OJTによる教育とは?人材育成につなげていくためのポイントを解説
公開日:2024年9月2日
人材育成
従業員教育にはさまざまな方法がありますが、その1つとして「OJT」が挙げられます。上司や先輩の従業員が指導役となり、実務を通じて業務遂行に必要な能力を身につけてもらう方法です。
OJTによる人材育成を図っていくには、基本的な進め方やつまずきやすい点等をあらかじめ把握しておくことが大切です。この記事では、OJTによって従業員教育を行うときのポイントを解説します。
OJTの概要
OJTを効果的に実施するには、基本的な捉え方やOFF-JTとの違いについて押さえておくことが大切です。OJTを行う目的やメリット等も含めて解説します。
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OJTの基本的な意味とOFF-JTとの違い
OJT(On the Job Training)とは、職場内訓練や職場内教育とも言われるものであり、日常業務に就きながら実施される教育訓練のことを指します。上司や先輩従業員が部下や後輩従業員に対して実務を通じて直接的に指導、育成していく人材育成の手法です。
一方、OFF-JTは業務命令に基づいて、通常の業務を一時的に離れて実施するものであり、外部研修に参加させるなどの訓練を言います。人材育成という面においては、どちらも必要なものですが、OJTのほうが個々の従業員の適性に合わせて、きめ細やかな指導が行えるという特徴があります。
OJTを実施する基本的な流れ
OJTの進め方は企業によって異なりますが、まずは基本的な流れを理解しておくことが肝心です。実際に進めてみながら、自社に合った形にカスタマイズをしてみましょう。
ステップ1:教える
OJTにおいて、「教える」という方法は最も基礎的で、直接的な指導方法だと言えます。業務遂行に必要な知識や技術、組織内におけるノウハウ、そして仕事に対する心構え等の全てが対象となります。
一口に教えると言っても、対象となる従業員の能力や仕事に対する意欲、経験等に応じて柔軟に教え方を変えていく必要があるでしょう。また、対象者の興味・関心、キャリア志向等を踏まえた上でアプローチしていけば、仕事に対するモチベーションの向上にもつながるはずです。
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ステップ2:見習わせる
上司や先輩従業員が実際に取り組んでいる様子を「見習わせる」ことで、対象者に気付きや新たな視点を身につけさせる方法があります。まずは模範となるやり方を示して、1つのパターンを覚えてもらいましょう。
具体的には、会議や交渉の場に同行させて、業務の進め方や現場の雰囲気を肌感覚として実感してもらうことに狙いがあります。実際に現場を体験することで、対象者のなかで仕事へのイメージが湧きやすくなるはずです。
ステップ3:経験させる
教える、見習わせるというステップの次は「経験させる」段階となります。実際に担当してもらう業務を与え、どのように取り組むかを見守っていきます。
実務を通じて業務遂行に必要な技能や技術を習熟させ、知識やスキルを確認してもらうことに狙いがあります。また、現場対応の能力や人間関係の築き方等もあわせて体得してもらうことも期待できるでしょう。
任せる業務は対象者の経験やスキルによって調整する必要がありますが、あくまで教育訓練が目的であるため、成果についてはそれほど重視しなくても問題ありません。むしろ、どのようなプロセスで取り組んでいくのかをよく見ておくことが大事です。
OJTによる教育がつまずきやすい原因
OJTによる人材育成に取り組み始めても、思うような成果が得られないことがあります。OJTでつまずきやすい主な原因として、次の点が挙げられます。
OJTでつまずきがちな主な原因
・人材育成にかける時間的余裕がない
・育成プログラムの策定が難しい
・実施担当者を確保できない
・能力向上に意欲がある従業員が少ない
それぞれの点について、さらに詳しく見ていきましょう。
人材育成にかける時間的余裕がない
OJTによる人材育成がつまずきやすい原因として、指導役に時間的余裕がなく、十分な指導を行えないことが挙げられます。通常の業務と並行して指導を行わなければならないため、リソース不足に陥ってしまうケースが多いと言えるでしょう。
事前に業務量を調整するなど、必要な措置を講じた上でOJTを実施する環境を整えることが重要です。
育成プログラムの策定が難しい
近年では人手不足による問題を解消するために、外国人の雇用に積極的に取り組む企業も増えています。しかし、さまざまな人材が社内にいることで、人材育成のための教育プログラムを策定するのが難しいといった場面を招くケースもあるでしょう。
