物流業界のパレット標準化による効率性、安全性の向上取組
公開日:2024年11月27日
2024年問題
2024年9月25日掲載の号『物流2法の改正』では、政府が公表した「物流革新に向けた政策パッケージ」とそれを実現するための法改正の概要を取り上げました。
このパッケージの主要施策の一つである「パレットの標準化」は、国土交通省に設置された官民協議会「パレット標準化推進分科会(以下「分科会」といいます)」で検討が重ねられ、「最終とりまとめ(以下「報告書」といいます)」が公表されましたので、本稿ではその内容を紹介します。
標準パレット導入の背景と期待される効果
パレットの標準化は、総合物流政策大綱(注1)においても検討課題となったものの、未だ十分に実現できているとは言い難い「旧くて新しい課題」です。一方で、いわゆる「物流2024年問題」では、輸送能力が2024年度に14%、2030年度に34%不足すると言われており、物流という社会インフラを維持するために、荷主や運送人などの事業者が協力して対策を講じることが必要不可欠です。
現状では多様なパレット規格が併存し、現場での運用方法も定まっていないことから、パレット化が可能な貨物でもパレットを利用しない、あるいは必要以上にパレットからパレットへの積替えが生じるなどの非効率性が、大きな課題となっています。
これらの課題解決のためパレットの標準化が期待されており、分科会の試算では、パレット標準化の実現により、総作業時間の32%の削減が見込まれています。
(注1)国土交通省が物流を取り巻く現状や課題を整理し、今後の物流施策の方針を示すもの。
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標準パレット導入に向けた主な取り組み
報告書ではパレットの標準化に向けた施策として(1)規格の統一、(2)運用方法の統一の二本柱が提言されています。
(1) パレット規格の標準化
パレットの標準規格として、「縦横:1100×1100mm、高さ:144~150mm、最大積載質量:1トンとし、JIS規格の材質・強度を保つもの」が「11型」と定義されました。
(2) パレットの運用方法の統一
自社保有パレットの紛失リスクを軽減するため、自社所有ではなくレンタル方式による共同利用が基本とされ、将来的には、複数のレンタルパレット事業者が運営する共同プラットフォームの構築が推奨されています。共同プラットフォームでは、レンタルパレット事業者がパレット供給時の配送・空パレットの回収を共同で行い、各社の窓口を一本化することで、荷主や運送事業者などの利用者にとってより効率的な運用が期待されます。
関係者の役割と課題
報告書では、パレット標準化の推進のために物流関係者に求められる役割が下表のとおり定められ、これらを政府が支援する必要があることが提言されています。
【求められる役割一覧(主要な事項を記載)】
■荷主
・ 標準パレットの導入推進、運送・倉庫事業者への積極的な提案
・ パレット仕分・回収作業を運送事業者が契約外業務として行っている実態の改善に向けた、同事業者との役割分担と費用負担の明確化
・ パレットへの積付効率やトラックへの積載率を向上させるロットサイズでの受発注の検討
■運送・倉庫事業者
・ 標準パレットの導入推進、荷主への積極的な提案
・ 標準パレットの使用を前提とした設備投資(荷役やパレタイズの自動化・機械化などの推進)
■レンタルパレット事業者/パレットメーカー
・ 標準パレットの仕様・運用方法の関係者への周知
・ 共同プラットフォームの構築・運営
これらの前提として、パレット標準化に伴うコストは、物流関係者間で適切かつ公平に分担され、価格転嫁を通じて社会全体で負担していくことが求められています。
実現に向けたロードマップと数値目標
報告書では、2026年度までに共同プラットフォームを実用化し、30年度までに標準パレットの普及を進める計画で、荷役作業に係る時間を16%削減するなどの数値目標(KPI)が下表のとおり定められています。KPIを達成し物流の効率性を高めるため、官民一体となった力強い取組が期待されています。
おわりに
物流は私たちにとって不可欠な社会インフラですが、その効率化なくして安定的に維持することはできません。標準パレットの導入は、物流に係る総作業時間を最大で約3割削減することが期待できるため、荷主や物流事業者が連携して取り組むべき重要な課題です。
また、パレット標準化は、荷扱いの回数が減ることで事故防止にも繋がるため、物流の安全性向上の観点からも重要と言えます。このように、標準パレットの導入は、効率化と安全性の両面で物流業界を支える重要な施策と言えるでしょう。
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参考文献一覧
この記事は、「MS&AD Marine News 2024年10月15日発行分」を基に作成したものです。