資金調達とは?主な5つの方法やポイント・注意点等を解説
公開日:2024年3月22日
助成金・補助金
企業が事業を継続するには、資金調達が非常に重要です。必要なタイミングで資金を調達できなければ、事業を拡大させるチャンスを逃すだけでなく、経営が不安定なものになる恐れがあります。
そのため、事前に資金調達方法ごとの特徴や資金を調達しやすい環境づくりに取り組んでおく必要があるでしょう。この記事では、資金調達の基本的なポイントや種類、注意点等を解説します。
資金調達とは
企業において、資金調達をどのように捉えるかで、経営戦略や事業計画に影響が出てくる部分は大きいと言えます。資金調達の必要性と融資との違いを解説します。
資金調達の必要性
資金調達は、企業が設備資金や運転資金を調達するために行うものであり、どの程度の資金が必要であるかは企業規模や資金を求めるタイミングによります。設備資金は主に、土地・建物・機械・備品・車両の購入等の用途で使われる資金を言います。
一方、運転資金は事業を継続するために必要な手元資金の確保、原材料や商品の仕入れに使われる資金です。事業を継続し、さらに成長させていくためには、ファイナンスにおける戦略を適切に行っていくことが重要です。
融資とは何が違う?
融資とは、金融機関や公的機関から事業用の資金を借り入れることを指します。融資も資金調達方法の一種であり、締結した契約に沿って、利息を上乗せした金額を返済していく必要があります。
中小企業向けの融資制度はさまざまなものがあり、状況に応じて資金繰りを考えていくことが大切です。例えば、国が100%出資している日本政策金融公庫では、高い成長性が見込まれる事業を行う方向けの「新事業育成資金」や廃業等の経験がある方向けの「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」等、利用者のニーズに合わせたさまざまな仕組みが用意されています。
資金調達の主な方法5つ
資金調達の方法はさまざまなものがありますが、主な方法として次の5つが挙げられます。
1. デットファイナンス:負債を増やす
2. エクイティファイナンス:資本を増やす
3. アセットファイナンス:資産の現金化
4. 補助金や助成金の利用
5. クラウドファンディングの活用
それぞれの特徴の違いを解説します。
1.デットファイナンス:負債を増やす
デットファイナンスとは、借入れを行って資金調達をする方法であり、一般的には融資と言われます。デットファイナンスは基本的に返済期限が設定されるものであり、金融機関に返済を行う時は利息が発生します。
特徴としては借入先の候補が多くあるため、金利や返済期限等を比較しながら、自社に合った借入先を見つけられる点だと言えるでしょう。返済期限があることで返済計画を立てやすくなり、過剰な借入れを防ぎやすい部分があります。
2.エクイティファイナンス:資本を増やす
エクイティファイナンスとは、資本を増やすことで資金を調達する方法であり、代表的なものとして発行した株式を株主資本とすることで、資金調達を行うケースが挙げられます。
エクイティファイナンスの特徴は、返済の必要がない資金調達方法であることです。一方、株式を取得した出資者が経営に影響をおよぼす場合があるので、株主の割合に注意を向けておく必要があります。
3.アセットファイナンス:資産の現金化
アセットファイナンスとは、不動産等の企業が保有する資産から生み出されるキャッシュフローを返済原資として、資金の調達を行う方法を言います。具体的な方法としては、賃貸用不動産をSPC(特別目的会社)に売却して資本効率を良くする「流動化ファイナンス」があります。
また、遊休不動産を収益物件としてSPCが開発し、ファイナンスの健全性を保とうとする「開発型ファイナンス」といった方法も有効です。企業が保有する資産を売却することで、財務体質を改善できるのが特徴です。
4.補助金や助成金の利用
国や自治体が実施する補助金や助成金等の制度を活用することも、資金調達の一種であると言えます。制度の種類はさまざまなものがあるため、幅広い業種で利用することができます。
ただし、補助金や助成金を申請するためには、多くの書類を用意しなければならないため、必要に応じて外部の専門家のサポートを受けるようにしましょう。また、申請期限や要件等が定められているので、事前にチェックしておくことが大切です。
5.クラウドファンディングの活用
インターネットを通じて、不特定多数の人々から資金調達することをクラウドファンディングと言います。金融機関では融資が難しい事業であっても、クラウドファンディングであれば資金調達を行える場合があります。
クラウドファンディングには、購入型・寄付型・融資型・株式投資型・ファンド型・ふるさと納税型等のさまざまな種類があるので、自社に合った形で資金調達を行うことが大切です。
シーン別の資金調達方法
資金調達をどのような方法で行うかは、資金が必要なタイミング等によっても違ってきます。ここでは、シーン別の資金調達方法について解説します。
起業時の資金調達方法
