トラック業界の「標準運送約款」と「標準的な運賃」の改正について

2023年11月27日

2024年問題

物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対策を講じない場合、トラック輸送力が2024年度に14%、2030年度に34%不足するという推計があります。

「2024年問題」の到来が近づいている現在、トラック輸送力不足を解消するための対策の一つとして、政府主導で物流業界の商慣行の見直しが検討されています。

本稿では、検討内容の一つである「標準運送約款」と「標準的な運賃」の改正についてご紹介します。

改正検討の流れ

<出典>「物流革新緊急パッケージ」(2023年10月6日閣議決定)

2023年6月2日に開催された「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議(第2回)」では、物流の「2024年問題」への抜本的・総合的な対策として「物流革新に向けた政策パッケージ」が決定されました。この閣議決定を受けて、国土交通省により「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」(以下「検討会」と言います)が設置されました。検討会は学識経験者と関係各省代表者で構成されており、各業界団体もオブザーバーとして参加しています。2023年12月に予定されている会合で、検討会からの見直し提言が取りまとめられる予定であり、その内容を踏まえて「標準運送約款」と「標準的な運賃」の改正が2023年12月末までに実施される見込みです。

改正の目的

全日本トラック協会が取りまとめた「経営分析報告書 令和3年度(2021年)決算版」によると、トラック運送事業者の売上高営業損益率(平均値)は、2021年度で▲0.9%、1事業者あたり2,231千円の赤字額となっており、トラック運送事業者は苦しい収益状況に置かれています。

<出典>全日本トラック協会「経営分析報告書  令和3年(2021年)度決算版」(抜粋)

このような収益状況の中、「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年6月2日閣議決定)には、「トラック運送事業者に正当な対価が支払われること」が改正の目的と記載され、以下の3点について見直しと明確化を図ることが提案されています。

  1. トラック法に基づく「標準的な運賃」における運賃水準の見直し
  2. 運送契約に含まれる荷待ち・荷役、附帯業務等、輸送以外のサービスに関する範囲の明確化や標準的な料金水準の提示により、トラック運送事業者と荷主企業との間の契約内容を明確化
  3. 荷待ち・荷役に係る費用、燃料高騰分、下請けに発注する際の手数料等を明確化し、有料化することで、適正に荷主企業や元請事業者へ転嫁できるように「標準運送約款」を見直し

改正検討内容(見直しの論点)

検討会では、閣議決定内容を踏まえて以下の各項目について議論し、改正を検討する予定です。

「標準的な運賃」について

  1. 燃料価格の高騰などの状況を考慮し、運賃表を見直す必要があるか
  2. 輸送以外のサービス(荷待ち・荷役作業など)に対する対価の標準的な水準を示すべきか
  3. 下請けに発注する際の手数料について、標準的な水準を示すべきか
  4. 積載率の向上に貢献する運賃や料金の設定方法について
  5. その他、見直すべき事項は何か

「標準運送約款」について

  1. トラック運送事業者が提供する荷待ち・荷役作業などの運送以外のサービスの内容を明確化し、その対価を確実に受け取るための取り組みを行うべきか
  2. 適正な運賃の受け取りや、荷待ち・荷役作業などの運送以外のサービスの内容を明確化するために、契約書の作成や電子化を推進するべきか
  3. 多重下請け構造の場合、荷主が実際の運送業者を把握できるような仕組みを構築すべきか
  4. その他、見直すべき事項は何か

おわりに

2023年11月現在、改正内容の詳細はまだ決定されていません。一方、2024年3月に行われる価格交渉促進月間(※)では、改正後の内容を踏まえた見直し交渉が行われる可能性があり、改正内容の決定を待つことにより、検討期間を十分に確保できないおそれがあり注意が必要です。

国土交通省のウェブサイト内「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」で公表される検討の途中経過などに注目し、今後の動向に注意を払いながら、改正に備えて準備を整えることが重要です。

(※)価格交渉促進月間
政府が、頻繁に価格交渉が行われる時期である9月と3月を指定し、発注企業と受注企業間の価格交渉や価格転嫁を促進する取り組みです。各価格交渉促進月間終了後にはフォローアップ調査が行われています。調査結果をもとに価格交渉や価格転嫁の状況が評価され、状況の良くない親事業者(下請法で定義)に対しては、大臣名での指導や助言が行われることもあります。

<参考情報>

この記事は、「MS&AD Marine News 2023年11月21日発行分」を基に作成したものです。