二季化とは?中小企業経営に与える影響やポイントを解説

公開日:2026年3月30日

自然災害・事業継続

近年、日本において「春」と「秋」という過ごしやすい季節の存在感が薄れ、長い夏と冬が中心となる「二季化」という言葉を耳にする機会が増えました。かつてのような情緒ある四季の移ろいが失われつつある現状は、私たちの生活様式だけでなく、企業の経済活動にも多大な影響をおよぼし始めています。

この記事では、三重大学の研究グループによる最新の調査結果をもとに、「二季化」の実態とその科学的な背景を詳説します。さらに、気候変動が中小企業の経営、特に消費者の購買行動や従業員の安全管理、そして災害対策(BCP)にどのような影響をおよぼすかについて、具体的な対策を交えながら見ていきましょう。

二季化とは

地球温暖化の進行に伴い、日本の気候はかつての「四季」から、夏と冬が支配的な「二季」へと移行しつつあると言われています。これを象徴するのが「二季化」という現象です。

三重大学の気象・気候ダイナミクス研究室のグループが2024年に発表した研究結果によれば、1982年から2023年までの42年間で、日本の「夏の期間」は約3週間も長くなっていることが明らかになりました。一方で「冬の期間」の長さには大きな変化が見られず、結果として春と秋の期間が短縮され、夏と冬が直結するかのような気候パターンへと変化しているのです。

これまで当たり前であった「四季折々のビジネス展開」という前提が崩れつつある中、この「二季化」の進行は、季節商品を扱う小売業や、屋外作業を伴う建設業・物流業等、多くの中小企業にとって見過ごすことができない現象となっています。

二季化に関する研究結果

「二季化」は単なる体感的なものではなく、データに基づいた事実であることが証明されています。ここでは、三重大学の研究グループが行った分析手法と、そこから導き出された具体的な数値について解説します。

二季化の研究区分

まず、この研究において「夏」や「冬」がどのように定義されたのか、その独自の手法について触れておく必要があります。一般的に気象庁は、便宜上6月から8月を「夏」、12月から2月を「冬」としていますが、これはカレンダー上の区分であり、実際の気温変動に基づいた定義ではありません。

そこで三重大学の研究グループは、より実態に即した分析を行うため、北海道から九州まで、日本列島および周辺の海洋を含む領域を約200の区画(グリッド)に分割しました。その上で、気象庁の長期再解析データ(JRA-55)を使用し、過去42年分(1982年~2023年)の年間最高気温と最低気温の平均値を区画ごとに算出しました。

具体的な「夏の基準」の設定には、その地域の気温特性が反映されるよう工夫が凝らされています。各区画における年間の最高気温から最低気温を引いた温度差を4等分し、最高気温からその4分の1を差し引いた値を「夏の基準値」と定めました。

例えば、ある地点の最高気温が30度、最低気温がマイナス10度だった場合、温度差は40度となります。その4分の1である10度を最高気温の30度から引いた「20度」が、その地点における「夏の基準値」となります。

さらに、日々の気温変動によるノイズを除去するため、42年分の気温データを1年ごとに詳細に分析しました。たまたま1日だけ気温が下がった日や、突発的に暑くなった日の影響を過度に受けないよう、毎日の気温データについては、前後2日間を含めた計5日間の移動平均値を用いて平滑化を行っています。

このようにして整えられたデータを用い、1年間の中で「夏の基準値」を初めて上回った日を「夏の開始日」、最後に下回った日を「夏の終了日」と定義し、その間の日数をその年の「夏の期間」として算出しました。これによって、カレンダーに縛られない、気温実態に即した季節の長さが可視化されたのです。

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二季化の研究結果

約200の区画全体でデータを分析した結果、日本の夏は確実に長期化していることが判明しました。1982年からの42年間の変化を見ると、夏の開始日は平均して約12.6日早まっており、逆に終了日は約8.8日遅くなっています。

これらを合計すると、夏の期間は約21.4日、つまり約3週間も延びていることになります。特に象徴的だったのは2023年のデータです。

記録的な猛暑となった2023年においては、全国平均で見た夏の日数が、6月11日から10月9日までの実に121日間に達しました。これは1年の約3分の1が「夏」であったことを意味しており、二季化の進行が加速している事実を裏付けています。

