経済産業省が重大製品事故の発生状況を踏まえた新たな表示制度を検討中

公開日:2024年7月10日

その他

経済産業省は2024年3月18日、製品安全小委員会において2023年までの重大製品事故の件数を公表するとともに、考えられる要因とそれに向けた今後の施策を示しました。

重大製品事故の件数を公表

消費生活用製品の製造事業者または輸入事業者は、自らが製造・輸入する消費生活用製品について重大製品事故が生じたことを知ったときは、10日以内に消費者庁に報告する義務を負っています(消費生活用製品安全法35条1項および2項)。
製品安全小委員会の資料によると、こうした義務に基づき、2023年に報告された重大製品事故の件数は1,186件となっており、2022年比で163件の増加となりました(図1)。また、2019年以降、毎年1,000件を超える重大製品事故が報告されています。

一方で、同小委員会の資料では、重大製品事故の発生要因としては「製品起因」がもっとも多く31%を占める一方、「誤使用・不注意等」が29%となっています(図2)。

また、「製品起因」と「誤使用・不注意等」の事故割合を年代別にみると、10代以下の若年層、60代以上の高齢層においては「誤使用・不注意」が占める割合が多いこともわかっています(図3)。特に、高齢層に関しては、年代が上がるにつれ「誤使用・不注意」が占める割合が多くなる傾向がみられます。

こうしたデータを踏まえ、経済産業省では「誤使用・不注意による事故リスク低減製品への表示制度」(以下、新表示制度)の検討を進めています。

新表示制度は、JIS規格などの既存規格で本質安全や安全防護での保護が要求されていない残留リスク(誤使用・不注意)に対しての防止機能(基本安全設計の付加機能)を評価し、要件を満たす製品にリスク低減を謳った表示を認めるものです。

申請製品に求められる要件としては、①製品全体として本質的な安全性が担保されていること、②特定の誤使用・不注意による製品事故リスクが低減されていること、が挙げられています。

経済産業省としては、本表示制度を通じて、リスク低減のための付加機能がスタンダードとして一般化すること、消費者が製品に存在する誤使用・不注意のリスクを意識することを期待しています。

新表示制度は令和7年度からの運用開始を予定しており、今年度は引き続き制度の詳細設計が行われるとのことです。引き続き今後の動向が注目されます。

出所:経済産業省「第14回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 製品安全小委員会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/seihin_anzen/014.html
*¹ 第14回製品安全小委員会、資料1「製品安全行政を巡る動向」P5より
*²*³ 第14回製品安全小委員会、資料1「製品安全行政を巡る動向」P31より

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のPLレポート(製品安全)2024年6月号を基に作成したものです。

関連記事

消費者庁「食品表示法に基づく自主回収の届出状況」を公表

2025年4月2日

その他

ソーシャルインフレーション ―その現状、要因と今後の展望―③

2025年3月19日

その他

企業の7割が新卒「初任給引き上げ」平均引き上げ額は9,114円

2025年3月12日

その他

飲酒運転根絶の取組と企業経営

2024年12月27日

その他

事故防止

国内におけるAIに関する議論の整理

2024年12月25日

その他

おすすめ記事

2025年に新設・継続されている補助金のポイントをわかりやすく解説

2025年3月31日

リスクアセスメントとは?意味や手順、実施例も紹介

2025年3月24日

労働災害防止

人事評価とは?導入するメリットや手順、企業の事例を紹介

2025年3月17日

人事労務・働き方改革

CSIRTとは?主な役割と導入する際のポイントを解説

2025年3月10日

サイバーリスク

ダークウェブとは?基本的な捉え方とリスク、必要な対策を解説

2025年2月17日

サイバーリスク

週間ランキング

弁護士が解説!企業が問われる法律上の賠償責任とは ~店舗・商業施設における訴訟事例~

2024年5月15日

その他

個人情報委、個人情報保護法に関する課徴金制度検討の方向性を公表

2025年3月21日

法改正

帝国データバンク公表「社長の平均年齢、60.5歳 33年連続の上昇、高齢化止まらず」

2024年4月26日

事業承継・M&A

企業の7割が新卒「初任給引き上げ」平均引き上げ額は9,114円

2025年3月12日

その他

お客さまは神様ではない!?カスハラの実態 企業はどう対応すべき?

2024年6月21日

人事労務・働き方改革