厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を改正
公開日:2023年11月17日
人事労務・働き方改革
厚生労働省が心理的負荷による精神障害認定基準を改正、パワーハラスメント評価表を強化
厚生労働省は2023年9月1日、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正しました。今回の改正は、近年の社会情勢の変化や労災請求件数の増加等に鑑み、2023年7月に、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」(以下「専門検討会」という)が取りまとめた報告書に基づいて行われました。
今回の改正で、認定基準の「業務による心理的負荷評価表」に記載されている「具体的出来事」について、「出来事の類型」の追加や統合、「心理的負荷の強度を『弱』『中』『強』と判断する具体例」の拡充が行われました。「出来事の類型」の「パワーハラスメント」に関して、これまで示されていた具体例は、厚生労働省が示すパワーハラスメントの6類型(「精神的な攻撃」、「身体的な攻撃」、「過大な要求」、「過小な要求」、「人間関係からの切り離し」、「個の侵害」)のうち、「精神的な攻撃」と「身体的な攻撃」の2類型のみでしが、6類型すべてが明記されました。
同評価表へは、2020年6月のパワーハラスメント防止対策の法制化に伴い、「パワーハラスメント」の項目が追加されており、当時の認定基準でも、運用上は6類型すべての行為を対象としていました。今回の改正で評価表にも明記され、実務上の対応と評価表上の記載内容が揃った形となりました。
今回の見直しによりパワーハラスメントを原因とする精神障害の労災認定の判断基準が変更されるものではなく、企業においては、これまで実施してきた各種ハラスメント防止の取組を今後も継続することが求められます。
本認定基準は将来的にも定期的な見直しが検討されると考えられることから、引続き、「専門検討会」での検討状況や議論の内容を注視する必要があります。
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2023年10月(第7号)を基に作成したものです。