荷役作業の安全対策ガイドラインの活用

公開日:2024年4月5日

事故防止

厚生労働省では労働災害防止のため様々な安全対策ガイドラインを作成・公表しています。今回は、陸上貨物運送事業の安全対策ガイドラインの概要と労働災害発生状況についてお伝えします。
なお、本号は社会保険労務士法人みらいコンサルティングに寄稿いただきました。

荷役作業の安全対策ガイドライン

労働災害は長期的には減少傾向にありますが、陸上貨物運送事業の労働災害については過去20年間、減少傾向が見られません。特に、荷役作業での労働災害は毎年1万件近く発生しており、労働災害全体の約1割を占めています。しかも、荷役作業での労働災害のうち3分の2は荷主先で発生し、そのうちの8割は貨物自動車の運転者が被災しています。

厚生労働省では「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」を策定し、荷役災害の防止に向け、運送事業者と荷主等が連携・協力して取り組むことを促しています。

このガイドラインでは、死傷者数で最大の割合を占める「墜落・転落」について、①荷役作業を行う労働者の遵守事項(作業を行う前に作業場所や周辺の床・地面の凹凸等の確認、整理・整頓を行う、など11項目)、②墜落防止施設・設備の使用、③貨物自動車の荷台への昇降設備の使用、④自社内の施設・設備への安全帯取付設備の設置、の4点を定めています。

2024年問題への対応で荷役作業時間の短縮が進められる中、荷役災害防止などの安全に対する取組もより一層求められています。本ガイドラインには、「墜落・転落」以外にも様々な作業についての安全対策が記載されていますので、自社で安全対策を検討する際に活用頂くことをお勧めします。
また、労働災害防止対策の強化のため労働安全衛生規則が改正され、「昇降設備の設置」や「保護帽の着用」が2023年10月から、「テールゲートリフターの操作に係る特別教育」が2024年2月から義務付けられました。これらの改正の背景にも、労働災害の死傷者数が増加傾向にあることが挙げられます。

陸運事業の労働災害発生状況

2022年の労働災害による死亡者数(※)は全産業で774人と過去最少となった一方で、休業4日以上の死傷者数は全産業で132,355人(前年比1,769人増)と過去20年で最多となりました。

2017年との比較では、死亡者数は全産業で204人減(20.9%減)、そのうち陸運事業は47人減(34.3%減)といずれも大きく減少した一方で、休業4日以上の死傷者数は全産業で11,895人増(9.9%増)、そのうち陸運事業は1,874人増(12.7%増)と、こちらはいずれも増加しています。

事故の型別でみると、陸運事業の死亡者数は「交通事故(道路)」が最多(全数に占める割合は36.7%)、陸運事業の死傷者数は「墜落・転落」が最多(同25.9%)で「動作の反動・無理な動作」(同17.7%)や「転倒」(同17.6%)も高い割合を占めています。

※新型コロナウイルス感染症への罹患によるものを除いた人数

 

寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング、発行:MS&AD経営サポートセンター

関連記事

リチウムイオン電池に起因する火災の現状と対策

2025年6月27日

事故防止

雑居ビル火災の危険性

2025年6月11日

事故防止

コンタミネーションとは?起こる原因と対策方法を解説

2025年6月2日

事故防止

高齢者の自動車運転に関する実態と意識について~アンケート調査結果より(2024年版)

2025年2月28日

事故防止

飲酒運転根絶の取組と企業経営

2024年12月27日

その他

事故防止

おすすめ記事

介護手当とは?受給条件やその他の手当を解説

2025年6月23日

健康経営・メンタルヘルス

子ども・子育て拠出金とは?制度の仕組みや計算式、課題点を解説

2025年6月16日

人事労務・働き方改革

給与デジタル払いとは?基本的な仕組みと導入のメリット・デメリットを解説

2025年5月26日

サイバーリスク

フェムテックとは?基本的なとらえ方と課題解決のポイントを解説

2025年5月19日

健康経営・メンタルヘルス

不当解雇とは?適正な解雇との違いや条件を詳しく解説

2025年4月21日

人事労務・働き方改革

週間ランキング

6月から義務化(罰則付き)となった「職場の熱中症対策」のポイント

2025年6月13日

その他

帝国データバンク公表「採用時の最低時給は 1,167円人材確保を背景に最低賃金より112円高く~ 「東京」が唯一1,300円超え、都市部と地方で格差が顕著に~」

2024年11月6日

その他

リチウムイオン電池に起因する火災の現状と対策

2025年6月27日

事故防止

休職中の社員の社会保険料負担

2023年7月28日

人事労務・働き方改革

改正育児・介護休業法 ~令和7年10月1日施行編~

2025年3月28日

法改正