厚生労働省、労働安全衛生規則を改正し熱中症対策を義務化

公開日:2025年9月17日

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厚生労働省は2025年5月20日、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」を公表しました。2025年6月1日より改正施行される「労働安全衛生規則」により、事業者は一定の条件下(注1)で従業員に作業を行わせる際、「体制の整備」、「手順の作成」、「関係者への周知」が義務付けられたことを周知しています。

労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について

「体制の整備」は、定期的な職場巡視や体調確認を通じた熱中症初期症状の把握と、発見した場合の報告先や連絡方法の明確化を指します。「手順の作成」は、熱中症の恐れがある者に対する作業離脱、身体冷却等重篤化を防ぐ措置の内容およびその実施手順を定めることです。そして、それらの体制や手順について、見やすい場所への掲示やメール送付によって、作業者に確実に伝わるよう「関係者に周知」することが求められています。本改正で新設された規則は、労働安全衛生法の第22条に基づくもので、違反した場合には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があります。

 

熱中症対策義務化の認知度・実施対策の調査結果について解説しています。

 

改正の背景としては、近年顕著となっている気候変動による夏場の気温の高まりがあります。2015年には職場における熱中症の死傷者数は464名でしたが、2024年には1,257名と、10年で約3倍に増加しています(注2)。また、熱中症は労働災害の中でも死亡災害に至る可能性が高いことも対策が急がれる理由です。厚生労働省の統計で、発生件数が最多なのは「転倒」、死亡者数が最多なのは「転落墜落」ですが、“死亡率”は熱中症が最も高くなっています。厚生労働省によると、熱中症の死亡災害の多くは初期症状の放置または対応の遅れによって生じているとされており、事業者が本改正の趣旨に沿って対策を進めることで、事態の改善が期待されます。

義務化の背景・具体的な内容、対応策について解説しています。

 

熱中症に対しては、建設や運輸等、屋外や高温環境下での作業を伴う業種を中心に、休憩時間の確保や冷却機能付き作業服の導入等の対策が浸透しつつあります。しかし、死傷者数の増加傾向は、気候変動によるリスクの高まりに対策が追い付いていないことを示唆しています。加えて、人材不足や健康経営への注目を背景に、企業が従業員の健康や安全を守る責任は一層厳しく問われています。経営者やリスク管理の担当者には、法令上の義務を果たすのに留まらず、リスクの高まりや社会的要請といった環境の変化を勘案し、自社の現場に即した実効性ある対策を実施ください。

(注1)WBGT(湿球黒球温度)28度または気温31度以上の作業場において行われる作業で継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの
(注2)厚生労働省発行パンフレット「職場における熱中症対策の強化について」より引用

参考情報:2025年5月20日付 厚生労働省HP

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2025年7月(2025年度第4号)を基に作成したものです。

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