自動運転トラックの実現に向けた実証実験について

公開日:2025年4月11日

2024年問題

国土交通省は2025年度予算に「自動運転トラックによる幹線輸送実証事業」として3億円超を計上し、路車間通信設備を備えた「自動運転サービス支援道」の技術開発や整備計画を進めています。また政府は、2033年度までに高速道路と一般道路の約100ヵ所でこの支援道を整備する方針を公表し、2024年度から実装に向けた支援策を展開しています。本ニュースでは、2024年11月に開始されたレベル4自動運転トラック実証実験の内容と、今後の見通しについて紹介します。

レベル4自動運転

自動運転は、図①のとおりレベル1からレベル5までの段階に分けられています。これまで国内の商用車メーカーは、有人車による先導を受け後続車両が無人で走る隊列走行技術を実証してきましたが、今回の実証実験ではレベル4自動運転トラックを使用した単独での無人走行を目指しています。

レベル4自動運転では、道路交通法が定める走行環境条件を満たす限定された区間(特定の都市部や高速道路等)において、自動運転システムが運転操作の全部を代替します。このため、運転者(人)が車両の操作を行う必要がなく、システムがすべての運転操作を自動で行います。また、緊急時や予期しない状況が発生した場合でも、システムが自動的に対応します。

レベル4自動運転は、センサーやAIを駆使して周囲の状況を把握し、適切な判断を下す非常に高度な能力を持っています。

高速道路での実証実験

政府は、2024年度から自動運転車両の実装に向けた支援策「アーリーハーベストプロジェクト」として、新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリア(SA)~浜松SA間の約100kmで、自動運転サービス支援道の先行実証実験を開始しました。この区間では、深夜時間帯に自動運転車優先レーンを設定し、自動発着システムや緊急時の停車機能、ITS(高度道路交通システム)による故障車や落下物情報の有用性、遠隔監視機能等の検証を行います。実証実験の主な内容は以下のとおりです。

(1)自動発着確認

高速道路のSAに設置された出発・到着地点において、自動発進・自動駐車ができるかを確認します。

(2)先読み情報提供システムの通信確認(図②)

先読み情報提供システムは、車載センサーでは検知できない道路前方の落下物や事故車両、工事規制等の情報(先読み情報)を検知し、高速道路本線の上流部を走行する自動運転トラックに提供します。このシステムは、車線変更や減速等により余裕を持って危険を回避することを支援します。今回の実証実験では、路側機から送信された先読み情報をトラックが適切に受信できるかを確認します。

(3)合流支援情報提供システムの通信確認(図③)

合流支援情報提供システムは、高速道路本線を走行する車両の走行速度等の情報を、連結路(ランプ)を走行する自動運転トラックに提供します。このシステムは、合流するトラックの進行線上に存在する本線車両の位置・速度情報をトラックへ提供、トラック側の速度調整による本線への安全な合流を支援する路車協調システムです。今回の実証実験では、路側機から送信された本線車両の情報をトラックが適切に受信できるかを確認します。

今後の見通し

今回の実証実験では、発進から合流、駐車までの一連の走行の検証が行われます。その結果を踏まえ、2026年度以降に高速道路で自動運転トラックが実装される見込みです。

また、今後の実証ではレベル4自動運転トラックを用いた共同輸送(注)試験も実施される予定です。技術面では、走行データを収集しシステムの信頼性や車両安全性の向上、シミュレーションへの活用を図ります。また、自動運転サービス支援道の「運用概念書」の作成や、自動運転データ連携基盤の開発により「ニアミス情報管理システム」「車両情報連携システム」「共同輸配送システム」等のシステム間の情報連携を行います。

実装に向けては、策定されているロードマップ(図④)に沿って長距離(関東~九州、東北~関西等)の自動運転走行や、高速道路直結の物流施設の整備等を実施、最終的には物流事業者の発拠点から着拠点まで一般道も含めた自動運転の実現により省人化、無人化することを目指します。
(注) 複数の物流企業が連携して、複数の企業の商品を同じトラックに積み込んで輸送すること。

おわりに

レベル4自動運転トラックが普及し事業化された場合、物流2024年問題で課題となっているドライバー不足の緩和に繋がると期待されています。しかし、現時点では事業の収益化には高いハードルがあると考えられています。

2027年度の事業化を目指す商用車メーカーもありますが、現在の見通しでは、自動運転トラックの運行費用はドライバーの人件費を上回ります。普及期に入り自動運転トラックが多数導入されれば、スケールメリットにより事業としての採算が確保できる可能性も高まりますが、現時点では不透明な状況です。

また、荷物を満載した大型トラックの自動運転を行う場合、重層的な安全対策が施されているとはいえ、事故が発生した際には甚大な損害につながるおそれがあります。今後は、収益面、安全面で社会的な受容性を高めながら、レベル4自動運転トラックを普及させることが課題であり、その動向が注目されます。

「物流の2024年問題」として注目される諸課題の内容や経緯、物流業界が取り組むべき対策について詳しく解説しています。

 

 

この記事は、「MS&AD Marine News 2025年3月18日発行分」を基に作成したものです。

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