事業承継の現状と課題
中小企業経営者の高齢化が加速し、事業承継を経営上の大きな課題と認識する企業は増えています。その一方で、何から着手したらよいか分からないといったお悩みを抱え、結果として問題を先送りしてしまっている企業も多数見受けられます。
計画的に事業承継に取り組まないと、様々な理由で経営が不安定になり、事業の継続に支障が出る場合もあります。
円滑な事業承継に向けて、現状の課題を踏まえながら、早めに着手することが重要になります。
事業承継の現状
事業承継の課題
下表は、事業承継の着手前と完了後にそれぞれ行った調査の結果です。「後継者の育成」など「後継者問題に関する懸念」は前後でともに上位をしめ、事業承継対策として最重要と考えられます。一方で、「自社株など資産の取扱い」や「税金対策」は、着手前と比べ完了後の方が上位にあります。
このことからは、「予想以上に苦労して大変だった」ことが伺えます。
したがって、「ヒト」「モノ」「カネ」など様々な観点で、計画的な準備が大切になります。
出典:帝国データバンク2020年9月調査資料より
事業承継対策の全体像
【親族内承継】配偶者、子、きょうだい等への承継
<メリット>
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一般的に社内外の関係者から心情的に受け入れられやすい。
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一般的に後継者を早期に決定し、長期の準備期間を確保できる。
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他の方法と比べて、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い。
<デメリット>
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親族内に、経営能力と意欲がある者がいるとは限らない。
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相続人が複数いる場合、後継者の決定・経営権の集中が困難である。
<留意点>
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後継者が学校卒業後に他社に就職し、一定のポジションに就いている等の場合を含め、家業であっても、早めにアナウンスをして本人の了解を明示的にとりつける取組が必要である。
【親族外承継】役員・従業員など社内関係者へ承継
<メリット>
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親族内に後継者として適任者がいない場合でも、候補者を確保しやすい傾向がある。
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業務に精通しているため、他の従業員などの理解を得やすい。
<デメリット>
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親族内承継と比べて、関係者から心情的に受け入れられにくい場合がある。
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後継者候補に株式取得等の資金力がない場合が多い。
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個人債務保証の引き継ぎが難しい。
<留意点>
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従業員は経営リスクをとる覚悟で入社、就業してきておらず、白羽の矢を立てた幹部等従業員が経営者となる覚悟を得るためには、早めにアナウンスと本人の了解を明示的にとりつける取り組みが必要である。
【M&A】第三者へ承継 後継者不在で急増中
<メリット>
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身近に後継者として適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる。
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現オーナー経営者が会社売却の利益を獲得できることである。
<デメリット>
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希望の条件(従業員の雇用、売却価格等)を満たす譲渡先を見つけるのが困難である。
<留意点>
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会社内に後継者がいない場合、検討することを先延ばしにしてしまいがちですが、早めに近くの事業承継・引継ぎ支援センター等の支援機関に相談しましょう。
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