食品関連事業に係る法改正等の動向(2024年3月末~2025年6月公布・発出)
公開日:2025年10月22日
法改正

2024年3月末から 2025年6月15日にかけて公布・発出された、食品関連事業に係る主な法改正等を以下に示します。
自社の事業に関連する項目の改定がないか確認し、関連する項目がある場合は、適切に対応することが求められます。
機能性表示食品の届出の方法、様式等に関する告示(注1)(所管:消費者庁)
紅麹関連製品に係る事案を踏まえ、機能性表示食品制度の信頼性を高める観点から、2024年8月23日に食品表示基準が改正されました(届出内容の明確化、届出後の遵守事項、表示方法等の見直し)。このうち、2025年4月1日に施行された以下の事項について、2025年3月25日に、様式および報告の方法等を定めた告示がなされました。
【主な内容】
1. 以下の届出事項に係る届出の方法(別表第26の1の項から4の項まで及び6の項)
・ 表示の内容
・ 食品関連事業者名及び連絡先等の食品関連事業者に関する基本情報
・ 安全性及び機能性の根拠に関する情報
・ 生産・製造及び品質の管理に関する情報
・ その他の必要な事項
2. 生鮮食品について遵守すべき事項その他の必要な事項(別表第27の2の項第8号)
3. 「遵守の状況等の自己点検及び評価並びにその結果」に係る報告の方法(別表第27の4の項)
【補足】
・ 各様式は、「機能性表示食品の届出等に関するマニュアル」に記載していた様式等の一部を見直した上で規定されました。
・ 「機能性表示食品の届出等に関するマニュアル」の記載から、様式・構成・留意点を変更し、「機能性表示食品の届出等に関する手引き」(注2)として整理されました。当該手引きは2025年4月1日から適用、同日付で「機能性表示食品の届出等に関するマニュアル」は廃止されました。
・ 「機能性表示食品の届出等に関する手引き」において、「機能性表示食品に関する質疑応答集」(注3)で示されていた内容の一部が整理されたことから、同質疑応答集の全部改正が行われました。
・ 「遵守の状況等の自己点検及び評価並びにその結果」の報告の様式が規定されました。
【関連記事】
紅麹サプリメントで発生した健康被害を受けて改正された、機能性表示食品に係る一連の関係法令について示しています。
機能性表示食品の届出等に関するマニュアルについて示しています。
食品表示基準改正(所管:消費者庁)
2025年3月28日に食品表示基準が改正されました。主な改正内容は以下のとおりです。
【主な内容】
1. 栄養強化目的で使用した添加物の表示義務化(第3条第1項、別表第4、別表第24)
栄養強化目的で使用したレトルトパウチ食品やしょうゆ、粉末清涼飲料などの添加物は表示が免除されていたが、第3条からこの規定が削除され、他の添加物同様、表示することとされた。
※ 経過措置期間:2030年3月31日まで
2. 栄養成分表示の見直し(別表第9・10・12関係)
栄養成分表示に関して、下記のような改正が行われた。
・ 食物繊維における許容差の範囲に低含有量である場合の許容差を追加。0と表示することができる量の規定追加。
・ ビタミンB群における測定法の追加。
・ 日本人の食事摂取基準(2025年版)の公表を踏まえた栄養素等表示基準値の改正(たんぱく質、脂質、ナトリウム等)。
・ 栄養素等表示基準値の見直しに伴う、栄養成分の補給ができる旨の表示の基準値の改正(たんぱく質、亜鉛、カルシウム等)。
※ 経過措置期間:2028年3月31日まで
3. 個別品目ごとの表示ルール改正・削除(別表第3・4・5・19・20・22関係)
個別品目ごとの表示ルールが課されていた以下の品目について、全体的な表示基準が整備されたことで、その役割が一部終了していることから、個別ルールの改正または削除が行われた。
個別ルールが削除されたものについては、食品表示基準第3条(横断的義務表示)が適用される。
・農産物缶詰及び農産物瓶詰 ・即席めん ・パン類 ・ハム類 ・ソーセージ
・畜産物缶詰及び畜産物瓶詰 ・ハム及び魚肉ソーセージ ・うに加工品 ・うにあえもの
・乾燥わかめ ・マーガリン類 ・調理冷凍食品(2026年4月1日施行)
・チルドハンバーグステーキ ・チルドミートボール ・チルドぎょうざ類
・レトルトパウチ食品 ・調理食品缶詰及び調理食品瓶詰 ・炭酸飲料 ・ジャム類
・マカロニ類 ・みそ ・塩蔵わかめ
※ 経過措置期間:2030年3月31日まで
【補足】
・ 2025年度も引き続き、17品目について検討予定。
・ 食品表示基準の一部改正に伴い、関連するQ&A、ガイドライン等も改定された。
✓「食品表示基準について」及び「食品表示基準Q&A」の一部改正
✓「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン」(第5版)(注4)公表
【関連記事】
消費者庁が2024年10月に公表した「食品表示法に基づく自主回収の届出状況」を示しています。
食品期限表示の設定のためのガイドライン改正(所管:消費者庁)
2005年に厚生労働省および農林水産省により策定された「食品期限表示の設定のためのガイドライン」について、食品ロス削減の観点から見直され、2025年3月28日に、食品表示基準Q&Aに「別添 食品表示期限の設定のためのガイドライン」(注5)として追加されました。
【主な内容】
1. 消費期限または賞味期限の設定
本来の用語の定義(食品表示基準第2条)に基づき、食品の特性等を考慮し、どちらかを正しく表示する。
2. 食品の特性等に応じた客観的な項目(指標)及び基準の設定
その食品を最も理解している事業者が、HACCPに沿った衛生管理での危害分析を踏まえ、客観的な項目(指標)を科学的・合理的に自ら決定する必要がある。
3. 食品の特性等に応じた「安全係数」の設定
食品の特性等に応じ、安全係数は1に近づけること、差し引く時間や日数は0に近づけることが望ましい。
微生物が増殖する可能性等の変動が大きい食品は特性に応じて安全係数を設定。加圧加熱殺菌しているレトルトパウチ食品等、変動が少なく、客観的な項目から得られた期限で安全性が十分に担保されている食品は、安全係数を考慮する必要はないと考える。
4. 特性が類似している食品に関する期限の設定
商品アイテムが膨大であること等を考慮すると、個々の食品で試験等を行うことは現実的ではないため、特性が類似している食品を参考にした期限の設定も可能である。
5. 賞味期限を過ぎても「食べることができる期限」
消費者等から求められた場合には、まだ食べることができる期限の目安について、できる範囲で情報提供に努める。
「食品用器具及び容器包装のポジティブリスト制度に関するQ&A」(注6)策定(所管:消費者庁)
2018年6月に食品衛生法等の一部が改正され、食品用器具および容器包装に用いる合成樹脂について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度が導入されました。2025年5月31日にポジティブリスト制度の経過措置が満了することから、「食品用器具及び容器包装のポジティブリスト制度に関するQ&A」が、2025年5月23日に策定されました。
【主な内容】
・「2020年6月1日前に販売等されていた器具又は容器包装と同様のもの」について、2025年6月1日までに確認が間に合わない場合の具体的な対応方法が示された。
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のPLレポート(食品安全)2025年7月号を基に作成したものです。

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