「ビジネスと人権」政府行動計画改定案が公表、外国人労働者やAIが優先分野に

公開日:2026年3月27日

SDGs

人権

外務省は2025年10月1日、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を国内で推進するため、法制度の整備や政策の実施、企業の取組の促進等、今後の政府の取組をまとめた行動計画の改定案を公表しました。2020年に策定した現行動計画の改定版の位置づけです。

「ビジネスと人権」政府行動計画改定案

改定案によると、企業による人権侵害リスク抑止の取組がレジリエンスおよび企業価値の向上につながると意義を強調。その上で、昨今の社会・経済状況を踏まえて、外国人労働者の就労・生活環境の改善や人工知能(AI)との安全な協調等を政府の取組の優先分野に挙げました。一方で、これまでに国連やNGO等が設置を求めている政府から独立して人権侵害の調査や救済を担う機関の設置のほか、人権デューデリジェンスを企業に義務付ける法制化についての言及はありません。

改定案では、行動計画の目的について現行計画と同じ4点を継承しました。
● 国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進
● 「ビジネスと人権」関連政策に係る一貫性の確保
● 日本企業の国際的な競争力および持続可能性の確保・向上
● SDGsの達成への貢献

その上で、グローバル企業を念頭に、サプライチェーンを含めた人権尊重の取組推進を通じて、国際社会の信頼や投資家の高評価を引き出し、最終的には自社の企業価値向上につなげる意義を強調しています。

また、目的の達成のために各省庁が実施する施策や措置を具体的なテーマやトピックスに応じて列挙する現行計画の構成を維持。

改定案では「優先分野」に名称が変更されたものの、同様の趣旨で整理されています。現行計画と改定案を比較すると、取り上げられているテーマやトピックスは大部分は共通です。ただ、改定案では、現行計画策定時との社会・経済の状況変化を反映して記載の濃淡が若干変化しています。

 

企業行動憲章アンケートの結果について解説しています。

 

中でも、外国人労働者とAIは、現行計画と比べて重要度が引き上げた印象の記載となっています。まず、外国人労働者について、現行計画が「在留資格を有するすべての外国人を…社会を構成する一員として受け入れていく」といった概括的な表現なのに対して、改定案では「日本が『選ばれる国』になる環境の整備は…国際競争力の向上に重要」と切実さが際立つ記載に変更。

その上で、就労環境や能力開発、日常生活等の各側面できめ細やかな配慮を備えた施策を挙げました。国内の急速な人口減少を受けて、国内経済の維持や持続的成長のために外国人労働者の存在が不可欠な現状への危機感が垣間見えます。

新制度「育成就労制度」について解説しています。

 

一方で、AIは改定案で「テーマ別人権課題」の個別の項目に特出しされています。2023年5月の主要7ヵ国首脳会議(G7広島サミット)で日本が主導した「広島AIプロセス」やその後の施策を引合に、AIイノベーションの促進とリスク対応の両立による人権尊重・法令遵守・安全な協調を重視したガバナンスの実現や国際的な協調の推進を今後の主要施策に挙げています。

現行計画では「新しい技術の発展に伴う人権」のうち、インターネット上の名誉毀損やヘイトスピーチ対策と併せ、AIと人権やプライバシー保護について「議論の推進」を挙げるにとどまっていたのとは対照的です。

日本での官民による取組が不十分な人権課題について解説しています。

 

また、国連指導原則の3本の柱の一つ「救済のアクセス」では、公的・民間双方の通報・相談窓口の周知促進や企業の公益通報窓口体制の整備促進等を具体的施策に例示しました。ただ、2023年7月に来日した国連ビジネスと人権作業部会の調査団が報告書で指摘したほか、国内外のNGO等が政府に繰り返し設置を要求している国家人権機関(NHRI)の設置に触れる記載はありませんでした。

NHRIは、政府から独立し、差別への対処や権利の保護、人権侵害に対する司法以外の救済等の役割を担う機関です。国連は各国に設置を求めており、持続可能な開発目標(SDGs)にも含まれています。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2025年12月(2025年度第9号)を基に作成したものです。

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