「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス」について

公開日:2023年8月4日

サイバーリスク

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)および政令指定法人JPCERTコーディネーションセンターが事務局として運営する「サイバーセキュリティ協議会」は、2022年5月に「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス検討会」を設置し、2023年3月8日に「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス」(以下「本ガイダンス」という。)を公表しています。

被害内容・対応情報と攻撃技術情報の分離

サイバー攻撃の手法は高度化しており、攻撃を受けた組織(以下「被害組織」という。)が単独で攻撃の全容を解明することは困難になっているなか、被害組織とサイバーセキュリティ専門組織などとの情報共有は、被害組織にとっても社会全体にとっても、非常に有益です。

しかしながら、被害組織にとっては、自組織のレピュテーション(風評)に影響しかねない情報共有には慎重であるケースも多いです。この原因としては、被害組織が、サイバー攻撃被害に係る情報を外部に知られることで風評リスクなどが想定される「被害そのものを示す情報(以下、「被害内容・対応情報」という。)」と、そうではない「攻撃/攻撃者の活動を示す情報(以下、「攻撃技術情報」という。)」に仕分けることが出来ていないことにあります。

「被害内容・対応情報」は、外部に知られることで風評リスクとなるものや、自社の過失に関する情報、第三者の不利益となる情報を含む場合があり、公表前に外部に伝わることを避ける傾向が強いです。一方、「攻撃技術情報」は、被害組織に紐づくものはほとんどないため、外部に伝えても風評リスクは高くありません。公表前の早いタイミングにおいて、被害組織が「攻撃技術情報」を切り分け、関係者間で共有することで、被害組織としては、インシデント対応に必要な情報を得ることができる上に、他の組織は、被害の未然防止のための情報を得ることが可能となります。

出典:サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス検討会より抜粋

かかる課題を解消すべく、本ガイダンスは、情報共有・公開を行うにあたって「被害者保護」と「攻撃対処」の観点からサイバー攻撃被害に係る「被害内容・対応情報」と「攻撃技術情報」という性質の異なる二つの情報を切り離し適切に取り扱うためのポイントやそれらの情報をどのタイミングでどのような主体と共有することが適当なのか、またその際の「外部組織との連携」や「機微な情報への配慮」について解説しています。また、本ガイダンスは、具体的に業務に活用することを志向し、ケーススタディやFAQ形式で読みやすくまとめています。被害を認知した後に参考とするだけでなく、平時からのインシデント対応体制の整備や訓練にあたっても参考として活用ください。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2023年3月(第12号)を基に作成したものです。

関連記事

ランサムウェア身代金の支払いを規制 英国政府が法令案に対する意見公募結果を公表

2025年11月19日

サイバーリスク

個人情報の漏えい、過去最多 個人情報保護委員会が年次報告を公表

2025年11月12日

サイバーリスク

2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査

2025年10月3日

サイバーリスク

英国NCSCがサイバーガバナンス実施規範を公表

2025年8月8日

サイバーリスク

2024年は中小企業のランサムウェア被害が増加、警察庁報告書

2025年7月23日

サイバーリスク

おすすめ記事

【2026年施行予定】カスタマーハラスメント対策が義務化へ!改正労働施策総合推進法が企業に与える影響

2025年12月8日

ハラスメント

スマホ2時間条例とは?スマホ規制に関する世界の動きとスマホ依存症の現状をまとめて解説

2025年12月1日

健康経営・メンタルヘルス

【2026年】企業経営に関する法改正をまとめて紹介

2025年11月17日

法改正

ガソリン暫定税率廃止とは?想定されるメリットとリスク、今後の見通しを解説

2025年11月10日

助成金・補助金

事業承継におけるM&Aが増加!具体的な手順と活用できる補助金制度を紹介

2025年10月27日

事業承継・M&A

週間ランキング

下請法から取適法へ。改正で、何がどう変わる?(第1回)

2025年12月12日

法改正

「個人から法人への非上場株式の譲渡における注意点」

2024年11月22日

その他

過剰に主張するハラハラとは!?具体例と対策について

2024年9月6日

人事労務・働き方改革

ハラスメント

リチウムイオン電池輸送の現状と国際規制について

2025年11月28日

法改正

事故防止

改正GX推進法と二酸化炭素排出量取引制度の義務化について

2025年11月7日

脱炭素