ご存じですか? 9月は「価格交渉促進月間」です!~国が進める「価格交渉促進月間」を追い風に、今こそ、経営を守る価格交渉を進めましょう~

公開日:2026年9月2日

その他

【価格交渉促進月間】とは
国(経済産業省・中小企業庁)は、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」に設定し、全産業を挙げた価格転嫁調査・個別指導(フォローアップ調査・企業名公表)を展開しています。

【取適法と指針の法的な追い風】も強まっています
「価格交渉促進月間」は2021年9月から設定されていますが、2026年1月からの「取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止関する法律)」施行により、改めて注目度が高まっています。発注側が協議に応じず一方的に代金を据え置くことが禁止されたことで、価格交渉への機運が高まっていると言えるでしょう。

【最低賃金の上昇圧力】も強まっています
地域別最低賃金は近年急激に上昇しており、2025年度の上昇額は、全国加重平均で時給66円(引上げ率6.3%)で、すべての都道府県が時給1,000円の大台に乗りました。2026年度の全国平均引き上げ額の目安として「時給55円増の1,176円」とする答申がなされています。引き続き大幅引き上げが見込まれており、労務費の上昇は避けられない経営課題と言えます。

国が推進する「価格交渉促進月間」とは?

経済産業省・中小企業庁では、発注事業者と受注事業者との間での適正な価格交渉・価格転嫁を定着させるため、毎年「9月」と「3月」を「価格交渉促進月間」に定めています。この期間中、国は以下のような調査を集中的に実施しています。

数万社規模の「フォローアップ調査(アンケート・ヒアリング)」を実施

価格交渉促進月間の終了後、受注事業者(中小企業)を対象に「発注側が交渉に応じたか」「コスト上昇分が何%転嫁できたか」を調査し、その結果を公表しています。

発注企業の「評価公表(企業名リストの開示)」

アンケート結果をもとに、価格交渉や価格転嫁に積極的な優良企業だけでなく、対応が不十分な発注企業の実名を中小企業庁HPで公表(企業ランキング・リスト掲載)しています。

価格転嫁率が著しく低い業界や企業に対しては、経済産業大臣や所管大臣名で経営トップに対する個別指導や直接要請を実施しています。

価格交渉促進月間とフォローアップ調査の概要と流れ

出典:中小企業庁HP「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」から抜粋

2026年3月フォローアップ調査の結果概要は下記のとおりです。

<全体像(「価格交渉が行われた」が9割を超過しています)>
出典:経済産業省HP「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果」から抜粋

<価格転嫁は進んでいます(「一部でも価格転嫁できた」が8割超です)>
出典:経済産業省HP「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果」から抜粋

このように、価格転嫁は進んでいます。一方で、「価格転嫁できない企業と二極分離の状態が継続している」との記載もあります。この9月に実施される「価格交渉促進月間」を話題にして、適正な価格交渉を切り出すことが、企業の持続可能性を維持するためにも必要不可欠ではないでしょうか。

最低賃金の上昇見込みと労務費高騰へのインパクト

人件費(労務費)転嫁の根拠の一つとなり得るのが「最低賃金の改定率」です。近年の最低賃金引き上げペースは加速しており、2026年10月改正の見通しも見えてきました。

2025年度改定(実績)

全国加重平均で時給1,121円、引上げ額66円、引上げ率6.3%となり、初めてすべての都道府県が時給1,000円の大台に乗りました。パート・アルバイトの時給単価の上昇にとどまらず、社員のベースアップおよび社会保険料(法定福利費)負担が大きく膨らんでいます。

2026年度改定(見通し)

政府の「2030年代半ばまでに時給1,500円を実現」とする目標に向けて、引き続き上昇が確実視されています。2026年度の地域別最低賃金の全国平均引き上げ目安は「時給55円増の1,176円」とする答申がなされており、各都道府県の最低賃金審議会の審議を経て、10月以降に順次発行(適用)される予定みです。

