共同処理化
静岡県の事例では、静岡県と県内の全市町が協力して広域連合(静岡地方税滞納整理機構)を設立し、徴収が困難な地方税の滞納を共同で処理する取組を行っています。毎年度10億円以上の徴収実績を達成するだけでなく、事務の効率化や職員の能力向上につなげているのが特徴です。
機構においては徹底した財産調査を実施し、差し押さえた財産をインターネット等で公売、換価することで税収を確保しています。
さいたま市|公共施設マネジメント計画の策定
さいたま市では、公共施設の管理運営に関して一定のルールを定め、維持や更新にかかるコストの削減に努めています。具体的には、原則として新規整備を行わず、施設を建て替える場合は複合施設とすることなどが盛り込まれているのが特徴です。
また、市民と問題意識を共有するためにパンフレットの作成や、ワークショップ等を実施しています。一連の取組によって、公共施設の維持、更新に必要なコストを半減させることが期待されています。
まとめ
企業の競争力を高め、収益力を改善していくためには、コスト削減への取組が重要です。企業全体の業務フローを見直すことで業務効率化につながり、コスト削減だけでなく、品質やサービスの向上にもつなげられるでしょう。
コスト削減を着実に実現するには、従業員の理解が欠かせないため、丁寧にコミュニケーションを取りながら進めていく必要があります。現場の従業員の意見も交えながら、自社の課題解決につなげてみましょう。