【2024年最新】ハラスメントの種類一覧|定義や原因、解決策も紹介

公開日:2024年7月3日

人事労務・働き方改革

ハラスメント

職場におけるハラスメントは、従業員のメンタル不調や意欲低下、離職といった重大なリスクを引き起こします。一口にハラスメントといってもさまざまな種類が存在し、事業主に対策が義務付けられているものもあります。

そのため、企業活動においては事業主や管理職がハラスメントに関する正しい知識を持ち、適切な対策を行うことが不可欠です。この記事では、ハラスメントの定義や主な種類をご紹介した上で、発生する原因と必要な対策について解説します。

ハラスメントとは

働きやすく安全な職場づくりを実現するには、「ハラスメント」の防止に努める取組が欠かせません。ここではまず、職場におけるハラスメントの基本的な意味や定義について詳しく見ていきましょう。

ハラスメントの意味

ハラスメントとは、一般的に相手に対する嫌がらせ等によって、不快感や不利益を与える行為のことです。特に、職場で特に問題視されやすいものに「パワーハラスメント」があります。

職場におけるパワーハラスメントは、以下の三つの要素をすべて満たすものと定義されています。

職場におけるパワーハラスメントの定義
1. 優越的な関係を背景とした言動
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3. 労働者の就業環境が害されるもの

 

1.優越的な関係を背景とした言動

優越的な関係を背景とした言動」とは、業務を遂行する上で、抵抗や拒絶が難しい関係性にある相手からの言動と言い換えることもできます。例えば、職務上の地位が上位の相手からの言動や、協力を得なければ業務が円滑に進められなくなってしまうようなメンバーからの言動等が該当します。

また、仮に同僚といった対等に近い間柄であっても、集団による行為で抵抗や拒絶が難しい場合は、「優越的な関係を背景にしている」と判断することが可能です。

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは、社会通念に照らして、明らかに業務上の必要性がない言動や態度のことです。これには、業務目的を大きく逸脱していたり明らかに必要性がなかったりする言動、あるいは回数や手段が社会常識を超えている場合等が該当する可能性があります。

ただし、どのような行為が該当するかは、言動の背景や状況、業種・業態、当人の属性や心身の状況等を踏まえて総合的に考慮するのが妥当とされています。

3.労働者の就業環境が害される

「就業環境が害される」とは、労働者が身体的または精神的な苦痛によって職場が不快なものとなり、本来の能力が発揮できなくなってしまうなどの悪影響が生じる状況のことです。この判断については、受け取り方の個人差はあまり考慮せず、「平均的な労働者の感じ方」を基準とするのが適当とされています。

また、言動の頻度や継続性は考慮されるものの、強度な苦痛を与える言動の場合は1回でも就業環境が害される可能性があるとされています。

ハラスメントの主な種類

職場で起こり得るハラスメントには、先に述べたパワーハラスメント以外にもさまざまな種類があります。ここでは、主なハラスメントのパターンについて解説します。

セクシャルハラスメント

職場において行われる労働者の意に反した「性的な言動」によって、不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることを指します。この場合の職場とは、オフィスはもちろんのこと出張先や職場の懇親会、宴会等も含まれる幅広い概念です。

また、正社員だけでなく雇用されたすべての労働者が対象であり、派遣労働者やパートタイム労働者も当然ながら含まれます。なお、性的な言動とは、次のような発言・行為が該当します。

・性的な冗談やからかい
・デート等への執拗な誘い
・性的な事実関係を尋ねること
・性的な話題を話すこと
・性的な関係の強要
・必要のない身体接触
・わいせつな図画の配布・掲示
・性的暴力

 

マタニティハラスメント

職場において行われる上司・同僚からの言動によって、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることを指します。なお、この場合の言動とは、妊娠・出産や育児休業の利用に関するものを指します。

ただし、業務上必要な言動や提案等は、労働者に強要しない限りハラスメントには該当しません。また、妊娠・出産、育児休業の利用等を理由に解雇、減給、不利益な配置転換等を行った場合は、厳密にはハラスメントではなく「不利益取扱い」と見なされます。

従来の育児休業よりも柔軟で休業を取得しやすい枠組みとして創設された、出生時育児休業(産後パパ育休)について解説しています。

 

パワーハラスメント

前述のように、優越的な関係」を背景に行われる業務上必要な範囲を超えた言動であって、労働者の就業環境を害する行為のことです。具体的な行為としては、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大あるいは過小な要求」「個の侵害」等が該当します。

個の侵害とは、例えば「職場外での継続的な監視」や「私物の写真撮影」、「性的指向・性自認・病歴等のデリケートな個人情報を本人の了解なしに暴露する」などの行為が挙げられます。

 

就活ハラスメント

就活ハラスメントとは、就職活動中やインターンシップの学生等に対するセクシャルハラスメントやパワーハラスメントのことです。弱い立場にある学生の尊厳や人格を傷つける行為であり、厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査 令和2年度報告書」では、約4人に1人がセクシャルハラスメントの被害に遭っているという結果が示されています。