二季化に関する考察

なぜ、これほどまでに夏が長期化しているのでしょうか。研究グループは、海洋と大気の相互作用の変化に着目しています。

かつては、春から夏への移行期において、大陸から流れ込む暖かい空気が、日本列島周辺の比較的冷たい海洋の上空を通過する際、海面によって冷却されていました。この冷却作用がブレーキとなり、気温の上昇は緩やかで、夏本番の到来は適切な時期に抑えられていました。

しかし近年では、地球温暖化の影響で日本近海の海面水温が著しく上昇しています。その結果、海による冷却効果が機能せず、暖かい空気がそのまま日本列島に流れ込むため、夏の到来が早まっています。

さらに秋になっても海面水温が高い状態が続くため、気温が下がりにくく、夏の終わりも後ろ倒しになっています。一方で「冬の期間」に変化がなかったのは、冬場には依然として大陸から強い寒波が入り続けており、海洋の温暖化影響を打ち消しているためと考えられます。

二季化が進む2つの原因

二季化を加速させている要因は複合的ですが、主に「大気」と「海洋」の2つの側面から説明することができます。ここではそのメカニズムについて解説します。

大気による影響

大気面における最大の要因は、偏西風の蛇行です。偏西風とは、北半球の中緯度帯の上空を西から東へ向かって吹く強い風のことですが、近年この風の流れ方が大きく変化しています。

通常、偏西風は比較的真っ直ぐに流れますが、近年は南北に大きく波打つ「蛇行」現象が頻発している状況です。高気圧は時計回りの渦を巻く性質があるため、偏西風が北側へ大きく蛇行した地域では、南からの暖かい空気が入り込みやすくなり、背の高い強力な高気圧に覆われることになります。

日本は地理的に、もともと太平洋高気圧とチベット高気圧という2つの高気圧が重なりやすく、猛暑になりやすい場所に位置しています。そこに偏西風の蛇行による「ブロッキング高気圧(動きが遅く、同じ場所に居座る高気圧)」の影響が加わることで、猛暑が長期間持続する傾向が強まっています。

つまり、日本上空で熱い空気がドーム状に閉じ込められ、逃げ場を失っている状態が頻発しているのです。

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海洋による影響

もう一つの、そして極めて深刻な要因が海洋の温暖化です。地球温暖化によって世界中の海水温が上昇していますが、その中でも日本近海の水温上昇率は世界平均を大きく上回っており、異常事態と言えます。

特に顕著なのが東北や北海道周辺の海域です。これらの海域では、海面水温が平年よりも5度以上高い状態が観測されることも珍しくなくなりました。

さらに日本海側においても、黒潮から分流した対馬暖流が高い水温を保ったまま流入しており、海全体の熱容量が増大しています。これにより、日本列島は「上空の熱い空気」と「周囲を取り囲む熱い海」の双方から熱供給を受ける、いわばサンドイッチのような状態に陥っています。

海が熱を持っているため、夜になっても気温が下がらず、秋になっても涼しい風が吹かない状況が生まれているのです。これが夏の猛暑を激化させ、秋の残暑を厳しくしている物理的な背景であり、二季化を進行させる大きな要因となっています。

二季化が暮らしに与える影響

二季化の進行は、単に「暑い期間が長い」というだけでなく、暮らしの基盤を揺るがす自然災害のリスクを高めています。ここでは、暮らしへの具体的な影響について解説します。

日本各地の豪雨災害

近年、毎年のように発生する「線状降水帯」による豪雨災害は、二季化と密接に関連しています。海水の温度が上がると、海面から蒸発する水蒸気の量が爆発的に増加します。

水蒸気は雨の原料であるため、大気中に含まれる水分量が増えることで、一度雨が降り出すと、かつてないほどの雨量をもたらすことになるのです。特に、秋口になっても海面水温が高いままであるため、台風や前線が接近した際に、海から大量の水蒸気が供給され続け、勢力が衰えないまま日本列島を直撃・横断するケースが増えています。

猛暑が続けば続くほど海水温は上昇し、それが結果として豪雨のエネルギー源となるため、「猛暑と豪雨はセットでやってくる」という負の連鎖が常態化しています。

温暖化による冬の豪雪

「温暖化なのに豪雪」と疑問に思われるかもしれませんが、これも二季化の一側面だと言えます。暖冬傾向で冬の平均気温が上がっても、一時的に流れ込む寒気の強さが弱まるわけではありません。

むしろ、日本海側の海水温が高い状態で、大陸から強烈な寒波が吹き込むと、寒気と暖かい海面との温度差が大きくなり、大量の水蒸気が雪雲として発達します。これが「ドカ雪」と呼ばれる短期間での集中的な豪雪を引き起こします。

