DX化とは?企業が直面する2025年の崖問題や推進の手順・ポイントも解説!

2024年4月22日

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DX化とは、単に業務のデジタル化を指す言葉ではなく、顧客への新たな価値提供を最終目標とする取組です。DX化を推進するには、自社が抱える課題を踏まえ、中長期的なビジョンを策定し、スピード感を持って取り組んでいく必要があります。

この記事では、DX化の基本的なポイントや2025年の崖問題、DX化を推進する手順やポイント等を解説します。

DX化とは?意味や定義等の概要

DX(デジタルトランスフォーメーション)は日本だけでなく、海外でも注目されている取組であり、多くの組織で実施される流れが生まれています。DXを推進するために、まずはDXの定義や似たような言葉の意味から押さえておきましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味・定義

DXとは、経済産業省が公表しているデジタルガバナンス・コード2.0において、次のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

 

DXは単に最新のデジタル技術を用いて業務をデジタル化するという面だけでなく、企業のビジネスモデルを大きく変化させる取組を指します。どの範囲までの取組を行うかは企業によってさまざまですが、業務フローの見直しや組織の再構築等に取り組むことで、競合他社との競争を有利なものにしていくために実施されるものだと言えるでしょう。

デジタイゼーションとの違い

デジタイゼーションとは、アナログ・物理データのデジタルデータ化を指す言葉です。業務において、アナログデータや物理データのデジタル化をめざす取組であり、具体的にはデジタル製品の導入や業務・製造プロセスを電子化する取組を言います。

DXの大きな違いは、最終的な目標設定にあるでしょう。デジタイゼーションはあくまで既存製品・サービス、業務のデジタル化を表す言葉であるのに対して、DXの場合はビジネスモデルやプラットフォーム、顧客へのアプローチ等を含めた経営革新を意味しています。

デジタライゼーションとの違い

デジタライゼーションとは、個別の業務・製造プロセスのデジタル化を意味する言葉です。製品へのデジタルサービスを付加したり、プロセス全体をデジタル化したりする取組を指します。

デジタイゼーションと同様に、あくまで個々の製品や業務に関する取組であり、全社的な取組となるDXよりも、狭い範囲での取組となります。

DX化に向けた課題とは|2025年の崖問題解消に向けて

企業がDX化を推進する流れを生み出していくには、DX化における課題について把握し、解決方法を押さえておく必要があります。経済産業省が公表している「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」によれば、「2025年の崖問題」が指摘されています。

2025年の崖問題とは、既存システムの複雑化やブラックボックス化によってDXの実現が妨げられる状況が続くと、2025年以降は最大で年間12兆円の経済的な損失が発生する課題を言います。ここでは、2025年の崖問題を解決するための取組について解説します。

2025年の崖について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

 

 

デジタル変革を実現するための経営戦略

近年ではデジタル技術が急速に発展していますが、自社においてどのように活用すべきか戦略を決めていない場合、思うようにDXの取組を進められていない部分があります。企業が競争力を維持し、持続的な成長を遂げるにはDX化を推進し、積極的にデジタル技術を活用することが求められる社会になってきていると言えるでしょう。

しかし、ビッグデータやAI等のデジタル技術をどう活用していくかの方向性を決めかねている企業は少なくありません。自社を取り巻く現在の状況だけでなく、将来のことも見据えながら、自社の経営戦略・事業計画・人材戦略等を見直し、経営課題を洗い出した上でDXの取組を進めていくことが重要です。

レガシーシステムの対処方法

DX化を実現するには、効率的にデータを収集・蓄積・処理するITシステムの導入が必要だと言えるでしょう。既存システムの老朽化や肥大化、複雑化、ブラックボックス化はレガシーシステムの課題として、DX化を妨げる大きな要因となっているケースがあります。

JUAS(一般社団法人日本情報システムユーザー協会)が公表している「企業IT動向調査報告書 2023」では、レガシーシステムの対応状況に関するアンケート調査を行っています。その結果によれば、「半分程度がレガシーシステムである」と「ほとんどがレガシーシステムである」と回答した企業は、基幹システムで39.7%となっています。

レガシーシステムを維持するには膨大なコストがかかる場合があり、本来DX化のために活用したい人材のリソースを奪ってしまうといった問題を引き起こす恐れがあるでしょう。現在の業務には支障がなかったとしても、将来を見据えてそのままシステムを維持し続けるのがよいか、それともシステムを刷新するほうがよいかを早期に検討しておく必要があります。

 

既存システムのブラックボックス化

レガシーシステムの大きな問題は、ブラックボックス化にあると言われています。古いシステムのすべてがブラックボックスとなるわけではなく、システム全体の構造が古かったり、繰り返し行われるメンテナンスによって、データの肥大化や複雑化を招いたりします。

一つの解決方法としては、クラウド化の推進が挙げられますが、これまで使い慣れたシステムを変更するには大きな労力がかかるものです。まずは業務を部分的にクラウド化していくなどして、取組を進めてみましょう。

