2024年の大雨被害と水害への備え ~その1~

公開日:2024年12月4日

自然災害・事業継続

2024年も低気圧や前線の影響で、各地で線状降水帯が発生しています。特に2024年7月25日からの東北地方日本海側を中心とした大雨や9月20日からの能登半島の大雨では、多大な被害が生じました。被害に遭われた皆さまには、心からお見舞い申し上げます。
本稿では、2024年9月までの大雨被害の概要と、特に大きな被害が生じた7月下旬東北地方の大雨、および9月下旬能登半島の大雨について解説します。なお、本レポートは2024年9月25日時点の情報に基づいて作成しています。

2024年(9月まで)の大雨被害について

2024年も線状降水帯などによる大雨被害が各地で発生しており、降水量の多い梅雨時期は特に発生頻度が高いです。2024年の9月までに国土交通省や総務省消防庁が発表した風水災に関する事例(台風を除く)を表1に示します。

中でも被害が大きかったのが、2024年7月下旬に梅雨前線が北日本付近に停滞し、東北地方の日本海側を中心に大雨となった事例と、9月下旬に秋雨前線や低気圧によって能登半島で河川の氾濫や土砂災害が多数発生した事例です。

 

表1であげた事例の主な被害状況について、国土交通省、総務省消防庁、NEXCO東日本、東北電力、北陸電力から公表されている情報をもとに、以下にまとめました。注3)~注17)。

 

(1)人的被害

(2)土砂災害件数

(3)住宅被害

(4)インフラ被害

ここでは、特に被害が大きかった2024年7月下旬の梅雨前線(表5)と9月下旬の秋雨前線や低気圧(表6)によるインフラ被害を取り上げます。

2024年7月下旬 東北地方日本海側の大雨

(1)大雨の原因と降水量の分布

北日本付近に停滞した梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となりました。山形県では2024年7月25日昼過ぎに線状降水帯が発生し、25日13時05分には山形県酒田市と遊佐町に大雨特別警報が発表されました。

その後、一時的に雨脚は弱まりましたが、夜遅くに再び山形県で線状降水帯が発生し、同日23時40分に山形県内で2度目の大雨特別警報が発表されました。これらの大雨により東北地方の日本海側を中心に、土砂災害、河川の増水や氾濫、低地の浸水による被害などが多数発生しました。注18)

図1は2024年7月25日の降水量、図2は7月23日から26日までの総降水量の分布図を示します。
山形県を中心に、観測史上1位の降水量を更新した地域がありました。また、山形県最上郡真室川町差首鍋(サスナベ)では期間中の総降水量が444.0mmを観測しました。平年7月1か月間の降水量=339.7mmを上回る雨が4日間で降ったことになります。

(2)河川氾濫

表7、8は7月下旬の大雨によって氾濫した国及び都道府県管理の河川を示します。図3の赤い丸枠内で、堤防決壊などによる国管理河川の氾濫が発生しました。

2024年9月下旬 能登半島の大雨

(1)大雨の原因と降水量の分布

2024年9月20日頃から秋雨前線が日本海から東北地方付近に停滞し、21日は前線上の低気圧が日本海を東に進みました。また、22日には台風第14号から変わった低気圧が日本海から三陸沖へ進みました。低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で大気の状態が非常に不安定となり、東北地方から西日本にかけての広い範囲で雷を伴った大雨となりました。

特に、秋田県では20日明け方、石川県では21日午前中に線状降水帯が発生しました。石川県能登では、線状降水帯により大雨被害の危険度が急激に高まったことから、21 日に輪島市、珠洲市および能登町に大雨特別警報が発表されました。注14)

図4は2024年9月20日から23日における24時間降水量の期間最大値、図5は同期間中の降水量の合計値を示します。石川県輪島市や珠洲市では24時間降水量で観測史上1位の値を更新するなど記録的な大雨となりました。

(2)河川氾濫

記録的な大雨により、石川県では県管理の19水系26河川において氾濫が発生しました。2024年9月25日5:00時点で7河川は概ね浸水が解消していますが、19河川は浸水被害が続いています。注22)図6は石川県内で氾濫による浸水被害が発生した河川を示します。

(3)土砂災害

土砂災害の件数については前項であげていますが、ここでは被害状況を確認します。
図7は2024年9月25日7:00時点で確認されている石川県内の土砂災害の発生箇所とその状況を示します。

この辺りは2024年1月1日16時10分頃に発生した能登半島地震で最大震度7を観測しています。地震の影響で地盤が緩み、少量の雨でも土砂災害の発生するリスクが高かったことから、がけ崩れや地すべり、土石流等の被害が拡大したとみられます。これまでに土砂災害で死者4人、安否不明者4人 注22)となっていますが、被害の全貌は未だ見えておらず、さらに被害が増える可能性があります。

まとめ

2024年9月下旬の能登半島の大雨被害は、元日に発生した地震からの復旧・復興を目指す最中での自然災害となりました。改めて被害を受けた皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧と平穏な日常を取り戻すことをお祈り申し上げます。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行の災害リスク情報 2024年10月(98号)を基に作成したものです。

 

 

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