柔軟な働き方のヒント「選択的週休3日制」とは?導入のプロセスと留意点

公開日:2025年7月30日

人手不足

「選択的週休3日制」とは、従来の週休2日制に加え、従業員が本人の希望により特定の週について3日の休日を取得できる制度のことをいいます。週休2日制・週休3日制など企業が週の休日を定めるものとは異なり、従業員が週の労働日数を選べることが特徴で、柔軟な働き方を実現する仕組みとなりえます。

企業が導入する際には労働時間の調整や給与体系の変更、業務効率化など、多くの要素を検討する必要があります。回は、選択型週休3日制の導入について、具体的なプロセスや留意点などを解説します。

選択的週休3日制のタイプ

厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、企業の実施状況などから選択的週休3日制を大きく以下の3つのタイプに分類しています。

タイプ① 労働時間・給与を維持
1日あたり労働時間:増加
週あたり労働時間 :維持
給与       :維持

タイプ② 労働時間・給与を削減
1日あたり労働時間:維持
週当たり労働時間 :削減
給与       :労働時間を減らす分、給与を削減

タイプ③ 労働時間は削減・給与は維持
1日あたり労働時間:維持
週あたり労働時間 :削減
給与       :維持
    

タイプ①については、労働時間・給与を維持するために1日の労働時間を増やす必要があります。そのため、多くの企業にとっては1日8時間超となることを踏まえた労働時間制度を併せて検討していくことになります。

タイプ②は、労働日数が減った分、そのまま労働時間・給与を減らすシンプルなものです。

タイプ③は、労働日数・労働時間の減少に対し給与は維持されるため、効率性を高めなければ企業側には負担が増えるタイプです。

選択的週休3日制の導入の目的

選択的週休3日制の導入の目的として、以下の事項が挙げられます。

①ワークライフバランスの向上
週の休日を増やすことにより余暇の活用につながるほか、育児・介護等への対応としても効果的なものとなります。

②優秀な人材の確保
柔軟な働き方を提供することで会社のイメージが向上し、優秀な人材の採用など採用力の強化につながる可能性があります。

③生産性の向上
メリハリのある働き方が可能になるほか、通勤など勤務に付随する時間も減少するなど、効率的な働き方が実現できます。

選択的週休3日制の導入プロセス

(1) 現状分析と課題の把握

まず、企業の業務形態や労働環境を分析し、週休3日制の導入が可能かどうかを検討します。具体的には以下の点を確認します。

①既存の勤務体系と労働時間
②業務の繁忙期と閑散期の特定
③週4日勤務をした場合に業務が円滑に回るか
④労働時間・給与・評価制度等への影響

(2) 企業に適した制度設計

企業の業務内容に応じた適切な勤務形態を選択し、制度設計を行います。

①適用対象の決定
・全社員か、一部の職種に限定するか
・勤続年数(例:勤続10年以上)等により限定するか

②労働時間と給与の調整
・タイプ①~③(前述)のいずれとするか
・週4日勤務の給与水準をどうするか

③休日の取得ルール
・追加休日の設定ルール
・職場内での調整方法

④評価基準の再設定
・労働時間ではなく成果に基づく評価の導入
・目標管理(MBO)やKPI評価の強化

(3) 試験導入の実施

①制度設計が完了したら、一部の部署や希望者を対象として、試験的に運用を開始します。
・試験期間:3か月~6か月
・効果測定:業務への影響、従業員の満足度、生産性の変化
・改善点の洗い出し:業務負荷の偏りや生産性の低下の有無

②試験導入の結果をもとに、制度の見直しを行い、正式導入の準備を進めます。

(4) 正式導入と継続的な改善

正式に制度を導入する際は、以下の点を決定します。

①ルールの明文化
・社内規程の改訂
・就業規則の変更

②従業員への説明会実施
・制度内容の説明、申請方法の周知
・メリット・デメリットの説明

③フォローアップの仕組み
・定期的なアンケートや面談を実施
・制度の改善点を検討し、柔軟に修正

選択的週休3日制の導入の留意点

労働時間・給与を維持するタイプ①の場合には1日あたりの労働時間を増加させることとなり、1日8時間の法定労働時間を超えることが考えられます。これに対応するためには、「1か月単位の変形労働時間制」や「フレックスタイム制」の適用を併せて検討することが必要となります。

(1) 1か月単位の変形労働時間制

①概要
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定する制度です。これにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりすることが可能になります(労働基準法第32条の2)。

②留意点
1か月単位の変形労働時間制を適正に運用するためには、1か月ごとの勤務シフトを事前に設定し、そのシフトの通り勤務することが必要です。そのため、前月までに週休3日制で働く週を選択し、その選択に従いシフト設定をすることが必要となります。

③手続きなど
1か月単位の変形労働時間制を導入する場合には、労使協定または就業規則に一定の事項を定め、所轄の労働基準監督署へ届け出ることが必要です。

(2) フレックスタイム制

①概要
フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる制度です。

②留意点
フレックスタイム制の場合は前月までにシフトで週休3日制を選択する週を設定する必要はありませんが、各労働日の始業・終業時刻は労働者の決定に委ねる必要があります。(コアタイムを設定した場合は、コアタイムの時間帯には勤務する必要があります。)

③手続きなど
フレックスタイム制を導入する場合には一定の事項を定めた労使協定を締結する必要があります。この労使協定は労働基準監督署への提出は必要ありません。

まとめ

選択的週休3日制の導入は、企業の生産性向上や従業員の働きやすさを向上させる有効な手段です。ただし、導入には事前の準備と継続的な改善が不可欠です。適切な運用ルールを設け、試験導入を経て制度をブラッシュアップすることで、企業と従業員の双方にとってより良い働き方を実現することが可能になるでしょう。

社会保険労務士法人みらいコンサルディング

※三井住友海上では、外部専門家と連携し、企業・法人経営者の皆様に有益な情報を提供しています。

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