カスハラ・求職者セクハラ対策の義務化受け、 企業の対応で厚労省が通達・Q&Aを公表

公開日:2026年9月4日

ハラスメント

厚生労働省は2026年4月24日、ハラスメント防止措置義務規定等に関する通達を発出しました。これは2025年6月の改正労働施策総合推進法公布を受けたもので、2026年10月の同法施行に伴うカスタマーハラスメント(カスハラ)対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化で企業に求める実務対応が示されました。

企業におけるカスハラ対策

企業のカスハラ対策については、同省が2026年2月に公布した「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」で、事業主が雇用管理上講ずべき措置や留意点を掲載しました。今回の通達は、この法令や指針の運用、行政解釈を示す資料の位置付けです。同省は通達に併せて、判断に迷いやすい事項を補足する目的で、解釈事項を整理したQ&Aを公表しました。

カスハラは、①職場で行われる顧客等の言動で、②業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超え、③労働者の就業環境が害される――の3つの要件をすべて満たすものと定義されます。ここでいう「顧客等」には、顧客や取引の相手方、施設の利用者その他の事業に関係を有する者が含まれます。また、店舗や施設での対面の言動だけでなく、電話やSNS等インターネット上で行われる場合も該当します。

事業主が必ず講ずべき措置には、▽労働者を保護する方針の明確化と周知・啓発、▽カスハラや対処内容の周知、▽相談窓口の設定と周知、▽窓口担当者が相談に適切に対応するための仕組みの整備やスキル養成、▽カスハラ発生時の対応(事実確認、被害者への配慮、再発防止等)、▽抑止のための措置――等を含みます。

 

厚生労働省が2025年12月に示した「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」について解説しています

 

一方で、指針は、カスハラに該当しない事例も挙げています。例えば、障がい者の顧客が、障害者差別解消法が禁じる不当な差別的取扱いをしないよう求めた場合は、正当な申し入れと受け止め、合理的配慮が必要としています。

なお、Q&Aは、事業主がカスハラ対応を図る際の実務的な指針を提示しています。以下は主な例です。
● 顧客等の言動がカスハラにあたるかどうかの判断や必要な措置を実施する主体を事業主であると明示。当局は個別事案を判断しない
● 事実確認を目的にした顧客とのやり取りの録音・録画は、個人情報保護法に従って利用目的を事前に明示しておくことで可能。録音・録画していることをその場で伝える義務はないが、顧客が「容易に認識可能とするための措置」が必要
● 今回の改正法は、事業主が顧客等に対して何らかの措置を行う新たな法的権利・権限は設けていない。例えば、悪質なケースには、警告文や出入り禁止処分等の指針が示す対処例などを参考に事業主が決める

同じく、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(セクハラ)対策も事業主の義務となります。求職活動等におけるセクハラとは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等の求職活動等が阻害されるものを言います。指針は、同性に対するものや、性的指向またはジェンダーアイデンティティに関わらず行われるものも対象となり得るとします。

求職活動等には、採用面接や就職説明会、労働者への訪問、インターンシップ、教育実習、看護実習等が含まれます。OB・OG訪問を行うための飲食店や、就職説明会を行うための貸し会議室、学校のキャンパスやSNS等のオンライン上等通常の職場内に限られません。懇親の場等でも実質上採用活動の延長と考えられる場面も含まれます。

事業主は次のような対策が求められます。▽求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容およびこれを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発、▽性的な言動を行った者には厳正に対処する旨の方針や対処内容の就業規則等への規定、▽求職者等と面談等を行う際のルールの明確化、▽労働者・求職者等に周知・啓発、▽求職者等からの相談に応じる窓口体制の整備、ホームページやパンフレット等を通じた周知―等。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2026年6月(2026年度第3号)を基に作成したものです。

MS&ADインターリスク総研株式会社

企業や組織のリスクマネジメントをサポートするコンサルティング会社です。
サイバーリスク、防災・減災、BCM/BCP、コンプライアンス、危機管理、企業を取り巻く様々なリスクに対して、お客さま企業の実態を踏まえた最適なソリューションをご提供します。

また、サステナビリティ、人的資本経営、次世代モビリティといった最新の経営課題にも豊富な知見・ノウハウを有しています。中堅・中小企業にも利用しやすいソリューションも幅広くラインナップしています。

関連記事

ホワイトハラスメントが起こる原因と防止策を詳しく解説

2026年7月13日

ハラスメント

厚生労働省 カスタマーハラスメント対策の指針案示す

2026年4月1日

ハラスメント

【2026年施行予定】カスタマーハラスメント対策が義務化へ!改正労働施策総合推進法が企業に与える影響

2025年12月8日

ハラスメント

第2回 従業員のための相談対応体制の整備と対応マニュアル作成のポイント

2025年6月6日

ハラスメント

医療機関・福祉事業者に求められるカスハラ対策

2025年5月23日

ハラスメント

おすすめ記事

企業向け防災グッズ一覧|中小企業が備えるべき備蓄品と選び方・管理方法を解説

2026年8月31日

自然災害・事業継続

原材料価格高騰はなぜ起きる?中小企業への影響と価格転嫁・コスト対策を解説

2026年8月24日

経営に関する全般

線状降水帯とは?中小企業の経営に与える影響と備えるべき防災・BCP対策を解説

2026年8月3日

自然災害・事業継続

フィジカルAIとは?生成AIとの違いと活用事例をわかりやすく解説

2026年7月27日

人事労務・働き方改革

人手不足

ホワイトハラスメントが起こる原因と防止策を詳しく解説

2026年7月13日

ハラスメント

週間ランキング

弁護士が解説!【2026年10月1日施行】同一労働同一賃金ガイドライン改正に伴う実務対応と経営者・人事部門が検討すべきこと

2026年8月19日

人事労務・働き方改革

週44時間特例廃止はいつから?対象範囲・影響・対策を詳しく解説

2026年6月29日

人事労務・働き方改革

【2026年最新】ハラスメントの種類一覧|定義・具体例・企業の対応策を解説

2024年7月3日

人事労務・働き方改革

ハラスメント

子ども・子育て拠出金とは?会社負担額と計算方法・納付のポイントを解説

2025年6月16日

人事労務・働き方改革

日本が年々暑くなる理由とは?原因と対策、企業に求められる対応について解説

2025年9月8日

自然災害・事業継続

経営に活用できる有効な情報を
定期的に発信します。

※各ニュースの内容やサービス名称等は、すべて公開日現在の情報です。
 その後の法改正や制度改定、サービス名称の変更等は反映しておりませんので、ご注意ください。