リファラル採用とは?成功させるポイントと注意点

公開日:2024年5月27日

人手不足

リファラル採用に取り組むことで、自社のニーズに合った人材を得ることが期待できます。採用活動の幅を広げ、多様なスキルや技能を持った人材を受け入れるために、リファラル採用の基本的なポイントを理解しておきましょう。

この記事では、リファラル採用の基本的な捉え方や実施手順、成功に導くためのポイント等を解説します。

リファラル採用とは

リファラル採用とは、自社で働いている従業員等から、新たに人材を紹介してもらったり、推薦してもらったりすることで実施する採用活動を言います。リファラル採用を行うことで、転職市場にはなかなかいない人材の獲得が期待でき、採用活動の幅を広げられるでしょう。

特に専門的なスキルや高い技能を備えた人材を採用するのは難しいため、リファラル採用を効果的に実施することで、採用率を高められる可能性があります。

中途採用を巡る状況

厚生労働省職業安定局が公表した「中途採用に係る現状等について」という資料によれば、従業員規模が小さい企業ほど、中途採用の割合が高くなる傾向があるとされています。一方、従業員規模が大きい企業の場合は新卒採用の割合が高く、中途採用の割合は低い傾向が見られます。

また、同資料によれば、従業員数300人未満の企業の場合、中途採用割合が高い業種として、運輸・郵便、不動産・物品貸借、医療・福祉、製造業、電気・ガス・熱供給・水道等の業種等が挙げられているのが特徴です。さらに、職業別に転職入職率(一般労働者)を見ると、サービス業で割合が高く、管理職では低い傾向がある点も押さえておきましょう。

従業員規模や業種、新卒採用と中途採用との違い等を踏まえた上で、自社の採用手法を見直していく必要があります。中途採用の幅をより広げていくために、リファラル採用を検討してみるのも一つの方法だと言えるでしょう。

 

リファラル採用が注目される理由

リファラル採用が注目されている理由は、人手不足の課題解決への期待があるからだと言えます。自社の従業員等がリクルーターとなることで、採用対象者を無理なく広げられるでしょう。

また、自社のことをよく理解している人がリクルーターとなれば、求める人材像に合った人の採用に期待できます。入社後のミスマッチを防げるため、結果的に一般的な採用手法よりもコストを抑えられるので、多くの企業や業種で注目されているのです。

縁故採用との違い

リファラル採用は縁故採用とは異なり、血縁等による紹介で採用するものではありません。紹介者の立場に違いがあり、リファラル採用においては従業員や取引先等から紹介してもらうのが基本です。

また、通常どおりの採用試験や面接を実施、選考過程については一般的な採用手法と違いがないのも特徴だと言えます。そのため、リファラル採用の場合は、必ずしも採用しなければならないわけではありません。

リファラル採用を実施する手順

リファラル採用の実施を検討する場合、基本的な手順をあらかじめ把握しておくことでスムーズな実施につなげられます。具体的な手順としては、次のとおりです。

リファラル採用の実施手順
・人材要件や採用基準を明確にする
・インセンティブに関する規程を設ける
・社内告知をしっかりと行う

それぞれの手順について解説します。

人材要件や採用基準を明確にする

リファラル採用を実施する際は、まず自社が求める人材要件を明確にしておくことが重要です。どのような人材を求めるかによって、採用対象者へのアプローチ方法は異なるため、関係する部署の意見等も交えながら人材要件を定めてみましょう。

また、採用基準や応募方法、採用状況等を関係者がきちんと確認できる仕組みづくりを行うことも大切です。自社の従業員等がどういった基準で人材を紹介すれば良いか、ルールを明らかにして共有することで、紹介に伴う負担軽減につながります。

インセンティブに関する規程を設ける

リファラル採用の実施にあたっては、採用候補者を紹介してくれた従業員等に対して、インセンティブを与えるのが一般的です。インセンティブがあることで、より円滑な人材紹介につながるでしょう。

インセンティブに関する規程をどのようにするかは、企業によって異なりますが、報奨金等の形で金銭を支給したり、人事評価に加点したりするケースが挙げられます。ただし、高額なインセンティブは法的な制約や不適切な紹介につながる場合があるため、自社の状況を踏まえて適切に判断することが大事です。

社内告知をしっかりと行う

リファラル採用に関するルールやインセンティブについて定めたら、社内告知をしっかりと行うことが大切です。社内告知を行う際は、人材要件や採用基準等の基本的な事項を伝えるだけでなく、実際に採用につながった事例等を紹介することも心がけてみましょう。

