エンゲージメントとは?基本となる捉え方と測定方法、改善策を紹介
公開日:2024年7月22日
健康経営・メンタルヘルス
人的資本経営
企業の生産性を高め、従業員にとって適した労働環境を提供するには、エンゲージメントに関する基本的な捉え方を正しく認識しておく必要があります。エンゲージメントを高められれば、従業員の潜在的な能力を引き出したり、健康経営を推進したりすることにつながるでしょう。
この記事では、エンゲージメントの測定方法や改善策等を解説します。
エンゲージメントとは
エンゲージメントを高めるための施策を実施するには、基本的な意味を理解しておくことが大切です。従業員満足度との違いも含めて解説します。
エンゲージメントの意味
エンゲージメント(engagement)とは、「誓約」や「約束」等を意味する言葉であり、仕事においては帰属する企業や職場に対する「やりがい」や「思い入れ」を表す言葉です。エンゲージメントを向上させることで、次の3つの点で効果が期待できるとされています。
エンゲージメントの向上による3つの効果
・組織に対する従業員からの信頼が高まる
・従業員の能力が最大限に発揮される
・従業員が健康に、活き活きと働き続けられる
エンゲージメントは、従業員が自律的に働ける環境づくりのための「仕事の資源」と従業員がポジティブな心理状態であるための「個人の資源」が影響していると考えられています。加えて、ストレスを引き起こす仕事の特性として「仕事の要求度」の3つの要因が関係している点を押さえておきましょう。
従業員満足度との違い
エンゲージメントは、主に「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の二つに分けられます。ワークエンゲージメントは、仕事へのやりがいや活力の状態を表しており、個人と仕事との関係に注目しているのがポイントです。
また、従業員エンゲージメントは企業等の所属する組織への貢献の度合いを表わすものであり、個人と組織との関係に注目しています。組織がめざす方向性と個人がめざす方向性を重ね、組織に貢献しようとする姿勢は仕事へのモチベーションを向上させることにもつながるでしょう。
一方、従業員満足度とは労務環境や待遇等に対して、従業員がどれくらい満足しているかを表す指標のことであり、ES(Employee Satisfaction)とも呼ばれています。従業員にとって魅力ある職場を整えるために、定期的に従業員満足度を測定し、自社の課題点や改善策を見つけてみましょう。
従業員のモチベーションが低下することの影響や具体的に改善していくための方法等について解説しています。
エンゲージメントを向上させるメリット
エンゲージメントを高めることによって、企業はさまざまなメリットを得られます。具体的にどのようなメリットが得られるのかを見ていきましょう。
従業員の帰属意識が高まる
エンゲージメントの向上は、従業員が組織に対する帰属意識を高めることにつながります。組織への信頼が高まることによって、離職率の悪化を防ぎ、結果として従業員が長く働き続けてくれる環境を生み出すことにつながるでしょう。
業種や職種によっては、人手不足に悩みを抱えている場合もあると言えます。離職率が高い組織ほど、エンゲージメントについて改めて検討していくことは重要でもあります。
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能力を引き出すことができる
エンゲージメントを高めることで、日々の業務において従業員の能力が最大限に発揮されることが期待できます。仕事に対するやりがい、自らの目標と企業が掲げる目標が同じ方向をめざしていると認識することで、業務への取り組み方にも変化が起こる可能性があります。
また、エンゲージメントが高まった従業員が所属していることで、チーム全体に良い影響をもたらすことも考えられるでしょう。結果的に生産性の向上に結びつき、企業業績を押し上げる可能性を高められるはずです。
健康経営につながる
エンゲージメントの向上は、業務の効率化につながり、従業員一人ひとりが自らのワークライフバランスについて考えるきっかけにもなります。従業員が健康を保ち、活き活きと働き続けられる環境を提供することで、職場の活性化につながる部分もあるでしょう。
また、従業員のエンゲージメントを高めることは、健康経営の実現にも役立ちます。健康経営とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」を言います。
人的資本への投資を積極的に取り組むことで、生産性の向上や企業のブランディングを高めることにもつながるはずです。
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エンゲージメントの測定方法
エンゲージメントの測定方法としては、サーベイや社内アンケート、面談の実施等が挙げられます。厚生労働省が公表している「労働経済の分析」の資料を基に、エンゲージメントの測定方法を解説します。
サーベイや社内アンケートの実施
従業員のエンゲージメントについて現況を把握するには、サーベイや社内アンケートを実施するのが有効な方法だと言えます。定期的に調査を行うことによって、従業員が日々の業務や将来のキャリアについて、どのように感じているかを把握することにつながるでしょう。
また、得られた調査結果を企業と従業員のコミュニケーション手段として活用することも重要です。調査を行うこと自体が目的ではなく、あくまで従業員のエンゲージメントを高めるために活用することを押さえておく必要があるでしょう。
