テレワークの導入・廃止・継続のための検討ポイント

公開日:2025年10月24日

人事労務・働き方改革

今回は、企業がテレワークの導入・廃止・継続を検討する際に、考慮すべき主要なポイントを整理してお伝えします。

新たな働き方の選択肢

テレワーク(通信機器を活用して自宅等で勤務すること)は、働き方改革の代表的な取り組みとして注目を集めています。特に2020年のコロナ禍を契機に急速に普及したテレワークは、多くの企業にとって新たな働き方の選択肢となりました。

その後コロナ禍が収束に向かう中で、アメリカの大手IT企業や日本の有名企業においてテレワークの廃止や縮小を決定したニュースが話題となるなど、従業員のオフィス回帰を進める方針を打ち出す企業があります。一方で、ワークライフバランスの向上や人材採用・定着の強化を目的として、これから新たにテレワークの導入を検討する企業もあるのが現状です。

出典:総務省/令和5年通信利用動向調査

今回は、企業がテレワークの導入・廃止・継続を検討する際に、考慮すべき主要なポイントを整理してお伝えします。

従業員の働きやすさと生産性への影響

テレワークは、従業員の働き方に大きな影響を与えます。例えば、通勤がなくなることで、心身へのストレスを軽減できることや、プライベートの時間を多く持つことができます。また、育児や家族の介護をしている従業員にとって、テレワークは仕事と日常生活の両立の観点で重要な選択肢となる場合があります。

一方で、従業員の生産性に影響を与えることも考えられます。自宅で作業することで集中力が高まることで生産性が向上するケースもあれば、コミュニケーションの不足や、周囲の目がないことによる懈怠で生産性が低下するケースもあります。
テレワークを廃止した企業でも、対面のコミュニケーション不足により企業文化が醸成しにくいことや、深い議論やアイデアの交換によるイノベーションが起きにくくなることが廃止の理由として多く挙げられています。

このように、テレワークにはメリットとデメリットがあることから、現在では全労働日でテレワークを認める、いわゆる「フルリモート」よりも、「週◯日までテレワークを可能」などと、出社とテレワークを組み合わせる、いわゆる「ハイブリッドワーク」を実施する企業が多くあります。

人材の採用と定着への影響

テレワークは、人材採用と定着にも大きな影響を与えます。
前述のとおり、テレワークは従業員の働きやすさや日常生活との両立にポジティブな効果が期待されることから、それらを望む求職者・従業員からは「テレワークが可能な企業は魅力的な企業」と評価されることが多いです。

特に若い年齢層は仕事とプライベートとの両立を求める人の割合が多いということが行政の調査結果から読み取れます(内閣府/国民生活に関する世論調査(令和6年8月))。

出典:内閣府/国民生活に関する世論調査(令和6年8月)

また、いわゆるフルリモートや、出社を月に1~2回程度に抑える勤務形態とすることで、地理的な制約なく人材採用が可能となるため、企業にとって多様で優秀な人材を採用するチャンスが広がります。

業務特性の適合性

テレワークの導入や継続を検討する際には、業務特性との適合性を見極めることが重要です。業務内容がデジタルツールを活用して遂行可能であるかどうかを確認する必要があります。

例えば、ITやクリエイティブ業務はテレワークに適しやすいです。一方で、製造業や対面サービス業務では導入が難しいことは明らかですし、チーム間の密なコミュニケーション、アイデア交換が必要な業務では、対面でのやり取りが効率的な場合があります。また、顧客対応が多い業務では、顧客がリモート対応にどれほど適応しているか、という観点も必要になります。

コストとインフラ整備の視点

テレワークの導入や継続には一定のコストとインフラ整備が必要なため、これらの費用対効果を慎重に評価する必要があります。テレワーク環境を整備するためのITインフラとしてVPN(※)、クラウドサービス等の導入や、運用、セキュリティ対策にかかる費用を見積もることが重要です。

※Virtual Private Networkの略。ネットワーク上でリモート側(会社等)とプライベート側(自宅等)の間で、セキュリティで保護されたデータ通信を可能とするもの。

一方で、テレワークの導入によりオフィススペースの縮小が可能となり、賃料や光熱費といった経費の削減が期待できる場合があります。

まとめ

以上のとおり、テレワークは採用力や生産性、コストなど、企業の競争力に大きな影響を与えるため、導入・廃止・継続を検討する際には多角的な視点からの評価が必要です。

また、オフィス勤務と組み合わせた柔軟な運用方法を検討することで、企業のニーズと従業員の期待をバランスよく満たすことができる可能性もあります。短期的なコストや効率だけでなく、中長期的な企業価値や競争力への影響を見据えた戦略的な意思決定が求められます。

(寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング)

社会保険労務士法人みらいコンサルディング

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