英国経済への自然関連リスクの定量的な財務影響や自然関連投資を整理 WWFおよびGFIによる報告書(2025年8月発表)

公開日:2026年1月9日

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英国の世界自然保護基金(WWF UK)と2019年に英国政府が設立したグリーンファイナンス研究所(GFI)が、英国における自然への投資が経済の成長に繋がることを示すレポート「英国経済のレジリエンスと成長を支える自然投資」を発表しました。

「英国経済のレジリエンスと成長を支える自然投資」とは

本レポートによれば、英国経済は慢性的な自然劣化や気候変動リスクに直面しており、今後10年間でGDPの4.7%が減少(推計)という重大な損失が予測されます。これらのリスクは、住宅・エネルギー・農業・製造業・観光等主要セクターに波及し、事業運営や資産価値、サプライチェーンに大きな影響を与えます。

一方、英国企業は自然投資による回復力向上や新技術への投資によって、財務的利益と競争優位性を獲得しつつあります。報告書では、英国企業が自然への投資を進めることでレジリエンスを高め、競争力や収益性を向上させている事例が多数紹介されています(表1)。

 

基本的な捉え方や得られるメリット、日本企業の現状等について解説しています。

 

サステナブルファイナンスでは英国が気候関連で世界をリードしており、自然資本への投資拡大が期待されています。2024年にはネットゼロ経済分野で200億ポンドの民間資本が集まり、自然関連技術開発企業も28億ポンドを資金調達したと推定されています。金融機関は企業向けローンの利率を生物多様性向上に連動させるなど、新たな金融商品の開発も進めています。

 

 

こうした企業による自然への投資について情報を提供するため、英国政府の環境改善計画(EIP)は英国政府自身の環境上の優先事項と法的拘束力のある自然に関する目標を達成するための戦略を示していますが、行動に関する詳細なガイダンスは提供していません。

そこで、各企業が自信をもって自然環境関連の投資に挑むためのガイダンスとしてWWF-UKとGFIはNature-Positive Transition Pathways(NPP) を開発しています。25以上の英国の主要企業と業界団体はNPPの開発に対する支持声明に署名しており、英国の環境投資を刺激する上で強力な役割を果たすことが期待されています。

NPPは各セクターの移行経路を明確化し、企業が自社の投資・事業計画を英国の環境改善計画、生物多様性国家戦略・行動計画および地球規模の生物多様性枠組みの目標と整合させるための実践的ガイダンスで、NPPを活用した社内投資計画の策定は、長期的なリスク管理と成長戦略の要となりえます。

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)を採用する日本企業が急増していますが、自然関連リスク・機会の定量化も含めた詳細評価や自然関連移行計画の策定までできている企業は極めて少ないです。

それらの企業にとって、英国のNPP策定や本レポートのリスク定量化事例、自然資本投資の先進事例等は参考となるでしょう。自然関連リスクへの対応を単なるリスク管理に留めず、成長戦略・イノベーション・新規事業開発の観点から積極的に取り組むことで、企業価値向上と持続可能な社会の実現に貢献できます。

サステナブルファイナンスや循環型経済、再生型農業等、グローバルな潮流を捉えた戦略的な投資・協業が今後ますます重要となるでしょう。

環境情報開示の新たなプラットフォームについて解説しています。

 

(注)精密農業(Precision Farming)
国際的にさまざまなとらえ方が存在するが、主に複雑で多様なばらつきのある農場に対して事実の記録に基づくきめ細やかな管理を実施して、地力維持や収量と品質の向上および環境負荷軽減等を総合的に達成しようとする農場管理手法を指す。

参考情報:WWF UK「Business Investment in Nature: Supporting UK Economic Resilience and Growth」2025年8月

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2025年10月(2025年度第7号)を基に作成したものです。

MS&ADインターリスク総研株式会社

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