オムニチャネル化とは?日本型の特徴や戦略を成功させるポイントを紹介

公開日:2024年11月25日

オフラインとオンラインのそれぞれの特性を活かし、さまざまなチャネルの連携を図るのがオムニチャネルです。自社が展開する複数のチャネルや業態を相互に連携させることで、相乗効果を生み出し、新たな付加価値を顧客に提供するきっかけをつかむことが期待できます。

この記事では、オムニチャネルの基本的な捉え方や日本型オムニチャネルの特徴、成功に導くためのポイント等を解説します。

オムニチャネルとは

オムニチャネルとは、オンラインやオフラインを問わず、あらゆるチャネル(集客するための媒体、経路等)を相互に融合させることを言います。それぞれのチャネルの境目をなくして運用することで、多様なニーズに対応できる仕組みづくりを行うのが目的です。

オンラインとオフラインの情報がシームレスに提供される状態をつくることで、自社の認知度の向上や商品等の販売拡大につなげることが期待できます。

 

オムニチャネルが指す媒体とは

オムニチャネルに含まれる媒体とは、実店舗やWebサイトだけでなく、以下のものが挙げられます。

オムニチャネルの主な媒体
・実店舗
・Webサイト
・ダイレクトマーケティング
・モバイルチャネル(スマートフォン、タブレット、アプリケーション)
・ソーシャルメディア
・タッチポイント(テレビ、ラジオ、印刷物、C2C等のマスコミュニケーションのチャネルを含む)

それぞれのチャネルの特性を理解した上で、どのように組み合わせていくのかを考えてみましょう。

オムニチャネルが注目されるようになった背景

オムニチャネルが注目されるようになった背景には、顧客の多様なニーズに応えることが挙げられます。スマートフォンの普及によって、インターネット環境につながりやすくなったことも一つのきっかけだと言えます。

また、新型コロナウイルス感染症の影響から、デジタルツールを用いた対面と非対面を適切に組み合わせた取組が求められてきた点も理由として挙げられるでしょう。従来は限られた方法でしか接触がなかった顧客に対して、オフラインとオンラインの両方で接点を持ちやすい環境が整ってきています。

自社の売上を向上させるきっかけとして、多様なチャネルで販路を拡大させるだけでなく、複数のチャネルを組み合わせて運用することで、顧客と継続的なつながりを得ることが可能になっています。

オムニチャネルに似た概念について

チャネルとは集客を行うための媒体や経路のことを指しますが、オムニチャネルを正しく理解するには、似たような概念との違いを把握しておくことが大切です。ここではマルチチャネル、クロスチャネル、O2Oとの違いを解説します。

マルチチャネルとは

マルチチャネルとは、顧客が求める商品やサービスを提供する独立したチャネルを複数持つことを言います。それぞれのチャネルが独立して運用されているため、在庫管理等を一元管理するものではなく、業務の効率化につながるわけではありません。

実店舗での販売やインターネット販売、カタログ販売等のチャネルを用意することで顧客の利便性は高まる一方、例えば実店舗で品切れが起こったときに他のチャネルから在庫を融通するといった対応は取りづらいと言えます。

クロスチャネルとは

クロスチャネルとは、それぞれのチャネル同士が持っている顧客に関する情報を一元化した状態を言います。マルチチャネルよりも、一歩進んだ概念であることが特徴です。

しかし、オムニチャネルのように各チャネルを連携して運用するといった概念ではなく、あくまで情報を一元管理することに重点を置いている点に留意しましょう。

O2Oとは

O2O(Online to Offline)とは、ネットショップやSNS等のオンライン側と、実店舗のオフライン側の購買活動がお互いに連携し、融合していく仕組みや取組を指します。オフラインとオンラインの双方向の流れも表す概念です。

スマートフォンの普及によって、O2Oは加速した流れを見せているのが特徴だと言えます。オムニチャネルに近い概念ではありますが、O2Oではオンラインからオフラインである実店舗への顧客の誘導を目的としており、新規顧客向けの施策だと言えるでしょう。

一方で、オムニチャネルではオンラインとオフラインの境をなくし、既存顧客に対してスムーズな購入体験の提供を目的としており、顧客の囲い込みが狙いとしてあります。ターゲットとする顧客層に合わせて、施策を実施していくことが大切です。

日本型オムニチャネル戦略の特徴

オムニチャネルの取組は多くの企業が行っていますが、日本独自の戦略で展開されている部分もあります。日本型オムニチャネル戦略について見ていきましょう。

多業態オムニチャネルが多い

日本型オムニチャネル戦略の特徴として、日本における大規模小売企業では多店舗展開だけでなく、業態そのものを多様化する傾向が見られます。例えば、百貨店、量販店、食品スーパー、コンビニ、各種専門店、ディスカウントストア、ホームセンター、インターネット販売等のさまざまな領域において、小売業を展開するホールディングスも存在します。

複数の業態を展開することによって、顧客の多様なニーズに応えてきたと言えるでしょう。自社のオムニチャネルを検討する上で、単に複数のチャネルを連携させて運用するといった視点だけでなく、さまざまな業態を組み合わせることで相乗効果を図ることが可能かどうかという視点を持つことも重要です。

