EDRとは?EPPとの違いや注目される理由を解説
公開日:2024年12月23日
サイバーリスク
サイバー攻撃は年々増加しており、ウイルス対策ソフトの導入だけではセキュリティ対策が不十分であると考えられています。セキュリティに関しては、予防、入口、内部、出口でそれぞれ対策を行うことが重要で、多層防御が必須だといわれています。
コンピューターウイルスの侵入を完全に防ぐことは現実的ではないため、近年では内部対策が重視されているといえるでしょう。この記事では、内部対策において重要となるEDRの概要やEPPとの違い、注目されている理由等を解説します。
EDRとは
企業がサイバー攻撃に備えるためには、内部対策が重要だといわれています。ここでは、内部対策にとって有効な仕組みであるEDRの基本的なポイントを解説します。
EDRの意味
EDR(Endpoint Detection and Response)とは、未知のマルウェア等の不審な動きを検知し、マルウェアに感染した後の対応を迅速に行えるようにするための防御方法を指します。既知のマルウェアをパターンとして保持し、一致したものを検知するといった従来の仕組みではない点が特徴です。
EDRにおいては、パソコン等で動作しているOSやアプリケーションの動きを監視し、マルウェアに似た動きをするものを事前に検知します。そのため、未知のマルウェアに対して有効であり、マルウェアに感染した後の被害拡大の防止や復旧等にも迅速に対応できます。
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EDRの機能
EDRはエンドポイント(ネットワーク内のデバイスやシステム)を監視することで、異常な動きや不審な動きを検知した際に管理者に通知します。また、マルウェアのダウンロードを防ぎ、PUA(脆弱なアプリケーション)の検出を行ってくれます。
さらに、デバイス内部の保護としては悪意のある内部動作の検知、外部の悪意あるネットワークトラフィックの防止に役立つでしょう。そして、マルウェアに感染してしまった場合にも、デバイスを隔離した上で手動による脅威分析を行えます。
未知の脅威が解明されれば、既知のマルウェアとして認識され、保護機能が働く仕組みとなっています。そのため、EDRを導入することでサイバー攻撃に対する大きな備えとなるでしょう。
EPPとの違い
EDRが出現する前のセキュリティ製品として、EPP(Endpoint Protection Platform)が挙げられます。EPPはあくまで水際対策として機能するものであり、実際にマルウェアが侵入してからの対策がありませんでした。
EDRを導入すれば万が一、マルウェアに感染してしまってからでも対策を講じることが可能です。そのため、組織のセキュリティ対策を向上させるには、EPPとEDRの両方を組み合わせて運用することが重要であるといえます。
EDRが注目されている理由
EDRが注目されている理由として、サイバー攻撃の増加やテレワークの浸透、ゼロトラストの考え方の普及等が挙げられます。それぞれの点について、詳しく解説します。
サイバー攻撃の増加
国家公安委員会等が公表している「不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況」の資料によれば、不正アクセスの認知件数は年によって変化はあるものの、全体としては増加傾向にあることがわかります。
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情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2024(組織)」によれば、ランサムウェアによる被害やサプライチェーンの弱点を悪用した攻撃等が多いという結果です。企業を取り巻く環境として、サイバー攻撃による脅威は依然として高いものがあるでしょう。
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テレワークの浸透
業種や職種によってはテレワークを導入し、多様な働き方を実現している企業もあります。自宅を就業場所とする在宅勤務や、移動中に業務を行うモバイルワーク等、さまざまな勤務形態を取り入れて業務を行うことが浸透しつつあるといえるでしょう。
従来のように従業員がオフィスに全員出社して業務を行うといった形態だけに留まらなくなっているため、セキュリティ対策のあり方も変えていく必要が生じています。社外から業務に必要な情報にアクセスする機会が多くなるほど、EDRを活用する必要性が高まっているといえます。
ゼロトラストの考え方の普及
ゼロトラストとは、社内や社外のネットワーク環境において、組織として守るべき情報資産にアクセスするものをすべて信用せず、安全性をきちんと検証する考え方です。モバイル端末やクラウドサービスを活用して業務を行うことが一般的になり、ゼロトラストの考え方が普及するようになったといえます。
