賃金請求権の消滅時効期間延長への対応

2023年7月21日

人事労務・働き方改革

民法の一部改正に伴い、労働基準法の賃金請求権の消滅時効期間が当面3年(経過措置)に改正され、2020年4月1日以降の賃金に適用されています。今後トラブルの増加が想定される、未払い賃金問題について、点検・確認のポイントをご案内します。

未払い残業代の状況

昨今はインターネットやスマートフォンで「残業代」と検索すると、未払い残業代の請求方法や弁護士事務所の広告が表示されることが多く、未払い残業代をめぐる労使間のトラブルが増えています。厚生労働省によると、令和3年度(2022年度)に労働基準監督署の指導により、不払だった割増賃金を支払った企業(遡及支払額100万円以上)は1,069社、総額は約65億円(65億781万円)、1社当たりの平均額は609万円です(「令和3年度監督指導による賃金不払残業の是正結果」)。

時効が2年から3年に

賃金請求権の消滅時効は、従来の2年から2020年4月1日以降は3年となりました。これにより、2020年4月1日以降の未払い残業代は遡って請求できる期間が延び、2023年4月1日以降は3年分となります。

割増賃金の支払い

労働基準法により割増賃金は、(1)法定労働時間(原則、週40時間、1日8時間)を超えた労働には1.25以上を乗じて、(2)深夜労働(22時~翌朝5時)には0.25以上を乗じて、(3)法定休日(週1日または4週4休)の労働には1.35以上を乗じて支払わなければなりません。そのためには、労働時間を正確に把握し適正な賃金を支払う必要があります。例えば、日々の労働時間管理について、15分未満を切り捨てているような企業があります。正しくは、1分単位で賃金を支払う必要がありますので、切り捨てている分の未払いが生じてしまいます。

また、残業代の計算で算入すべき手当(例えば、皆勤手当など)を誤って漏らしていて、未払いが発生しているケースもあります。

固定残業代

あらかじめ一定の残業時間を見込んで「固定残業代(定額残業代)」を導入している企業では、見込んだ残業時間を超える残業があったにもかかわらず超えた分の残業代を支払っていない場合には問題となります。

管理監督者

特に注意したいのは「管理監督者」の取扱いです。労働基準法上の管理監督者は、労働時間や休日、休憩の規定や適用除外です。したがって、時間外労働や休日労働に係る割増賃金の支払いは不要ですが、深夜労働についての割増賃金は支払う必要があります。

また、必ずしも「組織上の管理職=労働基準法上の管理監督者」とはなりません。裁判などで管理監督者であることが否認され、遡って未払い残業代の支払いを命じられるケースがあります(いわゆる「名ばかり管理職」問題)。

まとめ

時効の改正により、2023年4月1日以降はさらに未払い残業代トラブルが増えることが想定されます。この「時効3年」は当面の経過措置であり、将来的には「5年」となります。企業経営者の皆さまには、賃金の支払いが適正にできているか、早めに点検・確認されることをお勧めいたします。

厚生労働省の関連資料

(寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング)

三井住友海上経営サポートセンター発行のビジネスニュース2022年7月(第313号)を基に作成したものです。