店舗がハブの機能を担っている

日本型のオムニチャネル戦略では、物流センターにも特徴が見られます。物流センターは顧客に配送を行うといった役割だけでなく、グループ内の店舗の商品の配送や受け取りの拠点という役割もあります。

店舗同士のネットワークを分散型流通センターとして機能させることによって、配送時間の短縮や顧客が希望する時間帯に配送するといった柔軟な対応が可能です。自社の物流センターを効果的に活用することで、顧客の利便性を高めていることに特徴があります。

日本型オムニチャネルの課題

日本型オムニチャネル戦略は多くのメリットがある反面で、いくつかの課題を抱えています。主な課題としては、次の点が挙げられます。

日本型オムニチャネル戦略の課題点
・多種多様な商品の管理
・サービス、商品情報の管理
・組織の構造と能力

それぞれの課題点を解説します。

多種多様な商品の管理

多業種展開を行う日本のオムニチャネルにおいては、食品から日用雑貨、衣料品等の取扱商品が数百万点にのぼることも珍しくありません。豊富な品揃えによって、顧客の多様なニーズに応えられる一方で、膨大な量や種類の商品を管理する仕組みづくりが課題となります。

一つの解決方法として、デジタルツールの活用による商品管理が挙げられます。販売数をリアルタイムで把握し、在庫管理の負担を軽減するといった取組が考えられるでしょう。

サービス、商品情報の管理

取り扱う商品やサービスの数が多ければ、販売や在庫、顧客に関する情報も膨大なものとなります。どの商品をいつどのように仕入れて販売し、配送するかといった統合的な管理体制の構築が欠かせません。

情報を一元化することで業務の重複を防ぎ、業務フローそのものを改善していくヒントを得られるでしょう。オムニチャネル戦略を成功させるには、各チャネルの特性をよく理解した上で、適切な情報の活用が求められます。

組織の構造と能力

一般的に、多業種となるほど組織構造や管理形態も複雑になりがちです。多様な業態を統合的に管理するのは難しく、しっかりと体制づくりを行わなければ、オムニチャネルの効果を発揮しづらくなるだけでなく、サービスの提供等に支障が出る恐れがあります。

業態特有の課題を把握した上で、組織を管理していく能力を企業全体で一段階引き上げていくことが求められます。自社にとってなぜオムニチャネルが必要であるかを精査し、社内や取引先等に周知していくことで、さまざまな変化に対応できる組織づくりを行っていきましょう。

オムニチャネル化を成功させるためのポイント

自社のオムニチャネル化を成功させるためのポイントとして、次の点が挙げられます。

オムニチャネル化を成功させるポイント
・ブランドイメージを統一する
・チャネルごとではなく全体で取り組む
・管理システムをうまく活用する

各ポイントについて解説します。

ブランドイメージを統一する

オムニチャネル化を成功させるには、まず自社のブランドイメージを統一することが重要です。多業種展開を図る上で、各チャネルのブランドイメージを統一させることは、チャネル同士のシームレスな連携を促すでしょう。

ブランドイメージの統一が重要になるのは、チャネルごとのブランドイメージが異なれば、顧客が違和感を抱く恐れがあるからです。多様な業態を展開するからこそ、ブランドのコンセプト等を最初の段階で明確に定めておくことが大切だと言えます。

チャネルごとではなく全体で取り組む

オムニチャネルにおいては、各チャネルの連携が重要になるため、チャネルごとの方針で運用するのは避けたほうが無難です。バラバラに運用すると管理が難しくなり、ブランドイメージも統一感が薄れる恐れがあります。

企業全体で達成すべき目標を掲げ、各チャネルの相乗効果を狙える態勢を整えてみましょう。全チャネルで共通する目標を設定することが成功のカギであり、中長期的な事業戦略も踏まえた上で取り組んでいくことが大切です。

管理システムをうまく活用する

多くの業態から日々得られる情報を統合的に管理するには、システムの活用が欠かせません。各チャネルの連携を促進させるために、情報を一元管理できる仕組みづくりを行ってみましょう。

また、新たなシステムの導入にあたっては社内の混乱を避けるために、現場の声を丁寧にヒアリングしていくことも重要です。自社がどのような課題を抱えているかを把握し、その課題を解決するためにシステムを導入するという流れをつくるほうが、スムーズに管理システムを導入することにつながるでしょう。

まとめ

オムニチャネルとは、各チャネルの特性を理解した上で相互に連携させ、顧客に対してシームレスな利用を提供するための概念です。複数のチャネルや業態を展開している場合、オムニチャネル戦略を用いることで各チャネルの相乗効果を図ることができ、売上の向上等が期待できます。

ただし、自社のオムニチャネル化を進めるにあたっては、販売や在庫、顧客等の情報を一元管理する仕組みの構築が重要です。全チャネルを連携させることでどのような目標を達成するのかを明らかにし、新たな組織づくりに取り組んでみましょう。

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