賃上げにより受けられる業務改善助成金の概要を紹介!申請の流れも解説
公開日:2024年6月3日
その他
従業員の賃上げに取り組む際は、助成金制度を活用することが大切です。業務改善助成金は、賃上げを行った中小企業に対して支給されるものであり、一定の要件を満たすことで適用されます。
この記事では、業務改善助成金の基本的な仕組みや要件、注意点等を詳しく解説します。
【2023年から】地域別最低賃金の平均額が1,004円に
厚生労働省が公表している令和5(2023)年度の「地域別最低賃金改定状況」によれば、最低賃金の全国平均は「1,004円」となり、1,000円台を突破しています。2022年度の全国平均が961円であったため、大きく賃金が上昇していることがわかります。
企業においては最低賃金法に抵触しない取組を行う必要がありますが、最低賃金の上昇に伴う人材確保等の課題とも向き合っていくことが大切です。継続的な賃上げに取り組める環境を整えていくことが、ますます重要になってきています。
業務改善助成金:賃上げにより中小企業や小規模事業者が受けられる
業務改善助成金とは、生産性向上につながる設備投資等を行うと同時に、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた時に、設備投資等にかかった費用の一部を助成してもらえる仕組みです。事業場内最低賃金とは、事業場で最も低い時間給のことを指し、地域別最低賃金と同様に、最低賃金法および最低賃金法施行規則の定めに基づいて計算されます。
業務改善助成金を受け取るには、事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を作成して申請する必要があります。業務改善助成金の交付が決定した後に、提出した計画どおりに事業を進め、その結果を報告することで助成金が支給されます。
対象事業者と支給要件
業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者が対象となる制度です。事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内であること、解雇や賃金引下げ等の不交付事由に該当しない事業者が対象となります。
また、支給要件に関しては次の要件を満たす必要があります。
上記の要件をすべて満たした上で、事業場ごとに申請を行います。
また、助成率に関しては申請を行う事業場の引上げ前の事業場内最低賃金によって、助成率が変わってきます。具体的な助成率は、次のとおりです。
助成の対象となる経費
業務改善助成金における助成対象となる経費は、「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」となっています。業種によって違いがあり、一例として以下のものが挙げられます。
2024年度の申請期限について
業務改善助成金の申請期限については、賃金引上げ後に申請するものに関しては2024年12月27日までとなっています。事業完了期限は、2025年1月31日です。
業務改善助成金申請の流れ
業務改善助成金をスムーズに申請するには、基本的な流れを把握しておくことが大切です。申請を行う際は、次の手順となります。
業務改善助成金の申請の流れ
1. 交付申請書・事業実施計画書等を作成する
2. 交付申請書・事業実施計画書等を都道府県労働局に提出する
3. 設備や機器の導入を行う
4. 事業場内の最低賃金引上げを行う
5. 事業実績報告書を作成・提出する
各ステップについて、ポイントを解説します。
交付申請書・事業実施計画書等を作成する
業務改善助成金を申請するには、交付申請書と事業実施計画書等を作成する必要があります。事業実施計画書には、賃金引上げ計画と業務改善計画を記載します。
コース区分ごとに定められた金額以上を引き上げる計画を立て、設備投資にかかる費用を記載しましょう。
交付申請書・事業実施計画書等を都道府県労働局に提出する
作成した書類は、都道府県労働局に提出します。審査が行われ、交付決定または不交付決定の通知を受け取ります。
注意しておきたい点は、交付決定の通知を受け取る前に業務改善計画を実施し、経費を支出しても対象とならないことが挙げられます。必ず、交付決定の通知を受けてから、計画を進めるようにしましょう。
設備や機器の導入を行う
交付決定の通知を受けたら、設備や機器の導入を行います。後から事業実績報告をする必要があるため、契約書や納品書、請求書、銀行振込明細書、購入した機器の写真等をきちんと保管しておきましょう。
また、生産性が向上したことが確認できる数値等を取りまとめておくと、報告を行う際にスムーズです。
事業場内の最低賃金引上げを行う
申請を行う前に賃金引上げを実施している場合は不要ですが、そうではない場合は賃金引上げを実施します。賃金引上げのタイミングとしては、交付決定後から事業完了期日までとなっています。
事業実績報告書を作成・提出する
必要な機器の導入や助成対象経費の支払い、賃金引上げのすべてが完了したら、事業実績報告書を作成して都道府県労働局に提出します。事業完了期限は導入機器の納品日、支払い完了日、賃金引上げ日のいずれか遅い日となります。
事業実績報告書の提出と併せて、支給申請書も忘れずに提出しましょう。事業実績報告書等を提出することで審査が行われ、適正と判断されれば助成金の支給が行われます。
特例事業者とは
業務改善助成金において、賃金要件・物価高騰等要件のどちらかの要件に該当する事業者を特例事業者としています。特例事業者と認められることで、助成金上限額や助成対象経費の拡大が受けられます。
それぞれの要件について見ていきましょう。
賃金要件
賃金要件とは、事業場内最低賃金が950円未満の事業者が申請を行う場合が当てはまります。要件に該当することで、助成上限額の拡大が認められます。
物価高騰等要件
物価高騰等要件は、原材料費の高騰等の外的要因によって、申請を行う前の3か月間のうち任意の1か月の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が前年同期と比較して、3%ポイント(※)以上低下している事業者が該当します。
(※)%ポイント:パーセントで表された2つの数値の差を表す単位
その他賃上げに関する助成金・控除を紹介
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者等が企業内でキャリアアップを行えるように支援するための仕組みです。正社員化や処遇改善の取組を行った事業者に対して一定額の助成が行われます。
キャリアアップ助成金について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
中小企業向け賃上げ促進税制
中小企業向け賃上げ促進税制とは、中小企業者等が前年度より給与等を増加させた時に、その増加額の一部を法人税から税額控除できるための制度です。適用期間は2027年3月31日までの間に開始する各事業年度となっており、すべての要件を満たすことで最大45%の控除率となるのが特徴です。
賃上げに取り組みながら、税負担の軽減につながる仕組みであるため、自社の状況を踏まえた上で活用してみましょう。
まとめ
賃上げに取り組んでいくことは、従業員のモチベーションを高め、生産性の向上につながることが期待できます。ただし、計画性を持って経営に与える影響を考慮しながら進めていく必要があります。
業務改善助成金をはじめ、国が行っている助成金制度を上手に活用することで、経費や税負担の軽減につなげていけるでしょう。自社がどのような助成金を受け取れる可能性があるのかを把握するために、以下のサービスも参考にしてみましょう。