帝国データバンク公表「熱中症対策の義務化、企業の55.2%が認知 建設業で認知度高く」
公開日:2025年6月18日
人事労務・働き方改革
自然災害・事業継続

「熱中症対策の義務化」を認知している企業の割合は 55.2%となりました。なかでも、『建設』は約 8 割と、全体を大幅に上回っています。何らかの熱中症対策を行っている、または検討している企業は95.5%となりました。対策を行っている企業のうち、「クールビズの実践」が 70.5%でトップ、「扇風機やサーキュレーターの活用」が 6 割台で続きました。なお、「熱中症警戒アラート」という言葉を認知している企業の割合は 79.9%、「WBGT(暑さ指数)」は 54.8%でした。
企業の半数超が「熱中症対策の義務化」を認知、特に『建設』で認知度高く
2025 年 6 月 1 日より、労働安全衛生規則改正で事業者に対して熱中症対策が義務付けられる¹など、企業における熱中症対策の強化が求められています。
そこで、「熱中症対策の義務化」について尋ねたところ、「詳しく知っている」と回答した企業は 15.6%、「なんとなく知っている」は 39.5%でした。合計すると、今回の義務化を『認知している』企業は 55.2%となりました。他方で、「聞いたことがある」は 18.6%、「知らない」は 26.3%でした。
『認知している』企業の割合を業界別にみると、作業環境上、義務化の対象となることが多い『建設』は79.3%と全体(55.2%)を 20 ポイント以上上回る結果となりました。

なお、熱中症に関連する言葉の認知について尋ねたところ、「熱中症警戒アラート²」という言葉を「詳しく知っている」企業は 21.4%、「なんとなく知っている」は 58.5%でした。合計すると、『認知している』企業は 79.9%と、約 8 割にのぼりました。他方で、「聞いたことがある」は 14.6%、「知らない」は 5.5%でした。
また、「WBGT(暑さ指数)³」という言葉を『認知している』企業は 54.8%となった一方で、「聞いたことがある」は 24.2%、「知らない」は 20.9%であり、「熱中症警戒アラート」の発表基準にもなっている「WBGT」の認知度が比較的低い結果となりました。
¹:熱中症の重篤化を防止するため、「WBGT28 度以上または気温 31 度以上の環境下で、連続 1 時間以上または 1 日 4 時間を超えて実施」が見込まれる作業を対象に、体制整備・手順作成・関係者への周知が、事業者に義務付けられる
出所:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」(2025 年 5 月アクセス) https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf
² :「熱中症警戒アラート」は熱中症の危険性に対する「気づき」を促すものとして、府県予報区等内において、いずれかの暑さ指数情報提供地点における、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が 33(予測値)に達する場合に発表される情報
³ :「WBGT(暑さ指数)」は人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」を取り入れた温度の指標

企業の95.5%が熱中症対策を実施、クールビズ等「予防対策」が目立つ
熱中症対策について尋ねたところ、何らかの対策を行っている、または検討している企業は 95.5%と9 割を超えました。
対策を行っている企業のうち、「クールビズの実践(制服や作業服の変更などを含む)」が 70.5%でトップとなりました(複数回答、以下同)。次いで「扇風機やサーキュレーターの活用」(60.7%)が 6 割台、「水分・塩分補給品の支給」(55.7%)が 5 割超となりました。「ファン付きウェアやサングラスの活用」(36.9%)および「空調設定の見直し」(30.4%)が 3 割台で続き、クールビズや設備・備品の充実、暑さ対策グッズの支給による「熱中症予防」に関連する対策が上位に並ぶ結果となりました。
一方で、「臨時休暇の設定」(2.9%)や「営業(就業)時間の短縮」(3.9%)、「リモートワークの強化」(6.3%)等、稼働時間・柔軟な働き方に関する対策は低水準にとどまりました。
また、6 月 1 日からの義務化の措置に該当する対策をみると、「熱中症予防・重篤化防止の学習と周知」は 23.1%で 2 割台となり、「熱中症に関する報告体制の構築」(15.2%)および「搬送先など緊急連絡先の周知」(13.0%)は 1 割台、「職場巡視やバディ制、ウェアラブル機器などによる熱中症の把握」(4.8%)は 1 ケタ台にとどまりました。
「熱中症の把握・対処」に関連する対策の実施割合が低い傾向となっています。
なかでも、『建設』では「熱中症予防・重篤化防止の学習と周知」が 49.3%(全体比+26.2 ポイント)、「熱中症に関する報告体制の構築」が 32.6%(同+17.4 ポイント)となるなど、全体より高くなっているものの、グッズの支給等他の対策と比べると取組状況は十分とは言えません。企業には自社における作業環境を確認し、従業員の熱中症リスクがある場合はこれらの対応を進めることが求められます。

まとめ
本調査の結果、6 月 1 日から施行される「熱中症対策の義務化」を認知している企業は 5 割を上回りました。なかでも作業環境上、義務化の対象となることが多い『建設』は約 8 割と、全体を大幅に上回る結果となりました。なお、「熱中症警戒アラート」という言葉を認知している企業は 8 割、「WBGT(暑さ指数)」は 5 割超でした。
また、何らかの熱中症対策を実施・検討している企業は 9 割超にのぼりました。具体的な対策においてはクールビズの実践や設備・備品の充実、暑さ対策グッズの支給による熱中症予防対策が上位に並ぶ結果となりました。一方で、「熱中症に関する報告体制の構築」等、対象企業に義務付けられた「熱中症の把握・対処」関連対策の実施割合は低い傾向となっています。
今回の調査では、「従前より熱中症対策について就業環境整備に一定の配慮をしてきたが、年々猛暑が厳しさを増すなか、現行の対策で十分か再考の余地がある」(機械製造)といったコメントにあるように、近年の気温の上昇を受け、今後の熱中症対策の強化を課題に考える企業は少なくありません。また、「エアコンの新規導入を考えているが、設備投資額が大きいため、補助金を活用できないか情報収集している」(メンテナンス・警備・検査)等、対策を強化したいものの、費用面がネックになっている様子もうかがえました。
2025 年の夏の気温も平年より高いことが見込まれており、熱中症のリスクが高まっています。企業には補助金等公的支援を活用しながら、自社に合った熱中症対策を強化することが求められるでしょう。


株式会社帝国データバンク発行の「熱中症対策に関する企業の実態アンケート」(2025年5月21日)を基に作成したものです。