以前であれば雪にならずに済んでいた地域で突然の大雪に見舞われたり、一晩で交通網が麻痺するほどの積雪になったりするのは、気候変動によって大気と海洋のバランスが崩れていることが影響していると言えるのです。

二季化が中小企業経営に与える影響

季節の変化はビジネスの現場に直結します。二季化の進行は、中小企業の経営戦略において、見直しを迫る重要な外部環境の変化であるため、詳しく見ていきましょう。

消費者の購買行動の変化

二季化が進み、春と秋が短くなることは、消費者の購買行動に劇的な変化をもたらしています。これまでアパレル業界や小売業界では、四季に合わせて商品を投入する「MD(マーチャンダイジング)」が定石でした。

しかし、現在ではその定石が通用しなくなりつつあります。具体的には、春物のトレンチコートや秋物のジャケットといった、合間の季節に着る衣料品の販売期間が極端に短くなり、売れ行きが鈍化しています。

「少し涼しくなってきたから秋物を」と思った矢先に冬の寒さが到来するため、消費者が春秋物の購入を見送る傾向が強まっているのです。一方で、夏物の需要は10月ごろまで続くようになりました。

冷却グッズ、清涼飲料水、夏用寝具等のニーズは長期化しており、これらをいかに長く、欠品させずに売り続けるかが重要になっています。中小企業経営者は、過去の販売実績データに固執せず、現在の気象条件に合わせた在庫管理や商品展開へと、柔軟にシフトチェンジしていく必要があるでしょう。

消費者のニーズの変化を敏感に察知し、素早く対応できなければ、不良在庫の増加や販売機会の損失につながるため、スピーディな対応が求められています。

従業員への安全配慮の強化

夏の期間が長くなることは、従業員の健康管理、特に労働安全衛生の面で企業に責任を課すことになります。これまでは7月・8月が中心だった熱中症対策を、6月から10月ごろまで長期にわたって徹底する必要があります。

建設現場、物流倉庫、農業等、屋外や空調の効きにくい環境で働く従業員がいる企業の場合、特に注意が必要です。空調服の支給、休憩時間の増設、水分・塩分補給の義務化等はもちろん、暑さ指数(WBGT)に基づいた作業の中断基準を設けるなど、より厳格なルール作りが求められます。

また、オフィスワークであっても、長期間の猛暑は従業員の体力を奪い、メンタルヘルスの不調や集中力の低下を招くでしょう。通勤時の負担軽減(テレワークの活用や時差出勤)等、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整備することは、人材確保の観点からも不可欠な要素となっています。

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災害対応に対する備え

豪雨や豪雪の激甚化は、企業活動そのものを停止させるリスクを孕んでいます。工場への浸水、停電、通信障害、あるいは従業員が出社できないといった事態は、もはや「想定外」ではありません。

特にサプライチェーンへの影響は大きなものがあります。自社が被災しなくても、仕入れ先や物流網が被災すれば、生産やサービス提供はストップする恐れがあるでしょう。

二季化に伴う極端な気象現象を前提とし、ハザードマップの確認や、代替調達先の確保、安否確認システムの導入等、災害発生時の初動対応を見直しておく必要があります。気候リスクは経営リスクそのものであり、防災対策はコストではなく、事業を守るための投資と捉えるべきでしょう。

BCP(事業継続計画)のとらえ方

二季化に伴うリスクに対応するため、改めて重要性を増しているのがBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)です。

BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画のことを指します。

従来、BCPは大地震への備えとして語られることが多くありましたが、現在では気候変動への適応策としての側面が強くなっています。「毎年のように来る猛暑・豪雨」を前提としたBCPの策定が求められているのです。

具体的には、豪雨時のタイムライン(防災行動計画)の策定、重要データのクラウドバックアップ、主要取引先との連携確認等が挙げられます。BCPを整備しておくことは、突発的な災害への対応力を高めるだけでなく、日ごろの業務プロセスの無駄を省き、経営体質を強化することにもつながります。

二季化対策をきっかけに、自社の事業継続力の見直しに取り組んでみましょう。

まとめ

夏が約3週間長くなり、春と秋が短縮するという気候の変化は、既に私たちの日常であり、ビジネスの前提条件を変えつつあります。消費者のニーズ変化への対応、従業員の安全確保、そして激甚化する災害への備え(BCP)は、早急に取り組むべき経営課題です。

気候の変化を敏感に捉え、変化に対応できるしなやかな経営体制を構築することが、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。

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