帝国データバンク公表 「正社員の採用予定60.3% 3年ぶりに上昇 人手不足背景に意欲回復」

公開日:2026年4月10日

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2026年度の正社員雇用では、『採用予定がある』企業が60.3%と3年ぶりに上昇しました。継続する人手不足、退職や高齢化に伴う補充需要の増加が背景にあるほか、事業拡大を見据えた“攻めの採用”の動きもみられました。

採用形態は「新卒」36.9%に対し「中途」52.4%と中途採用が上回りました。一方、非正社員の採用予定は41.2%と3年連続で低下しました。採用意欲は高まっているものの、中小企業では大企業との賃金格差による応募数の少なさや既存社員との処遇調整等、多くの課題が残されています。

正社員『採用予定がある』割合は 60.3% 3 年ぶりに上昇、 2 年ぶりに 6 割を回復

2026 年度(2026 年 4 月~2027 年 3 月入社)の正社員の採用状況について尋ねたところ、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)企業の割合は前回調査(2025年2月実施)から1.5ポイント増の60.3%となり、3年ぶりに前の年度を上回りました。6割台に回復するのは2年ぶりです。

また、採用予定がある企業の内訳は、採用人数が「増加する」企業が同2.3ポイント増の24.0%となりました。

他方、『採用予定はない』は同0.6ポイント減の27.9%と3年ぶりに低下しました。

『採用予定がある』企業からは、「技術者など特定の職種で不足感が高まっている」(機械製造)や、「定年退職者の補充および業務拡大にともなう人員確保を計画している」(ビルメンテナンス)、「事業成長のためには採用が重要」(リース・賃貸)といった声が聞かれ、人手不足への対応や欠員補充に加え、事業拡大・成長を見据えた増員の動きがうかがえました。また、「派遣社員の数を減らし、その分正社員数を増やしていきたい。仕事を継続的に進めていく姿勢を求めている」(化学品製造)等、非正社員から正社員へのシフトを進める声も寄せられました。

一方で、「採用予定はない」企業からは「売り上げの減少と人件費の高騰により、今いる社員への給与支給を確保するのに精いっぱいで、人員増強を行う余裕がない」(機械・器具卸売)といった、業績悪化や人件費上昇による採用余地の縮小が多く指摘されました。さらに、「現在の人員で業務は十分賄えており、採用の必要性は感じられない」(その他サービス)等、現状維持を理由に採用を控える企業もありました。ほかにも、「採用活動はしているが応募がない。予算がないため外部業者を利用することもできない」(専門サービス)等、採用意欲はあるものの応募が思うように集まらず、実際の採用につながらない企業がみられました。

正社員『採用予定がある』割合、運輸・倉庫業がトップ

規模別に正社員の『採用予定がある』割合をみると、「大企業」は85.0%と全体(60.3%)を大幅に上回りました。一方で、「中小企業」は56.0%、うち「小規模企業」は36.0%となり、企業規模が小さいほど割合が低くなる傾向がみられました。中小企業からは、「大企業のように初任給を大幅にアップすることができず、求職者に対してアピールができない状況」(情報サービス)といった声があり、賃上げ余力の差が採用活動に影響している様子がうかがえました。

業界別に正社員の『採用予定がある』割合をみると、深刻な人手不足に直面している『運輸・倉庫』が70.4%で最も高くなっていました。企業からは、「欠員状態であるほか、高齢化しているため次世代の育成が急務である」(一般貨物自動車運送)といった声が聞かれました。また、『製造』は67.1%と7割近くにのぼり、「AIなどDXに関係する技術を導入するため専門部署の人員を増やしていきたい」(電気機械製造)とのコメントがあがりました。

さらに細かい業種でみると、人手不足感が強い介護職を含む「医療・福祉・保健衛生」(76.4%)のほか、「再生資源卸売」および「輸送用機械・器具製造」(ともに76.3%)も7割台後半に達しました。

正社員採用予定、新卒新入社員は 36.9%、中途社員は 52.4%

2026 年度の正社員の採用状況を採用形態別に尋ねたところ、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)企業の割合は、「新卒新入社員」が36.9%、「中途社員」が52.4%となりました。

規模別にみると、「大企業」では「新卒新入社員」が72.7%、「中途社員」が74.1%でした。他方、「中小企業」では「新卒新入社員」が30.7%だったのに対し、「中途社員」は20ポイント近く高い48.7%となり、大企業に比べて中途採用をより重視する傾向がうかがえます。