企業にとっても、社会的信用の低下による応募数の減少や、従業員の意欲・生産性の低下といった重大なリスクをはらむ問題となっています。

 

ケアハラスメント

ケアハラスメント(ケアハラ)とは、介護休業の申出・取得をした労働者の就業環境が、関連する不適切な言動によって害されてしまうことを言います。基本的な定義はマタニティハラスメントと共通しており、介護や介護休業の取得についての嫌がらせや不快な言動が対象となります。

時短ハラスメント

時短ハラスメントとは、従業員に対して定時での退社を強要したり、業務時間の短縮によって業務を終わらせることができない従業員を理不尽に叱責したりする行為を指します。いずれの場合も、従業員の仕事に対するモチベーションを低下させる恐れがあります。

エイジハラスメント

エイジハラスメントとは、従業員の年令や世代について差別をしたり、嫌がらせを行ったりする行為を言います。性別に関係なく起こる可能性があり、ほかのハラスメントと複合的に起こるケースもあります。

また、下記のハラスメントの種類は多岐にわたるため、把握しておきましょう。

カスタマーハラスメントの概要や事例、企業に求められる対策等について解説しています。

ハラスメントが起こる原因

ハラスメントが引き起こされてしまう原因として、認識不足や人員配置が適切に行われていないといった理由が挙げられます。それぞれの点について解説します。

ハラスメントに対する認識が不足している

ハラスメントが起こるのは加害者個人に問題がある場合だけでなく、組織として必要な対策を行っていないケースも当てはまります。自分自身が気付いていない偏見等をアンコンシャス・バイアス(性別等による無意識の思い込み)といいます。

本人では意識しづらい部分であるため、一時的な対応では同じような事象が再び起こってしまう恐れがあるでしょう。必要に応じて社内研修会を設けるなど、組織としても認識を向上させるための取組が求められると言えます。

 

人員配置が適切に行われていない

組織における人員配置が適切でない場合、従業員同士のコミュニケーションに問題が生じている可能性があります。ハラスメントが疑われる事案が発生した時に、相談できる相手や相談先がなければ、ますます深刻な事態を招く恐れがあるでしょう。

人員配置を検討する際は、個々の従業員の能力やキャリア等に加え、安心して働き続けられる組織体制になっているかも考慮する必要があります。

ハラスメントを防止するための対策

ハラスメントを防止するには、組織としてどのような取組を行えるかを十分に検討して、具体的な施策を実施していく必要があります。ここでは、厚生労働省が公表している資料を基に、職場におけるハラスメント防止対策を紹介します。

また、すぐに取り組める施策として、職場に掲示するポスターを活用してみるのも一つの方法です。「ハラスメント防止ポスター」について詳しく知りたい方は、下記のリンクも参考にしてみてください。

管理監督者を含めた周知、啓発

ハラスメントの発生を未然に防止し、リスクを最小限に抑えるには、職場全体の意識向上に努めることが大切です。管理監督者を含めた周知や啓発のための活動を行うとともに、ハラスメントの防止に関する社内教育を行ってみましょう。

自社や他社の事例等を踏まえ研修会を行い、社内のリソースが不足している時は外部講師を招くなど、継続的な取組として実施していく必要があります。また、ハラスメントが起こった時の対応に不備が生じないように、就業規則の見直しもあわせて取り組むことが重要です。

相談窓口の設置

実際にハラスメントに関する事案が発生した時だけでなく、発生する可能性があるケースも含めて迅速に対応するには、相談窓口の設置等の施策に取り組むことが大切です。どのような段階であっても、相談したい時に相談できる環境を築けているかをチェックし、必要な体制を整えてみましょう。

事後対応の速やかな処置

ハラスメントの事案が発生した際は、事後対応を速やかに行うことが大切です。事実関係の確認を行うと同時に、被害者への配慮やケアを重視しましょう。

そして、行為者への聞き取り調査等を行った上で、就業規則に沿った形で措置を取り、可能な範囲で社内に公表します。加えて、再発防止に向けた取組を進めていくことも大切です。

プライバシーの保護

ハラスメントに関する事案はセンシティブな部分が多くあるため、プライバシーに対する配慮は慎重に行う必要があります。相談者だけでなく、行為者等のプライバシー保護についても社内にあらかじめ通知しておきましょう。

また、都道府県労働局等の外部に相談した場合にも、不利益な取扱をされない旨を事前に社内へ伝えておくことも肝心です。

まとめ

従業員が安心して働ける環境を提供するには、ハラスメント防止に向けた取組を継続して行っていくことが大切です。ハラスメントの種類や基本的な捉え方について、管理監督者も含めた社内研修会等を行い、未然に防ぐことを重視してみましょう。

また、実際にハラスメントに関する事案が発生した場合は、迅速な対応を行うことが重要です。従業員がいつでも相談できる環境を整え、就業規則の見直しも含めて対策を検討してみることが大事だと言えます。

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