物流業界の労務問題①「2024年問題への対応」
公開日:2023年12月20日
2024年問題
「2024年問題」と呼ばれている労働基準法や改善基準告示の改正。大きく制度が変わる激変の年になりますが、皆さん、準備は万全ですか?
「耳にしてはいるものの、詳細な内容は良く分かっていない。しかし、今さら聞けない・・」や「法律が変わることは理解しているが具体的にどうすればいいの?」など皆さまのお悩みに対し、実務的な対応方法を4回に分けてお伝えします。
2024年問題をむかえると、会社はどうなる?
「人手不足」への対応が喫緊の課題になる!!
2024年4月から、労働基準法、改善基準告示の改正により、ドライバーの働く時間が短くなります。これは、ドライバーのワークライフバランスの充実や健康確保に向けた画期的な改正となります。しかし、今まで、ドライバーの長時間労働に支えられてきた運輸業界やそれに追随してきた会社は、その仕組みを大きく変える必要があります。
具体的にどのようなことが起こりえるのか、あるトラック会社の事例をご覧ください。
このように、ドライバーの配置や確保に悩んだり、業務そのものの抜本的な見直しを迫られたりしている企業は少なくありません。
これらは企業の売上にも大きく影響します。また、ドライバー側は、労働時間が短縮するため、残業手当や長距離手当が減少します。その結果、離職する可能性が高まります。
ドライバーの長時間労働は、健康障害を引き起こし、長らく社会問題となっています。
これらを解決するはずの法律により、企業も労働者側も苦しむのは本末転倒です。
では一体どうすればよいのでしょうか?
図1:鉄道貨物物流協会調査資料(2018年度)
図1はトラックドライバーの需給の将来予想図ですが、タクシー・ハイヤー、バスの乗務員を抱える企業の方も同様に、人手不足を実感されていると思います。こちらの図では、既に供給量と需給量に差が生じており、2028年度には「278,072人」のドライバー不足が生じると予想されています。このような中で、2024年を迎え、今後も企業の発展を目指していくためには、DX化など労働生産性の向上や業務の根本的な見直しも重要です。一方、足元を見つめ「自社にいる人材にいかに定着してもらうか」という点が実は、企業経営に大きく影響します。次回から人材の定着の重要性や定着のための方法を、具体的にお伝えしていきます。
2024年4月改正(労働基準法・改善基準告示)
「2024年問題ってなに?」「今さら聞けない・・」という方へ。大きく分けて2つの改正があります。事項を今からチェックしておきましょう。
2024年4月からの制度変更 重要事項をチェック
■ドライバー(自動車運転業務)時間外労働の上限規制の適応
・2024年から、年960時間(休日労働*含まない)の時間外労働の上限規制が適用されます。
→月平均80時間(休日労働含まない)
*休日労働とは、毎週1日の法定休日に労働する時間を指します。
■改善基準告示の改正
【タクシー・ハイヤー運転手】
・以下のとおり拘束時間や休息期間の時間が改正されます。
【トラック運転手】
・以下のとおり拘束時間や休息期間の時間が改正されます。
【バス運転手】
・以下のとおり拘束時間や休息期間の時間が改正されます。
※労働基準法の改正に関しては、ドライバーの方が適用されます。運行管理者、事務職、整備・技能職、倉庫作業職等、ドライバー以外の方は「原則、月45時間かつ年間360時間(特別条項がある場合は年間720時間)」です。
大分労働基準局に労働事務官(当時)として入局。以来、労災保険業務に携わり「脳・心臓疾患」「精神障害等」の給付業務を行う。現在は「メンタルヘルス」「安全衛生部門」「セクハラ・パワハラ」「過重労働対策」を中心に企業に向けてコンサルティングを行なっている。講師活動は年間100本以上、企業、官庁などに向けて多数。