既存システムの運用・保守に人材が割かれる

DX化の実現には、必要なデジタル人材を確保することが不可欠です。しかし、既存システムがレガシー化している状態だと、システムの運用・保守に多くの人材や労力、予算が割かれてしまうでしょう。

そのため、新たな取組を推進しようとしてもリソース不足に陥ってしまい、思うようにDX化を進められない状況を生み出しやすくなります。システムをどのようにするかといった観点だけでなく、経営資源を最適化する観点からもDX化について検討することが大切です。

IT人材の不足

DX化を推進しようとしても、必要なIT人材を十分に確保できていない企業は多くあります。IT人材とは「2021年版 中小企業白書」によれば、ITツールの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用する人材の総称です。

日本においては労働人口の減少から、人手不足がさまざまな業界で生じており、IT業界においても職種によっては慢性的な人手不足となっています。

自社で必要な人材を確保できない場合は、外部の専門会社に相談をすることも一つの方法です。DXに関して豊富な知見を持った会社であれば、的確なアドバイスを受けられるでしょう。

一方で、外部に頼りきった状態ではDX化を推進しても、社内に経験やノウハウをなかなか蓄積できない部分があります。自社でも人材育成や人材確保に取り組みながら、外部の協力を得ていく流れをつくってみましょう。

DX化を進める手順

DX化を着実に推進させるには、基本的な手順に沿って段階的に取り組んでいく必要があります。「意思決定」「全体構想・意識改革」「推進」「拡大」の4つの手順があり、ポイントをまとめると次のとおりです。

 

プロセスごとに必要となる人材は違ってくるため、すべてのリソースを自社だけでまかなおうとしないことが大切です。外部の専門会社等の協力も得ながら、段階的にDX化を進めてみましょう。

DX化を進めるためのポイント

DX化を推進するには、自社が抱える課題を洗い出し、短期的な施策と中長期的な施策を実施していく必要があります。DX化を成功させるポイントとして、5つの点を解説します。

経営者の意思決定を明確にする

DX化を推進するため、中小企業においては経営者が特に強いリーダーシップを発揮していく必要があります。なぜDX化に取り組む必要があるのかを自社の経営戦略・事業計画等と照らし合わせて、明確なビジョンを策定し、社内や関係先に説明を行っていくことが大切です。

ビジョンを明確にすることで、スピード感を持って経営の変革に取り組めるでしょう。自社で不足する部分は外部に協力を求め、適切な支援者を見つけることも大事です。

身近な業務から推進していく

一口にDX化と言っても、取り組まなければならないことが広範囲にわたってしまい、いつの間にか取組が停滞することも珍しくありません。そのため、まずは短期的に取り組める施策から実施していくことが大切です。

個々の業務からデジタル化を進めていけば、比較的早い段階でDX化の効果を実感できるでしょう。小さな成功体験を積み上げていくことで、従業員の意識を変えていくことにもつながります。

自社でのノウハウの蓄積や人材確保・育成を並行して取り組んでいき、徐々に施策を拡大していくのがポイントです。

デジタル人材の確保は内外で行う

DX化を推進していくには、自社の経営や事業への理解とデジタル技術への理解の両方が必要になります。すべてのリソースを自社でまかなえれば問題はありませんが、現実的にはデジタル人材を確保するために外部から人材を採用したり、自社で育成したりする必要があるでしょう。

外部の人材を起用しながらも、少しずつ自社でノウハウを蓄積していくことによって、人材育成や中長期的な施策の実施につながっていくはずです。

デジタル人材について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

 

組織全体における意識・文化の改革を行う

DX化の最終的な目的はデジタル技術の導入に留まるものではなく、顧客に対して新たな価値を提供していくことにあります。そのため、DX化を進めていく流れのなかで、既存のビジネスモデルや組織の変革にも取り組んでいく必要があるでしょう。

短期的な施策の実施やノウハウの蓄積等を積み重ねることで、組織全体でDX化を推進していく機運が高まりやすくなるはずです。

中長期的な目標を設定して取り組む

DX化を実現するには、ビジネスモデルや組織の変革を伴うため、5年・10年先を見据えた経営のビジョンを持つ必要があります。初めの段階では外部の人材を活用していても、徐々に自社で人材育成を進めていくため、長い時間とコストがかかります。

そのため、中長期的な取組に対する明確なビジョンを定めて、目標を達成していくことが重要です。

まとめ

DX化とはデジタル技術を用いて、最終的に顧客への新たな価値提供を行うための取組を言います。個々の業務のデジタル化だけではなく、既存のビジネスモデルや組織のあり方等を変革し、中長期的な計画として推進していくものです。

そのため、DXにおける自社の経営課題を洗い出し、必要に応じて外部のサポートを受けていくことが大切だと言えます。まずは短期的な施策の実施を積み重ね、社内の意識改革を図っていきましょう。

人材育成やノウハウの蓄積が進んでいけば、少しずつDXの実現に近づいていけるはずです。

【参考情報】

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