休職中の社員の社会保険料負担
公開日:2023年7月28日
更新日:2024年10月7日
人事労務・働き方改革
今回は私傷病で休職する社員の社会保険料(健康保険および厚生年金保険)に関して、社員負担分の取扱を会社側の観点から解説いたします。
私傷病休職中の社会保険料の納付
私傷病による休職中も、社会保険の被保険者資格は継続します。そのため、休職中の社員の社会保険料についても、会社と社員の両方の負担が発生するのです。
休職中でも支払う給与がある場合には、社員負担分を控除できます。しかし、支払う給与がない場合には、社員負担分をどのように本人に支払ってもらうかが問題になります。
法律上「事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う」と定められているため、社会保険料の納付義務は事業主にあるので注意が必要です(健康保険法第161条、厚生年金保険法第82条)。
社員負担分の社会保険料の立て替え払い
社員が休職中であっても、会社は社会保険料について社員・会社の各負担分の合算額を納付しなければなりません。一般的には、会社が社員負担分を立て替えて納付し、社員には毎月、会社の口座に振り込んでもらうなどの対応で立て替え分を回収しています。
しかし、休職したまま回復せずに退職してしまうなどで、立て替えた社会保険料を回収できないケースがあります。このような事態に備えて、休職期間中の社会保険料の取扱について就業規則などに定めておくこと、休職前に対象となる社員と支払い期日や方法を確認しておくことなどが重要です。
傷病手当金からの社会保険料の控除
私傷病で休職している健康保険の被保険者には、医師が労務不能と認めた期間で、会社からの給与が支払われていない場合に健康保険から傷病手当金が支給されます。この傷病手当金については、「傷病手当金支給申請書」の「受取代理人」欄で、被保険者本人が事業主への受領の委任を指定できます(※)。この代理受領により、傷病手当金は会社の口座に振り込まれます。会社は、この傷病手当金から社員負担分の社会保険料を控除して差額を本人名義の口座に振り込むことで、社員負担分の回収漏れを防ぐことができます。
※2023年1月から協会けんぽの「傷病手当金支給申請書」様式が変更され、「受取代理人」欄が削除されました。現在、代理受領はできなくなりましたのでご注意ください。
傷病手当金からの社会保険料控除時の注意点
健康保険法は、「通貨をもって報酬を支払う場合に、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を控除できる」と定めています。傷病手当金は報酬ではないので、一方的な控除は社員とのトラブルになる可能性があります。
したがって、休職中に支給される傷病手当金から社員負担分の社会保険料を控除することについて、社員の同意書をとることが重要です。また、保険料控除後の差額を本人に振り込む際は、内訳の通知書を交付する必要があります。
(寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング)
三井住友海上経営サポートセンター発行のビジネスニュース2022年12月(第318号)を基に作成したものです。