帝国データバンク公表 日本企業の「後継者不在率」過去最低の50.1% 「脱ファミリー」経営が加速
公開日:2026年3月18日
事業承継・M&A

本ニュースでは、帝国データバンクが実施した「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」について解説します。
2025年の後継者不在率は50.1%、改善傾向が続く
全国の全業種約27万社を対象とした2025年の後継者動向を調査した結果、後継者が「いない」、または「未定」の企業は13.8万社となり、全国の後継者不在率は50.1%となりました。
前年から2.0pt低下し、7年連続で前年を下回ったほか、過去10年間で最高だった2017年に比べると16.4ptの大幅低下となり、日本企業の後継者問題は、全体的に改善傾向が続いていると言えます。
事業承継に関する官民の相談窓口が全国に普及し、各種支援メニューも拡充されたことで、従前は支援対象として手が届きにくかった小規模事業者にも門戸が広がっています。
また、自治体や民間のM&A仲介事業者、特に地域金融機関による事業承継への取り組み効果も加わって、事業承継の重要性が広く認知・浸透したことが、経営者をはじめ事業承継に直面した当事者の意識変化をもたらすなど、後継者不在率の改善に大きな影響力を発揮したと考えられます。

40代・50代で後継者不在率の大幅改善続く
社長年代別の後継者不在率では、「30代未満」が最も高く83.2%となりました。「50代」(58.3%)までは全国平均に比べて高く、創業直後、または経営者が壮年期で活躍する企業では、後継者を選定する必要性・緊急性が低いことも、若手~現役世代の後継者不在率が高い要因となっています。
ただ、前年・前々年に比べるといずれも後継者不在率は低下しており、現役世代の「40代」、事業承継が視野に入る「50代」の後継者不在率が前年に比べ2pt以上低下するなど大きく改善しています。
特に、先代社長から事業を承継した若手経営者などでは、事業承継の難しさなどを実際に経験していることから「早い段階で後継候補を策定、育成する」意識が醸成されていることも、若手・現役世代の後継者不在率が低下傾向にある要因の一つとしてあげられます。
一方、「60代」以上では全国平均を大きく下回っているものの、「80代以上」は今なお2割の企業が後継者を策定していませんでした(22.2%)。

2025年の事業承継動向 「脱ファミリー」が加速、「未経験でも」登板
2025年に代表者交代が行われた企業のうち、前代表者との関係性(就任経緯別)をみると、血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが36.1%となり、これまで事業承継の形式として最も多かった「同族承継」(32.3%)を上回りました。以下、買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.6%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.6%)など、外部から経営トップを迎え入れる事業承継が続いています。
日本企業における事業承継は、これまで最も多かった親族間の承継から社内外の第三者へ経営権を移譲する「脱ファミリー」の動きが加速していると言えます。

2023-2025年の3年間で代表者交代が行われた企業のうち、後継者として就任した後任代表者の業界や経営経験の有無を分析した結果、業界経験が「10年以上」ある後任代表者が8割超(83.9%)を占め、業界に精通した人材が多く代表者として就任しています。
「経営経験の有無」では、「3年未満」(69.6%)が最も多く、多くがベテラン社員や役員として業界経験が長いものの、経営経験が少ない人材となっています。

後継者候補属性 「非同族」が初の40%超え 同族承継では「親族」が増加
後継者候補属性をみると、最も多いのは「非同族」の41.0%であり、初めて40%を超えました。同族承継では「子ども」(29.7%)、「配偶者」(4.7%)はともに前年から低下した一方で、「親族」(24.6%)は前年から上昇しています。長男や娘、娘婿など、家族間での事業承継は消極的な傾向が続く一方で、従兄妹や叔父・叔母などへの親族承継では上昇が続くなど、同じ親族承継でも傾向が分かれました。
現代表者の就任経緯別にみると、「外部招聘」によって現代表者が就任した企業では、後継者候補を「非同族」とする割合が9割に達しており、「内部昇格」でも、非同族を後継者候補に据える傾向となっています。現代表者が「創業者」と「同族承継」である企業でも、後継候補を身内以外の「非同族」に求める傾向が強まっており、「同族承継」における後継候補「非同族」の割合は前年比1.1pt、「創業者」は3.0pt、それぞれ上昇しています。
ファミリー企業でも引き続き、親族外事業承継=脱ファミリーへ舵を切る動きが強まっています。

後継者難倒産の現状と今後の見通し
2025年1-10月に発生した、後継者がいないことで事業継続が困難になった「後継者難倒産」(負債1,000万円以上、法的整理)は425件であり、過去最多だった2023年の564件を下回る水準で推移しています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に直面するなか、前述のとおり、代表者が70代の後継者不在率は依然として約3割に近い水準で推移しています。
ゼロベースからの事業承継には、一般に最長10年程度の準備期間が必要とされ、仮に70代から事業承継に着手したとしても、代表者の病気・死亡により後継者育成に支障をきたすリスクは非常に高くなります。実際に、後継者難倒産のうち約4割は後継者の選定・育成ができないまま代表者が活動できなくなるといった「不測の事態」に対応しきれず、事業継続を断念したというケースが近時は目立っています。
2025年の後継者難倒産のうち、代表者の病気または死亡により、事業が立ち行かなくなり倒産に至ったケースは194件に上り、全体の4割を超える水準で推移しており、代表者が高齢で後継者がいない、円滑な事業承継が進まない企業を中心に、後継者難倒産が今後も発生する可能性が高いと思われます。

まとめ 後継者問題は事業を「続ける」「畳む」の判断が分岐点に
以前から官民一体となって推し進めてきた事業承継への啓蒙活動や支援が中小企業にも浸透・波及し、後継者問題に対する代表者側の関心の高まりや意識改革は着実に進んでおり、後継者問題への取り組みは一定の成果をあげています。また、各種の支援機関による相談窓口の広がり、事業承継税制の活用など、承継を促進する仕組みが整備されたほか、外部人材の招聘においても、働きながら事業継承を目指す「副業・兼業」の広がり、セカンドキャリアとしての事業承継など、従前に比べて経営人材の獲得ハードルが低下したことを背景に、経営者が早期に承継計画を立てやすくなったことも要因として大きいと考えられます。
後継者不在率は全体では低下傾向にあるものの、前年からの低下幅は過去10年の推移でみても小さく、急激な改善ペースが続いたコロナ禍直後(2020~2022年)と比較すると鈍化の兆しが見られます。
特に地方において、当代限りでの「店じまい」を決断した高齢の経営者など「そもそも事業承継を望まない」層は多く、後継者不在率の押し上げ要因となっています。
「後継者を決めて事業を続ける」企業と、「後継者を決めず事業を畳む」企業で二分される形で、後継者不在率は急激な低下は見込めず、当面は50%前後で推移するとみられます。
企業の約半数が「後継者候補を決めて事業を続ける」なかで、今後は株式や経営資産の引き継ぎ、取引先や金融機関との調整など、経営全般の具体的な承継ステージにおける支援の在り方が重要性を帯びてくるでしょう。
株式会社帝国データバンク発行の「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」(2025年11月21日)を基に作成したものです。