物流・エネルギーコストの高止まり、人手不足の深刻化

最低賃金(人件費)の急激な上昇のみならず、さまざまな経営コストが高止まりしています。業種や業態によって異なるものの、製造・販売コスト(運送費・光熱費・原材料費等)が軒並み高止まりしている現状を自社で把握し、「事業継続のための適正な価格」を根拠として、長期的な取引継続の価格変更を進めていきましょう。
また、人手不足もますます深刻化しています。「賃金を上げないと人が集まらない」という防衛的な理由だけはではなく、「高品質なサービス・製品を提供し続けるための投資(賃上げ)」というパートナーとしての姿勢を打ち出すことも必要です。

2026年施行「取適法(新・下請法)」と「労務費指針」による強力なバックアップ

2026年1月に施行された「取適法」と、政府・公正取引委員会の「労務費指針」は、中小企業の価格交渉を強力に裏付ける材料となり得ます。

協議に応じない一方的な据え置きは「取適法違反」です

受注側から価格交渉の申し出があった場合、発注側が協議を拒否・無視したり、納得のいく理由なく価格や代金を据え置いたりすることが禁止されています。

価格交渉は公的データの提示で十分(詳細な原価提出は不要)です

価格交渉には、「2025年実績の最低賃金上昇率(6.3%)」や「2026年予想の上昇見込み」などの公的指標を示すだけで足りるとされています。もちろん適切な価格交渉においては、根拠や大義名分を示すことが必要不可欠ですが、自社の詳細な決算書や個人の給与明細までを開示する必要はないとされています。

価格交渉強化月間に合わせた「トークスクリプトのイメージ」

【交渉切り出し用トーク(価格交渉促進月間+最低賃金を話題にする場合)】

「いつも大変お世話になっております。早速ですが、経済産業省・中小企業庁が推進する『価格交渉促進月間(強化月間)』の取組みに合わせ、弊社におきましても取引条件の定期見直しを行わせていただいております。
ご承知のとおり、2025年度の最低賃金改定(〇〇県+△△円)に続き、2026年度も同規模の大幅な改定が見込まれており、弊社におきましても時給引き上げおよび社会保険料等の法定福利費負担が大きく増加しております。
つきましては、自社努力のみでは対応が困難な状況となっており、大変恐縮ですが製品単価につきましても労務費上昇分(○%)の改定をお願いしたく、ご協議の場を設定いただけますでしょうか。」

【無理な原価開示を求められた場合の返答例】

「政府の『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』におきましては、機密性の高い個別原価の過度な開示は求めず、公的統計(最低賃金改定率や毎月勤労統計)に基づき協議することが推奨されております。今回は公的データに基づきご検討を賜りますようお願い申し上げます。」

受注企業(中小企業)経営者が使える3つのサポート

① 経済産業省・中小企業庁「適正取引支援サイト」の活用

https://tekitorisupport.go.jp/
「講習会の実施」「相談窓口の設置」「各種施策」が紹介されており、「取組事例の検索」や「価格交渉・価格転嫁成功の手引き」等も掲載されています。ぜひご一読ください。

② 独立行政法人 中小企業基盤整備機構の「価格転嫁検討ツール」の活用

https://kakakutenka.smrj.go.jp/kakakukentou/
簡単な操作で、価格転嫁において、商品別(取引先別)の収支状況が把握できるツールです。登録不要、利用料は無料です。

③ 相談窓口(よろず支援拠点・下請駆け込み寺)の利用

交渉の進め方や難航した際の対応については、全国の「よろず支援拠点」や「下請駆け込み寺」の専門家が無料で相談にのってくれます。

おわりに

2025年の最低賃金大幅上昇に続き、2026年も賃上げの波は確実に続きます。さまざまなコストが高止まりし、人手不足が深刻化しています。このような状況において9月に実施される「価格交渉促進月間」は、国が中小企業経営者に与えてくれた強い味方と言えるでしょう。社員の雇用の維持と企業の持続的な成長のため、この機会を逃さず、ぜひ自信を持って価格交渉の一歩を踏み出してください。
価格交渉は決して「コストの押し付けあい」ではありません。サプライチェーン全体が適正な利益を確保し、技術力と人材を守り抜くための必要不可欠な「未来への投資」です。今こそ、取引先とともに持続可能な成長モデルを構築し、パートナーシップを高めるための一歩を踏み出しましょう。

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