物流2法の改正

公開日:2024年9月25日

2024年問題

物流関連2法(物資の流通の効率化に関する法律、貨物自動車運送事業法)の一部が改正され、2024年5月15日に公布されました。本稿では法改正の背景と概要をご紹介します。

背景

今回の法改正の背景には物流の2024年問題があります。2024年4月より、ドライバーの働き方改革に関する法律が適用となりドライバーの時間外労働時間に上限が課されました。このことが輸送力の低下に繋がり、何も対策を講じなければ2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足が生じる可能性があると指摘されています。

2024年問題を乗り越える施策として、政府は「物流改革に向けた政策パッケージ」を策定し「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」の観点から様々な対策を検討しています。

今回の法改正は「商慣行の見直し」「物流の効率化」を目的に行われています。

2024年問題を正しく理解するための基礎知識や対応策について解説しています。

 

法改正の主な内容 

(1)物資の流通の効率化に関する法律:「流通業務総合効率化法」から名称変更

・法律の名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(流通業務総合効率化法)から、「物資の流通の効率化に関する法律」に変更。

・全ての荷主・物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課される。例)パレットの導入による荷役時間の短縮。

・当該措置について国が判断基準を策定のうえ、判断基準にもとづく指導・助言・調査・公表を実施。

・一定規模以上のものを「特定事業者」に指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取組の実施状況が不十分の場合、国が勧告・命令を実施。

・特定事業者のうち荷主(特定荷主)には「物流統括管理者」の選任を義務付け。

(2)貨物自動車運送事業法

・元請事業者に対し実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け。

・荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価等を記載した書面の交付等を義務付け。

・トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務が課されるとともに、特定事業者に対し、当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付け。

政府の「物流改革に向けた政策パッケージ」では、法改正による効果を高める目的で、次の指標が設定されています。

■荷役待ち・荷役等時間の削減 ⇒ 年間125時間/人削減
■積載率向上による輸送力の増加 ⇒ 16パーセント増加

上記指標は、改正法施行後3年以内に、2019年度対比での達成を目標としています。

改正物流効率化法の施行に向けた合同会議における検討内容

改正物流効率化法の施行に向けて、2024年6月28日 国交省・経産省・農水省三省の合同会議が立ち上げられ、規制的措置の施行に向けた検討が開始されています。                                        
今後、合同会議で議論されることが予定されている主な論点は以下の通りです。

(出典:内閣官房「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」第 5 回・配布資料)

①荷主・物流事業者に対する規制的措置の実効性を確保するための制度設計
・運送形態に応じた荷待ち・荷役等時間や積載率の目標設定
・定期報告が義務付けられない中小事業者にも規制的措置を遵守させるための方策
・正当な対価が支払われているケースや休憩時間と「荷待ち時間」と「荷役等時間」との関係の整理 等

②物流に関わる様々な関係者間の連携・協力
・複数の荷主が協力して行う積載率の向上等のための取組についての判断基準の策定
・荷待ち時間・荷役等時間を把握する際の貨物運送に携わる関係者全体での連携方法
・商慣行を変革するための関係事業者間の交渉の場の設定 等

③荷主・物流事業者の判断基準等における物流効率化に向けたデジタル技術の活用
・実際に効率化につながるシステムの活用方法の提示
・検品レス化や伝票レス化の前提となる事業所コードの整備
・デジタルタコグラフ等のデジタル技術を活用した物流現場の見える化の推進 等

④荷主等の意識改革・行動変容を促すための物流改善取組状況の調査・評価
・先行して物流改善に取り組んでいる事業者に不利益とならないような評価方法
・定期報告が義務付けられない中小事業者からも任意報告を受けるための仕組み
・荷主と物流事業者の関係性に配慮した、物流改善に向けた取組状況の調査・公表方法 等

帝国データバンクが行った調査結果について解説しています。

 

改正物流効率化法の施行に向けたスケジュール

以下のスケジュールにて改正法の施行が予定されています。
2025年4月 改正法の施行①
-基本方針
-荷主・物流事業者の努力義務・判断基準
-判断基準に関する調査・公表 等

2026年4月 改正法の施行②
-特定事業者の指定
-中長期計画の提出・定期報告
-物流統括管理者(Chief Logistics Office)の選任等

最後に 

物流問題に関する行政の動きが活性化しています。
改正法である「物資の流通の効率化に関する法律」第3条には「物流効率化は国の責務である」とあり、国が責任を持って物流効率化を行うという意思が明確化されました。

物流革新に向けてデジタル技術を活用する取組が始まるなど、荷主や物流事業者にも対応が迫られています。

今回の法改正は、主にトラック運送事業の元請事業者や荷主に対して新たな規制が設けられ、負担が増える内容となっていますが、トラック運送事業が今後も持続的に成長していくための投資になると考えられています。

トラック運送事業者が単独で行う物流の効率化には限界があります。物流の効率化を進め、運送事業者のドライバーが労働に見合った対価を受け取るためには、荷主とトラック運送事業者の双方が非効率な商慣行を見直し、業務を効率化する必要があります。

<参考文献一覧>

 

この記事は、「MS&AD Marine News 2024年8月21日発行分」を基に作成したものです。

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