防災の日とは?企業が取り組むべき防災対策のポイントを解説

公開日:2024年8月19日

自然災害・事業継続

従業員の安全確保や事業活動の継続のために、企業において防災対策を強化していくことは重要です。しかし、日常の業務に追われてしまい、思うように防災計画等の見直しが進まないこともあるでしょう。

全国的に防災に関する情報が多く発信される「防災の日」等のタイミングを活用して、自社の防災対策を改めて見直してみることも大切です。この記事では、防災の日の概要や各災害に備えるためのポイント、企業が取り組むべきことについて詳しく解説します。

防災の日の概要

防災の日や防災週間等、1年のなかでも防災について意識向上や備えにつなげやすいタイミングがあります。どのような目的で設けられているのかを紹介します。

防災の日の由来

防災の日とは、1923(大正12)年9月1日に起こった関東大震災が由来となっており、9月が1年のなかでも特に台風が多く発生する時期でもあるため、地震や風水害等に備える意味で創設されました。1960(昭和35)年の閣議で決定されたものであり、防災の日を含めた9月は防災月間となっています。

政府や各自治体だけでなく、国民一人ひとりが災害に対する認識を深め、対処するための心がまえを持つことが制度の目的です。防災の日や防災月間にあわせて、全国的に防災意識を高めるための行事や訓練等が行われています。

 

防災週間の目的

防災週間とは、防災の日を含んだ1週間(8月30日から9月5日)のことを指します。
台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波等の災害知識を深め、備えを充実させ、災害の未然防止と被害の軽減を目的として定められています。

全国的に、防災知識を普及させるための講演会や展示会、防災訓練等が広く実施されているのが特徴です。企業や家庭においても、防災に対する考えを深め、災害が発生した場合に備えて準備をしておくことが推奨されています。

企業における帰宅困難者対策の見直しのポイントについて解説しています。

 

各災害に備えるためのポイント

一口に災害と言っても、災害の種類によってどのような備えをすればよいかは異なります。それぞれの災害に対する備えについて解説します。

火災への備え

火災は時間帯や季節、場所等によって出火の危険性が異なります。そのため、様々な状況を想定して出火の防止につなげていくことが大切です。

火災が発生したときの避難方法や消火器の正しい使い方を確認しておきましょう。消火器には有効期限があるので、定期的に器具類の点検を行っていざというときに使える状態を保っておくことが大事です。

家電製品の近くには、花瓶や水槽等の水の入ったものは置かないほうが無難だといえます。なぜなら、地震の際に倒れてコンセントにかかってしまうと発火する恐れがあるからです。

また、ガス機器は地震発生時には揺れを感知して、自動でガスの供給が停止する仕組みとなっている場合がほとんどですが、どのような仕組みになっているかを改めて確認しておくことも大事だといえます。ガスコンロの周辺には燃えやすいものを置かないようにしておきましょう。

そして、石油ストーブ等を用いている場合は、機器が倒れたときに灯油がこぼれてしまわないように、給油口をきちんと閉めておくことが重要です。

 

大雨・台風等の風水害への備え

大雨や台風に対する備えとしては、雨や風が強くなってしまう前に必要な行動を起こすのが基本となります。窓をしっかりと閉じて、風で飛ばされそうなものはあらかじめ屋内に入れておきましょう。

懐中電灯や携帯型ラジオ、非常用食品、飲料水、救急用品等の非常用品の備えを行うことも大切です。また、強風によって窓ガラスが割れることを想定して、飛散防止フィルムを貼ったり、飛来物をガードするためにブラインドを下ろしたりしておきましょう。

水害が起こったときに浸水が想定されるエリア等の確認は、自治体が公表しているハザードマップで確認できます。事前にチェックしておき、避難時の対応について検討しておくことが大事です。

 

企業として取り組んでおきたい台風対策やリスクについて解説しています。

 

地震や津波への備え

地震やそれに伴う津波に対する備えも行っておく必要があります。まずは、震度やマグニチュードの基本的な知識を身につけ、地域で想定されている震度等を自治体が公表している情報を基に把握しておきましょう。