社内や社外といった境界で線引きするのではなく、自社の情報資産をどのような状況下でも守っていくという考え方から、EDRが注目されています。
EDRを活用するメリット
EDRを活用するメリットとして、以下の点が挙げられます。
EDRを活用する4つのメリット
・不審な挙動の検知が行える
・迅速な対応につながる
・リアルタイムな監視が実施できる
・リモート環境にも対応できる
各メリットについて解説します。
不審な挙動の検知が行える
EDRを活用することによって、マルウェア等の不審な挙動の検知をしっかりと行える点がメリットとして挙げられます。EDRは未知のマルウェアの挙動にも対応しており、エンドポイントにおける動きをいち早く検知できることで、被害の最小化につながるといえるでしょう。
また、EDRは「ログ取得・記録」ができるため、サイバー攻撃を受けた際に感染ルートや感染端末等を特定できる可能性があります。したがって、事故発生時の初動対応は早期に着手ができ、その後の対策も打ちやすくなるはずです。
自動車事故に置き換えれば、ドライブレコーダーのような役割があるため、仮にマルウェアに感染したとしても速やかに対応が行えます。
迅速な対応につながる
EDRを導入していれば、問題が発生したとしても脅威分析等の詳しい調査を行えます。データの復旧等の迅速な対応が行えるだけでなく、未知のマルウェアに対する解析を実施することで、既知のものとして保護機能を働かせることができます。
近年のサイバー攻撃は巧妙化しているため、既知のマルウェアだけの対策では不十分なところがあるでしょう。EDRを活用することで、将来的なセキュリティ対策の強化にもつながるはずです。
リアルタイムな監視が実施できる
EDRを活用すれば、既知のマルウェアに対するパターンマッチング型の検知だけでなく、未知のマルウェアにも対応しやすくなります。セキュリティの専門家によるマネージドサービスの運用によって、リアルタイムな監視が行えるのでセキュリティ対策の強化につながるといえます。
リモート環境にも対応できる
EDRはリモートでのエンドポイントの監視だけでなく、不正な挙動の検知が行えるのが特徴です。テレワークを導入している企業においては、セキュリティリスクを抑えながら、リモート環境を整えられるといえます。
ゼロトラストの考え方の普及によって、社内や社外を問わず企業としてどのように情報資産を守っていくかが重要になってきています。テレワークを積極的に推進している企業ほど、EDRを活用する機会が多くなっているといえるでしょう。
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EDRの導入に関する課題
導入することで多くのメリットを得られるEDRですが、いくつかの課題点があることも把握しておく必要があります。どのような点に注意すべきかを見ていきましょう。
運用には専門的な知識が必要
自社のセキュリティ対策を強化するには、すべての情報資産の棚卸しや運用に関するルールの策定等、煩雑な作業が発生します。守るべき情報資産をきちんと見定めた上で、EDRをはじめとした仕組みを導入する必要があるため、専門的な知見が欠かせないといえるでしょう。
セキュリティ対策において、自社で取り組める部分と外部のリソースを必要とする部分を精査し、体制を整えていくことが重要です。
組織体制の構築
EDRの導入にあたっては、常時監視や問題が発生した時の対応等が行える仕組みが必要になります。すべてのユーザーやデバイスの動きの把握、情報資産のアクセスによる膨大なログ管理をどのように行っていくかが大切です。
ログの監視や分析、マルウェア等を検知した場合の対応等は、高度なセキュリティ技術を備えていなければ対応が難しい部分もあります。自社のセキュリティ対策における専門的な部署の構築が求められるといえるでしょう。
サービスと費用負担のバランス
EDRを導入することでセキュリティの強化につながりますが、サービスの利用におけるメリットと費用負担のバランスを検討しておく必要があります。具体的に解決したい課題を洗い出した上で取り組まなければ、費用負担が重くなる恐れがあり、継続して運用することが難しくなる可能性もあるでしょう。
しかし近年では、初期費用0円の低コストで「被害の最小化」を実現できるEDR製品等も販売されています。AIによる挙動検知とアナリストによる監視のWチェック体制により、アラート検知したPCを「自動停止」「遠隔での手動停止」をすることで迅速に隔離、被害の拡大防止と迅速な対応を実現することができます。
まとめ
マルウェアをはじめとしたサイバー攻撃による脅威は、年々高まっている状況にあるといえます。サイバー攻撃が起こった時に、どのような被害が生じるかを想定した上で、自社の情報資産を守るために必要なセキュリティ対策を講じていくことが大切です。
EDRを導入すれば、既知のマルウェアからの脅威に対応するだけでなく、未知のものに対する備えにもつながるでしょう。EDRを効果的に活用するために必要な体制を、どういった形で構築していくのかを検討していくことが重要です。