十分に育成計画を定めないままOJTを実施しても、場当たり的な対応になってしまい、目立った成果を挙げられないといった問題が生じる可能性があります。従業員の属性や経験に応じた教育プログラムの策定が必要です。
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実施担当者を確保できない
業種や職種によっては人手不足の影響から、OJTの実施担当者を置くのが難しいケースもあります。現場においては実務と管理業務の両方を担うプレイングマネージャーが増加してしまい、組織運営上の課題となっている企業も多くあるでしょう。
日常業務を処理するのに手一杯となってしまえば、人材育成が後回しになりやすいものです。人員配置や担当業務を見直し、OJTを実施する担当者を確保することが必要です。
能力向上に意欲がある従業員が少ない
OJTを実施する体制を整えても、従業員のモチベーションに温度差がある場合があります。自己啓発に積極的に取り組む従業員がいる一方で、そうではない従業員の存在も見られるでしょう。
個々の従業員の能力や適性を見極めてOJTを実施していくことが大事ですが、人事評価制度を見直すなどの取り組みを通じて、意欲のある従業員を評価していく流れをつくってみましょう。
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OJTを成功させるためのポイント
OJTの実施を成功につなげるには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。具体的なものとして、以下の点が挙げられます。
OJTを成功させる5つのポイント
・実施前の事前準備を入念に行う
・コミュニケーションを円滑にしながら進めていく
・業務の段階に応じた指導を実施する
・同じ業務で反復学習
・チームのサポートと協力
各ポイントについて解説します。
実施前の事前準備を入念に行う
OJTを成功させるには、まず実施前の段階でしっかりと準備を整えておくことが肝心です。OJTの必要性を社内で共通認識として持ってもらうために、従業員だけでなく経営層も含めて丁寧に説明していきましょう。
また、教育プログラムの策定や集合研修との連携、OJTの進行管理を担う部署の設置、指導役となる管理職の研修を実施することも重要です。さらに、指導内容にバラつきが生じないように指導マニュアルを作成したり、人事考課に反映させる仕組みを整えたりすることも大切だと言えます。
コミュニケーションを円滑にしながら進めていく
個々の従業員の業務遂行能力や適性等には違いがあるため、OJTを実施する際は個別の対応が必要になる部分があります。実際に指導を始めてみて、目標設定や対象者の能力が合っておらず、行き詰まりを感じてしまう場面もあるでしょう。
OJTは社内における教育訓練であるため、常にコミュニケーションを取りながら、柔軟に調整していくことが可能です。定期的な面談等を通じて、対象者と認識を共有しながら進めていきましょう。
業務の段階に応じた指導を実施する
任せる業務レベルや進捗の段階に応じて、指導すべき内容は変わってきます。何をいつまでに、どのような方法で、どの水準まで行えばよいかを明確に示してから業務に取り組んでもらうことが重要です。
進捗状況を常に確認しながら、きめ細やかな指導を実施していくことを心がけてみましょう。
同じ業務で反復学習
対象者にさまざまな業務を経験させることも重要ですが、初めの段階では同じ業務に繰り返し取り組んでもらうことも肝心です。同じような業務を何度も経験してもらい、反復学習をさせることで、業務に対する自信をつけてもらえるでしょう。
段階的に業務レベルを引き上げていく形で教育プログラムを策定し、計画的な指導につなげていくのが大切です。
チームのサポートと協力
OJTは指導役となる担当者を中心に実施されるものですが、所属する部署や組織全体でサポートしていく体制を整えていくことも重要です。企業全体の取組としていくことで、実際に指導を受ける従業員以外にも、プラスの効果をもたらす部分があります。
人材育成に積極的な職場環境を整えていけば、従業員のモチベーションも高まっていくはずです。
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まとめ
業務の効率化を図り、生産性の向上につなげていくためには、従業員教育が欠かせないものです。人材育成の方法はさまざまなものがありますが、OJTの場合は社内で教育を行うため、きめ細やかな対応が可能です。
一方で、実施担当者の確保や教育プログラムの策定等、事前に準備しておくべきことも多くあります。OJTの対象となる従業員とコミュニケーションを行いながら、人材育成をより良い方向につなげていきましょう。