さらに、海沿いの地域においては、津波が発生した際の備えについても十分に確認しておかなければなりません。高台への避難ルート等を事前にチェックしておきましょう。

 

「南海トラフ地震臨時情報」の概要や企業における対応のポイントについて解説しています。

 

雹災や雪災への備え

雹災とは、雹が空から落下してくることで起こる災害を言います。雹は小さなものでも固いものであるため、窓ガラスが割れるといった被害がよく見られます。

また、雪が多く降るエリアの場合は、大雪で道路の通行が不能となったり、斜面に近い地域では雪崩が懸念されたりするでしょう。雪災に対する備えについても、自治体等が公表している被害想定情報を基に災害発生時の対応をあらかじめ決めておくことが重要です。

その他の災害に対する備え

日本は世界的に見ても火山の多い国であるため、火山の噴火災害等にも意識を向けておく必要があります。ただし、自治体が公表している噴火警戒レベル等によって、噴火災害に対する備えはある程度は事前に行うことが可能です。

避難を行う際に必要な防災ヘルメットや防塵マスクの準備、非常用品の備えをしておき、実際に噴火が起こったときには速やかに避難できるようにしておきましょう。

企業が取り組む防災対策

従業員を災害から守り、事業を継続させるためには、企業においても必要な取組を実施していく必要があります。どのような取組を行えばよいかを解説します。

消防法のルールを熟知しておく

消防法の規定によって、ホテルや病院、福祉施設、地下街等の飲食店といった不特定多数の人が出入りする場所においては、スプリンクラーや消火器の設置が義務付けられている場合があります。また、防火管理者を置き、必要な器具の点検や消防計画の作成等を行わなければなりません。

地域の消防署と連携をしながら、防火管理に努めることが重要です。
避難訓練や避難器具の点検等を定期的に実施するようにしましょう。

 

災害図上訓練を実施する

災害図上訓練(DIG)とは、地図等を用いて参加者自身が直接書き込んでいくことで、地域や職場に潜んでいる危険を見える化する防災訓練のことを言います。Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム)の頭文字から構成されていることからも分かるように、DIGによって参加者はゲーム感覚で災害について学ぶことができます。

DIGを始めるために必要なものは、地図とその大きさに合わせた透明シート、油性のカラーペンや付せん等です。1グループ5~10人程度に分け、進行役が参加者に対してDIGを行う上での基本的な前提条件を伝えます。

参加者が「どのような立場で、何の災害に立ち向かうのか」を認識してもらい、役割を理解してもらいます。そして、進行役が刻一刻と変わる災害状況を伝え、参加者はその状況に沿って避難方法や対応等を地図に書き込んでいくのが基本的な流れです。

最後は作成した地図を基に各グループが発表を行い、考えや知識を共有していくことが狙いとしてあります。DIGを実施することで、同じ災害状況においても様々な対応方法があることを参加者は他のグループの発表から学ぶことができるはずです。

 

避難確保計画や避難訓練の実施の現状のほか、作成・実施時のポイントについて解説しています。

 

事業継続計画(BCP)を策定する

事業継続計画(BCP)とは、自然災害等の緊急事態が発生したときに被害を最小限に留め、事業継続や復旧をいち早く行うためにあらかじめ策定する計画を言います。緊急時における対応や継続・復旧を優先させる中核事業の特定、事業拠点や生産設備等の代替案の用意等が具体的には挙げられます。

BCPを策定した後は、実際に被害が発生した場合を想定しながら訓練を行い、調整や改善を加えていくことが大切です。定期的に計画を見直して、自社に合ったプランとなるように整えてみましょう。

 

事業継続力強化計画の基本的な仕組みや策定するメリット、具体的な策定手順について解説しています。

 

職場環境の点検や見直しを行う

地震等の災害に備えて、オフィス家具の転倒防止や建物の安全確認、非常用品の備蓄等を職場で実施するケースは多いものです。安全管理の担当者を置き、災害に対する備えを日頃から取組んでおくことが、企業の防災力を高めていきます。

「企業の防災チェックシート」を活用すれば、災害への備えに必要な項目をスムーズに洗い出せます。職場環境の定期的な点検や計画の見直しを行う際に、ぜひ役立ててみましょう。

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