スタートアップの企業であれば、過去の実績がない状態であるため、金融機関から融資を受けにくい部分があるでしょう。そのため、不特定多数の人たちから出資を募ることができるクラウドファンディングや、補助金・助成金等を活用してみると良いでしょう。
起業して間もない頃は、経営基盤が不安定であり、企業としての信用がまだ築けていないため、個人投資家等からの出資を受けるのは難しいと言えます。自社の取組に興味を持ってもらうことで資金を集めたり、一定の要件を満たせば返済の必要がない助成金等をうまく活用したりしていくことが大事です。
中小企業や非上場会社の資金調達方法
中小企業や非上場会社の場合、日本政策金融公庫や金融機関からの融資を受けるほうが無難です。特に日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者向けの融資が充実しており、用途に応じて自社に合ったものを選びやすいのが特徴です。
また、非上場会社であればベンチャーキャピタル(VC)の利用も検討してみると良いでしょう。ベンチャーキャピタルとは、未上場の企業の株式を取得して、上場時に売却することで利益を受け取る投資団体のことを指します。
融資だけでなく、出資も含めて幅広く検討してみましょう。
赤字補てんの資金調達方法
企業業績が悪化している状態であれば、アセットファイナンスや補助金・助成金等を活用してみましょう。業績が良くない状況で負債を増やしてしまっては、さらに経営が難しくなってしまうため、返済負担のない資金調達方法を優先することが重要です。
資金調達の際に金融機関がチェックするポイント
資金調達を行う時は、金融機関が融資の際にチェックするポイントからも、気を付けておく点がいくつかあります。どのような点をチェックされるのかを解説します。
明確な経営計画を立てているか
金融機関に提出する書類は、自社の強みや成長戦略、企業価値を将来的にどのように高めていくのか、説得力のある説明を行う必要があります。場当たり的な説明では、経営計画の脆弱さを見抜かれてしまうため、さまざまな角度から自社の経営を振り返ることが大切です。
経営計画を取りまとめる際は、良い点だけを書き出すのではなく、現実的な視点に立って事業を行う上で発生するリスクや対応策についても考えておきましょう。自社の現況をありのまま伝えると同時に、今後の事業展開を伝えていくことが大事です。
資金調達のタイミングは適切か
資金調達は適切なタイミングで行わなければ、せっかく集めた資金を有効活用できなくなります。また、業績が悪化してから融資を受けようとしても、思うように資金を集められないケースもあるでしょう。
資金調達は基本的に、事業を拡大させたり軌道に乗せたりするタイミングで行うことが大切です。また、市場が拡大している時にも資金調達を検討してみることが大事だと言えます。
ビジネスパートナーと信頼関係を築けるか
資金調達をスムーズに行うためには、ビジネスパートナーとの良好な信頼関係を長期にわたって築いていくことが大切です。例えば、週次で財務状況の報告を行ったり、月1回程度は近況を伝えたりする関係になっておくことで、資金調達が必要な時に相談しやすくなるでしょう。
資金調達を行う際の注意点
資金調達を行う時は、事前に見直しておきたいポイントがあります。スムーズに資金調達を進めるための注意点を解説します。
キャッシュフローの見直しを行う
返済が必要なデットファイナンスを行った場合には、利息の負担や毎月の返済に支障がないかといった点を十分にチェックしておく必要があります。年間の資金需要を確認した上で、資金繰りが厳しくなってしまわないように、キャッシュフローを見直すことが大切です。
キャッシュフローを確認するには、資金繰り表を作成して定期的にチェックし、資金の流れを予測することが重要だと言えます。
借入資金の返済計画を立てておく
金融機関が融資を行う時は、企業の将来性や返済に支障がないかといった点をチェックします。そのため、融資を受けた後の業績予測等に問題がないかを確認しておきましょう。
調達した資金で事業を成長させるのは基本ですが、取引先に偏りがあったり、リスクがあったりしないかを確認しておくことが大事です。当初の予測よりも業績が悪化した場合のことも想定して、返済計画を立ててみましょう。
株式の希薄化への対処法を立てておく
エクイティファイナンスによって新たな株式を発行した場合、既存株主の所有割合が減少することを念頭に置いておく必要があります。経営権が希薄化すれば、安定的な経営に支障が出てしまうからです。
資金の調達方法やタイミングに問題がないかを検討した上で、ファイナンス戦略を捉えていくことが大切です。また、新たに株式を発行する際は、株主と事前にコミュニケーションを緊密に取っておくことも心がけましょう。
まとめ
企業が安定的な経営を行い、事業を成長させていくには資金面での戦略をきちんと立てておくことが大切です。資金調達方法はさまざまなものがあるので、資金の用途やタイミング等を精査し、ベストな選択を行っていく必要があります。
いざ資金が必要な時に動こうとしても、準備に十分な時間が掛けられずに、思うように資金調達が進まない場合があります。日ごろからキャッシュフローをよく確認して、金融機関や出資者等と緊密なコミュニケーションを取っておきましょう。