企業からは「新卒者は他社の給与水準が上がるなかで戦力としては未知数であるため、給与を引き上げてまで積極採用はせず、当面は経験とスキルが確認できる中途社員で戦力強化を図りたい」(不動産)や、「会社の将来のために若い新卒者を採用したいが、社員教育が大変」(飲食料品卸売)といった声が聞かれ、初任給上昇による採用コスト負担の増大や、教育リソース不足が新卒採用の障壁となっている実態がうかがえます。また、中小企業からは、「新卒の採用は中小企業にとって大変厳しい。大企業のように初任給アップやベースアップはできない」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)といった意見も寄せられ、大企業との賃金格差が構造的な制約となり、中小企業の新卒採用を一層困難にしている状況が確認されました。

非正社員『採用予定がある』割合は3年連続で低下

2026 年度の非正社員の採用状況について尋ねたところ、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)企業の割合は前年度比0.5ポイント減の41.2%と3年連続で低下しました。

一方、『採用予定はない』企業は同0.7ポイント増の43.2%となり、3年連続で4割を超えました。

『採用予定がある』企業からは、「正社員の高齢化で採用をしたいところだが、採用しても定着に疑問があるため、現社員の定年延長とパート・アルバイトの戦力化でしのいでいる状況」(専門商品小売)といった声が聞かれました。

一方で、「採用予定はない」企業からは、「今後も最低賃金の上昇が見込まれているほか、経費負担の増加が続くなか、売り上げの増加につながりづらい業務運営のためのパート社員を増やす予定はない」(紙類・文具・書籍卸売)とのコメントが寄せられました。

非正社員『採用予定がある』割合、運輸・倉庫業がトップ

規模別に非正社員の『採用予定がある』割合をみると、正社員と同様に企業規模が小さいほど割合が低くなっています。

業界別では、『運輸・倉庫』が52.5%で最も高く、『製造』(50.6%)、『農・林・水産』(50.4%)も5割台で続きました。企業からは「アルバイト・パートの戦力化を図っている」(飲食料品・飼料製造)といったコメントがあがりました。

さらに細かい業種でみると、インバウンド需要の好調が続いている「旅館・ホテル」(77.9%)が8割近い高水準となりました。人手不足感の強い「飲食店」のほか、「飲食料品小売」(ともに70.9%)も7割台に達しました。また、総合スーパー等を含む「各種商品小売」(67.2%)、「飲食料品・飼料製造」(66.9%)が7割近くとなりました。総じて、飲食関連や宿泊分野等を中心に、非正社員の採用意向が比較的高い状況が確認されました。

まとめ

帝国データバンクが毎月実施している「TDB景気動向調査」では、2026年2月時点で正社員が不足している企業の割合は8か月連続で5割台と高水準で推移しています。こうした状況のもと、本調査では2026年度の正社員の雇用動向について、『採用予定がある』と回答した企業は前年度比1.5ポイント増の60.3%となり、3年ぶりに前年度を上回りました。

人手不足への対応に加え、退職者や高齢化による補充需要が一段と高まっているほか、事業拡大や新規事業・拠点開設を見据えた“攻めの採用”の動きもみられました。また、非正社員から正社員へ移行させる意向を示す企業もあり、非正社員を『採用予定がある』企業は同 0.5 ポイント減の41.2%と 3 年連続で低下しました。

しかし、採用予定があると回答した企業のなかでも、「市場に人材がいない」「大企業に比べ賃金水準で見劣りするため応募が集まらない」といった声が聞かれ、計画通りの人材確保については依然として厳しい状況にあります。

また、人材獲得のための賃上げに伴い、既存社員との賃金バランスの調整が課題となるケースもみられました。こうした環境を受け、非正社員から正社員への登用や外国人雇用を選択肢に入れる企業も一定数ありました。

さらに、AIの活用や自動化等省人化の取組も複数の企業で検討されており、人材確保の困難さを背景に、企業側の対応は多様化しています。大企業に比べて賃金や待遇面で見劣りする中小企業に対しては、賃上げ負担への助成や価格転嫁を進めやすい環境整備、省力化・省人化投資への支援、外国人雇用に関する規制緩和等、多方面からの政策的支援が一層求められます。

株式会社帝国データバンク発行の「2026年度の雇用動向に関する企業の意識調査」(2026年3月23日)を基に作成したものです。

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