企業における就活生へのハラスメント防止措置義務化へ 法改正の動き進む

公開日:2025年2月14日

人事労務・働き方改革

ハラスメント

厚生労働省は2024年10月22日、就活生へのハラスメント対策の強化の一環として、企業へのハラスメント防止措置義務化に向けた検討を開始しました。同省は2024年内に議論をまとめ、2025年の通常国会において関連法案の提出を目指しています。

ハラスメント防止措置義務化へ

職場におけるパワーハラスメント(以下パワハラ)やセクシュアルハラスメント(以下セクハラ)については、防止措置を企業へ義務化する法改正が2020年に実現しました。企業側の対応もおおよそ進んだ一方で、近年表面化している就活生に対するハラスメントについても防止措置の必要性が認識されています。実際、厚生労働省が過去2回行った調査によると、およそ回答者の3人に1人が就職活動中にセクハラを受けていることがわかりました。企業によっては、インターンシップやOB・OG訪問、リクルーターによる採用活動を通じて学生と接する機会が増えており、就活生へのハラスメントが発生する要因の一つと考えられます。

ハラスメントの定義や主な種類をご紹介した上で、発生する原因と必要な対策について解説しています。

 

加害者と被害者の双方が企業と雇用関係にあり、その中で発生するパワハラやセクハラと違い、被害者が雇用関係にない就活生へのハラスメントについては、労働施策総合推進法の定義のみでは対処できない側面があります。就活生へのハラスメント行為について、職場における雇用管理の枠組みを広げ対処することができるかについては、今後の争点となっています。

上記検討の流れを踏まえ、企業に対しては就活生へのハラスメント対策が強く求められていくといえます。まずはトップメッセージや研修等を通して就活ハラスメントを行わないよう周知徹底するなど、就活ハラスメントを起こさせないような取組が求められていきます。これらの対策を講じることは、自社の役職員がハラスメント行為を起こさないようにするといった心理的な抑止力にも繋がります。一方で、被害者となり得る就活生に対しても、相談窓口を設置・公開することやハラスメントが発覚した際に迅速な対応ができる体制を構築しておくことが重要です。厚生労働省が公開する「就活ハラスメント防止対策企業事例集」(注3)では、就活ハラスメント対策に取り組む企業の具体的な取組事例を紹介しています。自社において対策を立案するにあたり参照ください。

過去にも自社の役職員が就活生に対してハラスメントを行っていることが報道やSNS等で発覚し、企業価値を棄損するといった事例が発生しています。就活生に対するハラスメントが発覚することで、自社への入社を敬遠されるといったリスクが想定されます。人手不足が深刻な中、人材の確保は企業経営における最重要課題の一つです。企業においては今後の法改正の動向を注視しながら前倒しで対応策について検討ください。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2024年12月(第9号)を基に作成したものです。

関連記事

厚生年金保険とは?国民年金保険との違いや計算方法を解説

2025年6月9日

人事労務・働き方改革

第2回 従業員のための相談対応体制の整備と対応マニュアル作成のポイント

2025年6月6日

ハラスメント

医療機関・福祉事業者に求められるカスハラ対策

2025年5月23日

ハラスメント

精神障害の労災認定は厳しい?労災認定における精神障害の取り扱い、認定要件について解説

2025年5月16日

人事労務・働き方改革

産休 (産前産後休暇)と育休の手続きについて解説

2025年5月7日

人事労務・働き方改革

おすすめ記事

給与デジタル払いとは?基本的な仕組みと導入のメリット・デメリットを解説

2025年5月26日

サイバーリスク

フェムテックとは?基本的なとらえ方と課題解決のポイントを解説

2025年5月19日

健康経営・メンタルヘルス

不当解雇とは?適正な解雇との違いや条件を詳しく解説

2025年4月21日

人事労務・働き方改革

ESG経営とは?企業価値を高めていくための戦略や事例を紹介

2025年4月14日

SDGs

太陽フレアとは?経営にもたらす影響や被害、対策を詳しく解説

2025年4月7日

自然災害・事業継続

週間ランキング

帝国データバンク公表「採用時の最低時給は 1,167円人材確保を背景に最低賃金より112円高く~ 「東京」が唯一1,300円超え、都市部と地方で格差が顕著に~」

2024年11月6日

その他

補助金申請から入金まで!全体スケジュールを徹底解説

2023年11月15日

助成金・補助金

自然災害時の避難に関する実態と意識について~アンケート調査結果より~

2023年9月1日

自然災害・事業継続

休職中の社員の社会保険料負担

2023年7月28日

人事労務・働き方改革

弁護士が解説!企業が問われる法律上の損害賠償責任とは ~自然災害(土地工作物責任)における訴訟事例~

2024年4月24日

自然災害・事業継続