伝える情報は定期的に更新し、社内ネットワーク等を効果的に活用していくことが必要です。また、ミーティング等を通じて従業員からの意見も参考にし、データを基に効果測定を行って、改善を重ねてみましょう。

リファラル採用を成功させるポイント

リファラル採用を成功に導くには、以下の点を踏まえて取り組んでいくことが大切です。

成功させる6つのポイント
・制度設計を行う
・専用の資料や研修を設ける
・従業員への周知
・報酬の支払いタイミングを重視する
・人間関係への配慮
・リファラル採用の意義の共有

各ポイントについて解説します。

制度設計を行う

リファラル採用を成功させるには、自社の魅力をきちんと伝えていくことが重要です。魅力的な企業である点が採用対象者にしっかりと伝わらなければ、成果を出すことが難しくなってしまいます。

採用担当者だけでなく、管理職や経営層も交えて自社のアピールポイントや働き方等を整理し、伝えるべき情報を精査することも大切です。社内の様々な意見を基に評価基準を定め、入社後のミスマッチが起こらないように制度設計を行う必要があります。

リファラル採用は人事部門だけが行うものではなく、全社的な取組として進めていく点を押さえておきましょう。

専用の資料や研修を設ける

リファラル採用に関する制度設計を行ったら、定めた内容を盛り込んだ専用の資料を作成しましょう。実際に採用対象者を企業に紹介してくれるのは従業員等であるため、日頃から見える場所に資料を置いて、リファラル採用について知る機会を設けることが重要です。

また、リファラル採用に興味を持ってもらうために、定期的に研修会の場をつくるのも有効な方法だと言えます。あらかじめ専用の資料を作成しておけば、研修会においてもスムーズな説明を行えるでしょう。

従業員への周知

リファラル採用は従業員等の協力が欠かせないため、インセンティブや経費の支払いに関する事項を周知しておく必要があります。インセンティブについては高額なものは注意が必要であり、職業安定法や労働基準法等の各種法令に則って設定することが大事です。

また、採用対象者と行う面談において発生する交通費や飲食代等の経費の支払いについても、事前にルールを定めて周知しておきましょう。研修会等の場を通じて、金銭面にかかわる部分を丁寧に説明しておくことが大切です。

報酬の支払いタイミングを重視する

リファラル採用では紹介者に対してインセンティブを支払うのが一般的ですが、報酬をどのようなタイミングで支払うのかも、事前に決めておくほうが無難です。採用対象者の紹介を受けた時点で報酬が発生するのか、それとも実際に採用に至った段階で報酬が発生するのか等を決めておきましょう。

紹介した段階で高額の報酬が発生する場合、紹介数は増えることが期待できますが、紹介することを優先するあまり、自社にマッチしない人材の紹介が増える可能性があるので注意が必要です。人材要件や評価基準を明示し、紹介者の納得を得られる報酬体系を整えてみましょう。

人間関係への配慮

紹介を受けた人材が不採用となった場合、紹介をした人と紹介された人との間で人間関係が悪化する可能性があります。人間関係への配慮が不足していると、思うようにリファラル採用が進まない恐れがあるため、不採用時にも理由を丁寧に説明することが重要です。

また、事前に必ず採用に至るわけではない点を伝えておき、後からトラブルが起こってしまうのを防ぐようにしましょう。採用活動に支障が出ないように、適切なサポートを企業としても行うことが大切です。

リファラル採用の意義の共有

リファラル採用の取組は、短期的には目に見えた形で成果が挙がらない場合もあります。中長期的な取組として行っていく必要があるので、従業員等の協力を継続して得られる仕組みづくりを行いましょう。

そのためには、なぜリファラル採用を行う必要があるのか、意義を社内で共有することが大切です。今後のビジョンや事業方針等を踏まえた上で、自社の成長のためにリファラル採用が重要である点を伝えてみましょう。

定期的に行う研修会等を通じて、従業員と活発なコミュニケーションを図り、認識を共有することを重視することが重要です。

まとめ

リファラル採用は自社の従業員等に新たな人材を紹介、推薦してもらう採用手法です。転職市場になかなか現れない人材を得ることにつながり、中小企業において採用活動を促進するための有効な手段となるでしょう。

リファラル採用を成功させるには、従業員等の協力が不可欠なので、人材要件や採用基準を明示して社内告知をきちんと行うことが大切です。他の採用手法と並行して取り組むことで、人手不足の課題解決につなげていきましょう。

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