雇用保険等の一部を改正する法律~教育訓練やリスキリング支援の充実~
公開日:2025年8月1日
人事労務・働き方改革

2024年5月10日、「雇用保険等の一部を改正する法律」が成立しました。
この改正では、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築や「人への投資」の強化を目的に、雇用保険の適用拡大、教育訓練やリスキリング支援の充実、育児休業給付の給付率の引き上げなどが行われました。
ここでは、労働者の再就職活動や主体的な能力開発を支援することを目的として見直しがされることとなった教育訓練やリスキリング支援に関する改正項目について、お伝えします。
教育訓練やリスキリング支援に関する改正項目について
自己都合で離職した方について、従来は失業給付(基本手当)の受給にあたって、待機期間満了の翌日から原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間がありました。
今般、労働者が安心して再就職活動を行えるようにする観点から給付制限期間の見直しが行われ、離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限が解除され、基本手当を受給できるようになりました。
また、原則の給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月に短縮されました(5年間で3回以上の自己都合離職の場合は3ヶ月)。

教育訓練給付金の給付率(上限)の引き上げ(2024年10月1日施行)
教育訓練給付とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した際の費用の一部を支給することを通じて、労働者の学び直しを支援する制度です。
これまでは、教育訓練の種類に応じて受講費用の20%~70%が支給されていましたが、改正により給付率の上限が80%に引き上げられました。

専門実践教育訓練給付金(中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練講座を対象)について、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合、これまでの追加給付に加えて、さらに受講費用の10%が追加で給付されます(合計80%)。
特定一般教育訓練給付金(速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練講座を対象)について、資格取得し、就職等した場合、これまでの追加給付に加えて、さらに受講費用の10%が追加で給付されます(合計50%)。

これにより、労働者個人の主体的なリスキリング等の能力開発の支援を強化するとともに、教育訓練の効果(賃金上昇や再就職等)を高めていくことが期待されます。
教育訓練休暇給付金の創設(2025年10月1日施行)
現行では、労働者が自発的に、教育訓練に専念するために仕事を離れた場合、その訓練期間中の生活費を支援する仕組みがありません。
労働者の主体的な能力開発を支援する観点から、離職者等を含め、労働者が生活費への不安なく教育訓練に専念できるようにするため、教育訓練休暇給付金が創設されました。

これにより、雇用保険の被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合、基本手当相当の給付を受けることができるようになります。
まとめ
多様な人材の労働参加が進む中で、働くことに対する価値観やライフスタイルも多様化しています。このような状況下、労働者が持てる能力を十分に発揮できるよう、主体的なキャリア形成を支援することが企業には求められます。特に、新たに導入される教育訓練休暇給付金は、企業にとっても人材のスキルアップを後押しする好機となります。
今回の法改正を前向きに捉え、従業員のエンゲージメント向上や働きやすい職場づくりにつなげていきましょう。