帝国データバンク公表「企業の7割近くが新卒「初任給引上げ」、平均引上げ額は9,462円」

公開日:2026年3月13日

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2026年4月入社の新卒社員に支給する初任給を前年度から引き上げる企業は67.5%となり、前回調査(2025年度、71.0%)からはやや低下したものの、依然として7割近くに達しました。背景には、人材確保や定着率の向上を図る狙いのほか、最低賃金の上昇への対応やベースアップ(ベア)の実施があります。引上げ額の平均は9,462円と前年度(9,114円)を上回りました。初任給額の分布では、「20万~25万円未満」が6割でトップ、「25万~30万円未満」は2割近くに上昇しました。

企業の7割近くが新卒「初任給引上げ」

2026年4月入社の新卒社員に支給する初任給(注)を前年度から改定したか尋ねたところ、初任給の引上げ有無を回答した企業のうち、「引き上げる」企業の割合は67.5%と前年度比3.5ポイント低下したものの、7割近くに達しました。一方で、「引き上げない」企業は32.5%と3割台に上昇しました。

初任給を引き上げる企業からは、「人材確保、インフレ対策のため」(メンテナンス・警備・検査)といった声が聞かれました。また、「物価高で経営は非常に苦しい状況にあるが、人材不足のため人材確保を目的に引き上げに踏み切った」(建設)のように、厳しい経営環境にありながらも、人材確保のため対応を迫られる企業が少なくありませんでした。ほかにも、「賃金テーブル全体のベースアップにともない初任給も引き上がった」(機械・器具卸売)といった声も寄せられ、賃上げの流れが強まるなか、ベアの実施が初任給引上げにつながったケースもみられました。

一方で、初任給を引き上げない企業からは、「引き上げたいが、既存社員との賃金バランスを考えると難しい。既存社員に対して大幅な賃上げを行える体力がない」(飲食料品・飼料製造)との声が寄せられました。

「中小企業は物価高騰の影響を大きく受けており、対応が難しい」(その他サービス)との指摘もあり、既存社員の給与が新入社員を下回る“逆転現象”への懸念や、賃上げ余力の乏しさが浮き彫りとなりました。その他、「初任給は2025年度に引き上げたため、2026 年度は据え置きを予定している」(化学品卸売)と、前年度の引上げを理由とする企業も一定数みられました。全体として、対応に苦慮する企業の姿がうかがえました。

「初任給を引き上げる」と回答した企業の割合を規模別にみると、「大企業」(65.6%、前年度比4.0ポイント減)と「中小企業」(68.2%、同3.2ポイント減)はともに6割台後半でした。一方で、「小規模企業」は同12.2ポイント低下して50.0%にとどまり、全体と比べても17.5ポイント下回るなど、「小規模企業」が取り残される結果となりました。

「大企業」からは「初任給の引き上げと大幅なベアをすでに実施したため引き上げない」といった声があがった一方で、「中小企業」からは、「最低賃金の引き上げや大企業の初任給の高騰などで引き上げたが、当社のような中小企業にはダメージが大きい」(ともに情報サービス)といったコメントが寄せられました。「中小企業」では、厳しい経営環境にあるなか、最低賃金上昇への対応に加え、「大企業」で加速する賃上げの流れに追随するため、初任給を引き上げる動きが強まっているとみられます。

しかし、資金余力が限られる「小規模企業」では、「収益が伸びないなかで経費だけが増え、人件費を上げたくても実質的には難しい」(不動産)との声が聞かれました。最低賃金の上昇への対応も負担が大きく、厳しい経営環境を背景に、初任給の引上げに踏み切れない企業が少なくない実態が浮かび上がりました。

(注)初任給は、HPや求人票に明示していた、メインとなる学歴・職種の、2026年4月に新卒枠で採用する社員への月給を指す

平均引上げ額は9,462円に上昇、「大企業」が「中小企業」を上回る初任給額「25万~30万円未満」は2割近くに

初任給の前年度からの引上げ額を尋ねたところ、引上げ額「1万~2万円未満」の割合が47.4%で最も高く、次いで「5千~1万円未満」(31.6%)が続きました。なお、初任給を引き上げる平均額は前年度比348円増の9,462円でした。

規模別にみると、「大企業」の平均引上げ額は9,749円、「中小企業」は9,371円と、「大企業」が「中小企業」を400円近く上回りました。

2026年度の初任給の金額を尋ねたところ、「20万~25万円未満」の企業の割合が61.7%(前年度比0.4ポイント減)で最も高くなりました。次いで、「25万~30万円未満」が同6.4ポイント増の17.8%と2割近くで続き、「15万~20万円未満」(17.4%)を上回る結果となりました。他方、『20万円未満』(「15万円未満」と「15万~20万円未満」の合計)は17.8%と、前年度(24.8%)より7.0ポイント低下しており、初任給の上昇傾向がうかがえます。

規模別にみると、「大企業」では『25万円以上』(「25万~30万円未満」と「30万円以上」の合計)が30.0%に達したのに対し、「中小企業」は17.0%にとどまり、企業規模による初任給水準の差が依然としてみられます。

「中小企業」からは、「初任給の引き上げには積極的に取り組みたいが、社会保険料などの負担増に加え、仕入価格など給与以外のコストが上昇している現状では大幅な引き上げは難しい」(飲食料品卸売)といった切実な声が聞かれました。

まとめ

本アンケートでは、企業の67.5%が2026年4月入社の新卒社員について初任給を引き上げると回答しました。引上げ額では、「1万~2万円未満」が47.4%で最も多く、平均は9,462円となりました。

初任給額の分布をみると、「25万~30万円未満」の割合は上昇傾向が続き、2割近くにのぼりました。一方で、『20万円未満』は低下傾向にあります。こうした動きの背景には、人材確保や定着促進のほか、最低賃金の引上げへの対応、さらには賃金テーブル全体のベースアップが影響していると考えられます。

しかし、原材料費の高騰や物価上昇で企業コストが膨らむなか、特に中小企業では、初任給引上げに充てる原資の確保が難しいとの声が複数あがっています。また、全体の賃上げを行う余力が乏しく、既存社員より新入社員の給与が高くなる“逆転現象”への懸念に対応できず、引上げに踏み切れない、または小幅にとどめる企業もみられました。実際、「中小企業」では「大企業」の賃上げ動向に追随して引上げに踏み切る動きが広がり、実施割合は「大企業」を上回ったものの、原資の乏しさから引上げ幅は小幅にとどまり、初任給水準も比較的低い状況が続いています。他にも、前年度に引き上げたことを理由に、今年度は据え置く企業もみられました。このような事情が重なり、初任給を引き上げる企業の割合は前年度をわずかに下回りました。

初任給の引上げは採用面で一定の効果が期待される一方、社内の賃金バランスの調整や人件費総額の増加への対応も避けて通れない課題となります。こうした環境下でカギとなるのは、中小企業における“価格転嫁の進展”です。取引先とのコミュニケーション強化や情報共有の仕組みづくり、コストの見える化等、価格転嫁を実現しやすくするための企業努力に加え、それを後押しする環境の整備等、政府・行政による多様な支援策の充実も不可欠でしょう。

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