面談の実施
サーベイや社内アンケートを実施することで、数値的な部分で自社の現況をある程度、把握することは可能です。しかし、サーベイ等の数値だけでは把握ができない定性的な部分もあるため、個別に従業員と面談を行うなどのきめ細かな施策の実施も必要になります。
1on1ミーティングの実施等、定期的に継続して従業員とコミュニケーションを取る機会を設けることで、数値だけではわからない従業員の考えや、将来のキャリアに対する意見や要望を聴く機会となるでしょう。定期的な面談において、サーベイ等の調査結果も踏まえながら対応していくことで、より緊密なコミュニケーションを行う機会を得ることに結びつくはずです。
エンゲージメントを高めるための5つの取組と改善方法
エンゲージメントを高めるための主な取組として、次のものが挙げられます。
エンゲージメントを向上させる5つの取組
・自社の現況を把握する
・労働環境を改善する
・キャリア支援を行う
・企業理念やビジョンを浸透させる
・人事評価制度を見直す
それぞれの取組と改善ポイントを解説します。
自社の現況を把握する
エンゲージメントを高めるための取組を行うには、まず自社の現況をきちんと把握することが重要です。特に人事や労務に関する経営課題は、企業によってそれぞれ異なる部分も多いでしょう。
サーベイや社内アンケート等の実施による定量的な分析によって、自社が置かれている現況を客観的に認識することが大切です。同業他社が取り組んでいる施策や職種ごとの傾向等を踏まえ、自社が抱える課題点やこれから取り組むべき点を洗い出してみましょう。
エンゲージメントの向上に関する施策は、短期的な取組だけでは思うように成果につながらない部分があります。得られた調査データ等を参考にしつつ、どのような方向性で自社の従業員のエンゲージメントを高められるかを検討していくことが重要です。
労働環境を改善する
従業員のエンゲージメントを高めるためには、個々の従業員へのアプローチが必要ですが、組織全体として労働環境を改善していくことも大事なポイントです。長く働き続けていける労働環境が提供されていれば、自ずと従業員のエンゲージメントも高まっていくと言えます。
具体的な取組として、「業務効率化による労働時間の削減」「リモートワーク等の柔軟な働き方の提案」「職場環境の改善」「社内コミュニケーションの活性化」等が挙げられます。業種や職種によって、優先的に取り組むべき施策は違ってくるため、自社の現況や課題点等を踏まえた上で、労働環境における改善策を実施してみましょう。
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キャリア支援を行う
従業員のエンゲージメントを高めるには、労働環境の改善が大切ですが、将来にわたって長く働き続けてもらうには、キャリア支援に関する取組も必要だと言えます。具体的には、OJTやOff-JTを通じたキャリア支援、面談等を通じて個々の従業員を継続して、育成していく環境を整えることが欠かせません。
自社において、現在担当している業務を継続していくことで、今後どのようなキャリアプランを描けるかという点は、従業員の立場からすれば関心が強い部分であると言えるでしょう。将来的なキャリアについて考えてもらうことは、エンゲージメントの向上につながり、従業員が長く働き続けてくれるきっかけにもなるはずです。
既に豊富なキャリアを築いている役員や先輩従業員等とコミュニケーションを取れる機会を増やすことで、勤続年数や経験が浅い従業員にとって自身のキャリアを見つめ直す機会となるでしょう。
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企業理念やビジョンを浸透させる
担当している業務に不満はなかったとしても、企業がめざす目標と個々の従業員が抱く目標に乖離が生じていれば、エンゲージメントの低下につながると言えます。そのため、定期的に自社が掲げる企業理念や将来へのビジョンを伝える機会をできるだけ設けていくことが大事です。
また、一方的に自社の考えを伝えるだけでなく、従業員の意見や考えも取り込んでいく姿勢を示してみましょう。自分の意見が採り入れられて業務が改善していく実感を従業員自身が得れば、自ずと仕事に対するモチベーションも高まっていくはずです。
人事評価制度を見直す
働き方の多様化等によって、業種や職種によっては従来の人事評価制度では、うまく評価を行えない場面があるでしょう。リモートワークや時短勤務等、フルタイムでの働き方と異なる勤務形態を採用する企業においては、従業員にとって不公平感を抱かないような人事評価制度の構築が求められると言えます。
勤続年数や勤務形態だけにとらわれない、柔軟な評価のあり方を検討することも重要です。管理職や現場の責任者だけでなく、個々の従業員の意見も広く取り入れながら、自社の現況に合った人事評価制度を再構築していくことが大切になります。
まとめ
エンゲージメントを高めることによって、従業員の離職率の低下につながるだけでなく、仕事に対するやりがいを抱いてもらうことにつながります。意欲的に業務に取り組んでもらうことは業務の効率化につながり、結果的に企業全体の生産性の向上にもつながるでしょう。
サーベイや個別面談等を通じて、自社の現況を踏まえ、人事労務における課題点を洗い出すことが大切です。積極的に従業員とコミュニケーションを取りながら、将来につながるキャリア支援も含めて、きめ細かいサポートを行ってみましょう。